【File25】「お互い独身だったら結婚しよう」を信じすぎた恋
今振り返れば「イタいな、自分!」と思うけれど、あの時は全力だった恋愛。そんな“イタい恋の思い出”は誰にでもあるものですよね。今では恋の達人である恋愛コラムニストに過去のイタい恋を振り返ってもらい、そこから得た教訓を紹介してもらう連載です。今回はすずや鈴音さんのイタい恋。
初めましての方も、そうでない方も、こんにちは! お酒とポテサラをこよなく愛する、関西恋愛ライターのすずや鈴音と申します。
突然ではありますが、私には物心ついた頃から結婚願望がほとんどありません。理由は分からないのですが、小学校低学年くらいの頃から、なんとなく「自分は一生結婚することがないのだろうな~」と悟りを開いておりました。かわいくない子どもだな。
そんなかわいくない子どもも成長し、気がつくと周りの友達がチラホラ結婚し始める20代半ばに差し掛かります。この頃になると、さすがに多少は“結婚”というワードを意識するようになりましたが、独身の友達のように「私も早く結婚したい!」といった焦りを感じることはありませんでした。
その理由は、私には「結婚をしようと思えばいつでもできる」という確固たる自信があったからなのです。
「お互い独身だったら結婚しよう」という甘い口約束
私が「結婚をしようと思えばいつでもできる」と謎の自信に満ち溢れていた理由。それは、「将来、お互い独身だったら結婚しよう」と誓った殿方が2人もいたからなのです。
……おっと、オチまで読めた勘のいい読者さんがそっとブラウザを閉じようとしている光景が目に映りますが、まあ、聞いてください! オチがバレバレの時点で全くもって面白くない話ではありますが、騙されたと思って最後まで聞いてやってください(切実)!
「結婚相手を探すのは簡単」と思い込んでいたイタい高校時代
それはさかのぼること、十数年前のお話。当時高校生だった私は、男子3人、女子3人の仲良しグループばかりとつるみ、毎日のように彼らと遊んでいました。
ある日、ファミレスで男子のひとりが「ゲームをしよう」と言い出した時のことです。ゲーム内容は「この中で付き合うなら誰?」などのお題を出した後、全員が一斉に当てはまる相手を指差すという遊びでした。
そして案の定、グループ内でお笑い担当だった私は「付き合いたい人」「2人きりでデートしたい人」「結婚したい人」などでは誰からも指を差されることはありませんでした。いや、3人もいるなら嘘でも誰か私を選べよ、男子。
しかしその後、何と「いいお母さんになりそうな人」というお題で男子のひとりが私を指差したのです! 初のご指名! もうこれだけで心の中はリオのカーニバル状態です!
彼いわく、「鈴音がおかんやったら絶対明るい家庭になりそうやねんな~。俺が将来独身やったら、鈴音と明るい家庭築きたいわ~」とのこと。それを聞いた私は、心の中のカーニバルがフィナーレ直前かのような盛り上がりになっているにもかかわらず、ポーカーフェイスで「もう仕方ないな~お互いに独身やったらやで~」さらっと流したのでした。
その時、まだ現実を知らぬお年頃であった私は思いましたよね。「なんや、結婚相手探すのってめっちゃ簡単やん」と。
「またノリで結婚の約束をしてしまった」と調子に乗っていたイタい社会人時代
それから数年後。無事に社会人デビューを果たした私ですが、この頃、毎日のように連絡をとる男友達がいました。そしてある時、私と彼はほぼ同じタイミングで片思い相手から振られてしまったのです。
失恋の傷が癒えない私たちは、当時流行っていたm-floの『let go』をBGMに夜中の南港沿いをドライブすることに。「お前を振るなんて信じられんな」「あんたかって、ええ奴やのにな」とお互いを励ます会が始まりました。会話の内容はうろ覚えではありますが、めちゃくちゃ空気が重かったことだけは覚えています。
そして散々お互いを励まし合った後、彼が一言こうつぶやいたのです。「俺らほんまあかん恋愛ばっかりやな」「もう結婚できひんと思ったら、仕方ないから鈴音をもらってあげるわ」と。
「私があんたをもらってあげるの間違いやろ?」と冗談っぽく言い返してはいましたが、心の中では再びリオのカーニバルが到来。脳内で踊り子の衣装に身を包んだもうひとりの私が熱いサンバミュージックに酔いしれていました。
で、やっぱり未熟者であった私は思いましたよね。「どうしよう、結婚する気はないのにまた約束してしまった」と。
現実を知り、自分のイタさに気がついた瞬間
その後さらに時は経ち、2人の男性とした約束も忘れ、気ままなおひとり様ライフを満喫していた20代半ばの頃。ふと、何気なくFacebookを開いた時のことです。
「このたび結婚しました! 秋には子どもが生まれます!」との投稿が。「へえ、誰か結婚するんや~」と何気なく投稿者を見てみると……。
いや、高校時代の彼! 「一緒に明るい家庭築きたいわ~」と言っていたあの彼ですやん!
人間、パニックになると本当に予想だにしない動きをとってしまうのですね。まるで漫画のように勢いよくPCを閉じたかと思えば、気がついた時にはベッドに潜り込み「私は何も見ていない、私は何も見ていない」と自分に言い聞かせていました。
しかし、悪いことって続きます。それから約半年後、ふとLINEを開くと、社会人になりたての頃「仕方ないから鈴音をもらってあげるわ」とつぶやいていた彼のLINEアイコンが子どもの写真に変わっているじゃないですか。「はは~ん、どうせ甥っ子ってオチでしょ?」と思い込むことで、スマホを持つ手がブルブル震える自分を落ち着かせます。
しかし、よく見るとプロフィール画面のステータスメッセージが「〇〇(子どもの名前)20XX年X月X日誕生」に。
いや、あんたまで結婚したんかい!!!
イタい恋から得た教訓「男女間の約束に絶対はない」
冷静に考えれば(考えなくとも)、まだまだ子どもである若い男女の「将来、お互い独身なら結婚しよう」なんてノリ約束を誰が信じるのだという話ですが、当時の私は「結婚する気はないけど、いざ結婚したくなった時に焦りたくない」との思いから、彼らの言葉を安定剤代わりにしていたのかもしれません。
そもそも、「“お互い独身なら”結婚しよう」と言っていたのですから、めでたく結婚した彼らは約束を破ってはいないのですよね。いや~イタすぎたな、自分。
そんなイタい恋から「男女間の約束に絶対はない」ということを学んだと同時に、若い男女間のノリでよくある「お互い独身やったら結婚しよう」は絶対に信じてはいけないと学びました。
おかげで30代半ばとなった今現在、結婚のけの字が出ようものなら真っ先に詐欺か勧誘を疑う、違った意味でイタい人間になりました。読者の皆さんは、くれぐれも雰囲気に酔った男女間の口約束には注意してね! 軽いノリで信じてしまうと、私みたいな絶望を味わうことになるよ!
(文・すずや鈴音、イラスト・菜々子)
※この記事は2021年11月07日に公開されたものです