お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

ホラー好きは見逃せない。『さんかく窓の外側は夜』

#夜更かし漫画

藤堂真衣

ライターの藤堂真衣さんが、休日前夜に夜更かしして読みたくなるような漫画を紹介してくれる連載「夜更かし漫画」。毎回さまざまなテーマを設けて、そのテーマに合った漫画を1作品お届けします!

※このコラムには漫画『さんかく窓の外側は夜』の一部ネタバレが含まれます。

こんばんは! 漫画・アニメ大好きライターの藤堂真衣です。

今回も、私が読んできた漫画の中からテーマに合わせたおすすめの作品を紹介いたします。

第6回のテーマは「日常に刺激がないと思った時」におすすめしたい漫画。

大きなトラブルもなく平和な日々を過ごせているけれど、それじゃなんだかつまらない! パッとしない! 日常から離れて刺激的な体験をしたい! という時、ありますよね。でも、なかなか非日常を体験するのって、時節柄もあって難しい……。

そんな時こそ、漫画で非日常のスリルを味わってみませんか?

今回は、そんな時にピッタリの刺激的な漫画をご紹介します。

“見える人”から“除霊師”に。『さんかく窓の外側は夜』

(c)ヤマシタトモコ/リブレ

書店で働く三角(みかど)康介は、“見えてはいけないもの=霊”が見える特異体質の持ち主。幼い頃から霊の存在に恐怖を感じてきたため、普段は霊感を隠して見えない・気づかないフリをして過ごしています。

ある日、三角の務める書店を仕事で訪れていた冷川理人(ひやかわりひと)にその霊感を見抜かれ、なし崩しに除霊の手助けをしたことから、霊にまつわるトラブルの解決を生業とする彼の助手としても働くことに。

三角はさまざまな事故物件や穢れの溜まった場所を浄化する仕事をしながら、徐々に大きな事件に巻き込まれていくことに……。

“怖い”だけじゃない。人の想いや業を描くヒューマンホラー

三角と冷川が向き合うのは、この世のものではない“霊たち”。何らかの理由で彼らにとりつかれた人や、霊障に悩まされる人々が助けを求めて冷川のもとを訪れます。

冷川は紳士的な雰囲気ながら、有無を言わさず霊を消し去るパワー系。対して三角には、霊を直接消し去る力はないものの、霊をはっきりと見ることができない冷川の“目”として見出されました。

この二人を起点に、“霊”という非現実的なものをテーマに話は進められますが、登場するキャラクターがとてもリアリティをもって描かれているということもあり、この手のジャンルが苦手だという人にも楽しんでもらえる作品となっています。

特に、強い霊感にもかかわらずその対処法が確立できていない三角をフォローしてくれる占い師の迎(むかえ)や、冷川たちに仕事を依頼しながらも霊の存在を全く信じない刑事・半澤など、それぞれのキャラクターが、お互いの生き方や考え方に影響を与え合いながら物語が進行していく部分には注目です!

彼らの紡ぐ言葉が、時には少し行き詰まりを感じている私たちの心を動かすきっかけになってくれることも!

ミステリー要素もたっぷり!

三角と冷川は、事故物件にとどまる地縛霊や娘を支配し続ける母親の生霊など、たくさんの霊を相手に仕事をする中で、殺人事件の捜査にあたることも。複数の事件から浮かび上がったのは「ヒウラエリカ」という一人の女性の名前。

非浦英莉可(ひうらえりか)は、ごく普通の高校生でありながら、ある団体の依頼で“呪い屋”をしている少女でした。そして、複数の事件の犯人も、彼女の呪いによってコントロールされていたことが明かされます。

そんな彼女が、三角たちの前に現れて「やばい仕事をしてるんだけど、辞めたいんだ」と近づいてくるのです。

霊に悩む人を助けるだけのはずが、いつしか非浦英莉可の後ろにいるもっと大きな敵の存在に気づき始めてしまい……。

三角と冷川が予想もしなかった展開が待ち構えていて、ミステリー要素もたっぷり! 一度読み始めるとその没入感に驚くはず!

ホラーでありながら“心が救われる“名作

「霊感がある」って、ちょっと憧れたことありませんか?

でも、やっぱり現実に見えるのって怖いし、漫画で読むくらいがちょうどいい(それにしたって、夜更かしして読むのは怖いかも……)。

『さんかく窓の外側は夜』は、霊感のある男性が主人公というだけあって、もちろんホラー要素は盛りだくさん。さらに警察や怪しい団体など、霊だけでは済まされなさそうな要素も見受けられ、どんな展開なの!? とハラハラしながらどんどん読み進めてしまう作品です。

でも、物語が進むにつれただハラハラするだけではく、各キャラクター達の生い立ちやバックグラウンドが丁寧に描かれて、どうしてその価値観になったのかまでしっかりと伝わってくるんです。

さらに、希望や思惑に従って行動するキャラクター達が相互に作用しあい、読者である自分の心が動かされていることにも気づきます。

ホラーなのに、なんだか心が救われる。そんな不思議な作品で、非日常のスリルを味わってみてはいかがでしょうか?

それでは、今週もよい週末を!

(藤堂真衣)

※この記事は2021年12月17日に公開されたものです

藤堂真衣

フリーライター・編集者。
大阪市内のプロダクションでライター経験を積み、2016年に上京しフリーに。ビジネス分野をはじめ漫画・アニメなどのカルチャー領域まで幅広くインタビューやコラムを執筆。三度の飯より漫画が好き。

Twitter: @mai_todo

この著者の記事一覧 

SHARE