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読むだけで癒しの効果あり『神客万来!』

#夜更かし漫画

藤堂真衣

ライターの藤堂真衣さんが、休日前夜に夜更かしして読みたくなるような漫画を紹介してくれる連載「夜更かし漫画」。毎回さまざまなテーマを設けて、そのテーマに合った漫画を1作品お届けします!

こんばんは! 漫画・アニメ大好きライターの藤堂真衣です。

今回も、私が読んできた漫画の中からテーマに合わせたおすすめの作品を紹介させていただきます。

第4回のテーマは「癒しがほしい時」におすすめの漫画。

お仕事にプライベートに忙しい毎日の中で、ゆっくりできる時間も限られている。ドキドキハラハラな恋愛漫画やバトル漫画も好きだけど、心が和むような漫画も読みたい! ……という気分の時、ありますよね。

今回は、そんな時にピッタリな“ほっこりできる漫画“をご紹介します。

お客様は神様!? 人ならざるものが訪れるホテルが舞台の『神客万来!』

(c)ねむようこ/芳文社

仕事も家も失った主人公・雲野みちるは、偶然たどり着いた「ツバメ屋ホテル」で客室係として雇われることに。女将の「そそうのないようにね。お客様は神様なんだから」という言葉に従い、お客様の身の回りの世話に励みます。

初めてのお客様は、品のよさそうな老紳士。ホテルの近くで開催されたお祭りに参加していたといい、わずかな滞在時間なのに何着もの私服を持ち込み、「丹精込めたおもてなし」が必要なはずなのに、ご所望のお料理はファストフードにインスタント食品! みちるは戸惑いながらも、お客様のお望みなら……と、客室係としてお客様の声に耳を傾けます。

お客様の装いなどから「神様みたい……」とつい面食らうみちるに、「神様だからね」と笑う老紳士。実は、彼は近所でまつられている神様で、毎年お祭りの帰りにホテルを訪れて「神様である自分」の衣装を脱ぎ、現代生活にどっぷり浸かる時間を過ごしているのだとか。

このように、「ツバメ屋ホテル」は神様やおとぎ話の登場人物など、“人間ではない存在”が訪れ、そんなお客様たちの願いを叶えてあげるホテルだったのです。

ここは異世界? 現実逃避させてくれる作品

一日一組限定の「ツバメ屋ホテル」を訪れるのは、現代生活に憧れる神様をはじめ、悪のイメージを守り続けるのに疲れた気弱なドラゴンや自分磨きをしたい赤ずきんちゃんなど、悩みを抱える人(や、動物)ばかり。

みちるは、人間がつくり出したイメージを守るために日々頑張っている彼らのために、本来の自分の姿に戻れる場所を提供し、願いを叶える手助けをしています。

本当はきれいなものやかわいいものが好きなのに、それを表に出せないドラゴンにはアロマやバラ風呂が楽しめる「ガールズプラン」で心安らぐ時間を。赤いずきんのインパクトのせいで、誰にも赤いずきんを外した本当の自分を認識されていない赤ずきんちゃんには、美しくなるレッスンで自信に溢れた自分へ……。

万能であるかのように思っていた存在たちの“アナザーストーリー”を見ているかのようなお話に、いつの間にか引き込まれていることに気づくでしょう。

「お休みの時も仕事のことが頭から離れない……」なんて時に、現実世界から少し遠ざけてくれる作品です。

“悪役不在”だからストレスフリー!

漫画といえば、ドキドキするような事件が起こったりハラハラする展開に巻き込まれたりと、現実では味わえないドラマチックさも魅力のひとつ。

もちろん『神客万来!』も神様の来るホテルが舞台という非現実的な設定ではありますが、登場するお客様たちは皆どこか庶民的というか、「普通の人」っぽいのが印象的。人知を超えた力を持っている人も登場するのに、その願いは「そんなこと?」と思ってしまうような小さなことだったりするのです。

でもだからこそ、彼らの小さな願いに懸命に寄り添うみちるたち従業員の優しさを身近に感じ、身に染みるのかもしれません。

また、『神客万来!』には、主人公を攻撃してくるような悪役がいないのも特徴。主人公が命がけのピンチに陥ったり、悪役からいわれなき攻撃を受けたりすることもないので、感情移入しているがために感じてしまうヒヤヒヤやモヤモヤもなし。

とにかく“ストレスフリー”に読める漫画なので、疲れている時に心がこれ以上擦り減るようなことはなく、読み終わった時にほっとしていることに気づけるはず!

小さなホテルでの“日常”を眺めて癒されよう

『神客万来!』は一話完結で、ツバメ屋ホテルには毎回異なるお客様が訪れます。一つひとつの出来事はとても些細なことで、ホテルを揺るがすようなハラハラした大事件は起こりません。でも、そんな些細な出来事だからこそ、張り詰めた気持ちを解きほぐしてくれます。

イッキ読みしてもよし、少しずつ読み進めてもよし。「ちょっと疲れたな……」という時にはみちるたち従業員や神様たちの優しさに触れて、癒されてみてはいかがでしょうか。

それでは、今週もよい週末を!

(藤堂真衣)

※この記事は2021年11月12日に公開されたものです

藤堂真衣

フリーライター・編集者。
大阪市内のプロダクションでライター経験を積み、2016年に上京しフリーに。ビジネス分野をはじめ漫画・アニメなどのカルチャー領域まで幅広くインタビューやコラムを執筆。三度の飯より漫画が好き。

Twitter: @mai_todo

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