【File26】歌舞伎町でホストにガチ恋した話
今振り返れば「イタいな、自分!」と思うけれど、あの時は全力だった恋愛。そんな“イタい恋の思い出”は誰にでもあるものですよね。今では恋の達人である恋愛コラムニストに過去のイタい恋を振り返ってもらい、そこから得た教訓を紹介してもらう連載です。今回は佐々木チワワさんのイタい恋。
はじめまして。18歳からホストクラブに通い、お金を使いながらイタい恋愛ごっこを繰り返してきた佐々木チワワです。
歌舞伎町遊びも長くなり、今では「好きだよ」とホストに言われたら「いくらほしいの?」と聞き返してしまう私ですが、通いたての頃はそれはもうキャッキャしながら通っておりました。というわけで、当時のホス狂の思い出を語ろうと思います。
彼女だと本気で信じて店に通っていた
SNSで知り合って、話しているうちに会うことになったホスト。初対面から「元カノに似ていて顔が好き」「学校に行ってちゃんとしていてえらい」「タイプ」と痒い所に手が届く甘い言葉の数々を受け、その気になってしまいました。
その後、「好きだから付き合おう」と言われて無事に彼女に! お店に行ってないしこれは彼女ってことだよね? と本気で思っておりました。
その勘違いっぷりといったら、大学のゼミでの近況報告で「彼氏ができました! ホストですけど、お店には行ってないので!」と惚気てプリクラを見せちゃうほど。しかも別に初ホストじゃなくて指名3人目くらいなのに。学べや。
そこから「一緒にいたいから」という理由でお店にも足を運ぶように。彼は全然売れっ子じゃなく、お茶引いたり(お客様を一人も呼べないこと)していたので、同伴して細く飲んでアフターしてもらって……とあくまで「お客さんとして煽らないってことは彼女! 好きだから無理させないでくれている!」と信じ込みながらお金を落としていました。
挙句の果てには、クリスマスをホストクラブで迎えるお花畑っぷり。大学の最寄り駅まで迎えに来てくれてときめいたけど、あまりに遠かったためか交通費をケチろうとして改札内にずっといたフリをしようとした彼が駅員とけんかをしているのを見てちょっと冷めたのを覚えています。
安い恋だったけど楽しかった
当時は私も彼もお金があるわけじゃなかったので、質素なホス狂ライフでした。
回転寿司でお寿司をパーティー用に持ち帰ってクリスマスのホストクラブで食べたり(今だったら普通にもうちょいマシな鮨屋で出前を取ります。そのお金をケチっていた当時の私超いじらしい)、アフターで行くホテルは歌舞伎町でも指折りの安価なホテルのどれかだったり(今ではパシャかバリアンしか勝たん! というお高い思考になってしまいました)。
安い女にお似合いの薄っぺらい営業を真に受けていたけど、人生最大にお花畑で楽しかった気もします。
ママ活という名の裏引きに激昂
そんな彼と別れを決意したのは、ほかの女の子に裏引きをしていたから。つまり、女の子をお店に呼ばずに外で会い、何時間いくらという形でお金をもらっていたのです。
一応彼女だけどホストとしての仕事や店の体裁を考えてお金を使っていたのに、裏引きされていたと知って裏切られた気持ちに。どうやら枕もあったみたいで、未成年のひよっ子にはかなり打撃でした。その瞬間、私の中でホストとしての彼の価値がゼロになってしまい、そのままプツンと糸が切れて終了……。
LINEもTwitterもブロックされたけど、バレンシアガの帽子を借りパクされているのが許せなくて、わざわざ別のアカウントでDMを送って店舗に取りに行ったのを覚えています。全体的にケチ臭いな当時の私。
お花畑ホス狂全盛期の迷言の数々……
今となってはイタいけど、イタさ全開すぎて今みたいにいろいろわきまえてしまう前に、もう一度こんなふうなホス狂ライフを送りたかった! と思う当時の私のセリフを少し紹介します。
「私は〇〇君を売り上げだけじゃなくて精神的に支えられる!」
彼女なんだから当然こう思ってました。当たり前なんですけどホストの精神なんて売上があれば安定するので、お金を使うのが一番いいんですけどね。自称メンタルエースはめちゃくちゃイタい。
「私のことお客さんとしてしか見てないじゃん!」
いやそうだろうがよ。となってしまうけど、厚顔無恥にもこれを堂々と言い放ってたんですよね……アイタタタ……。けど、このセリフを言ったうえで「〇〇は特別だよ」とかいうテンプレの営業をかけられたい自分がいるのもまた事実……。
「〇〇くんは枕しないって言ってた。私だけ!」
んなわけないだろうがよ。「俺枕しないよ」って言うホストほどマジで鬼枕の法則は何なのでしょう……。ちなみに1年後、別のホストに同じことを言われてそれも信じてました。今思えば「俺枕しない、君だけだよ」よりも、「いろんな女と枕してるけどお前いいわ」って方がむしろ嬉しいなと思う最近です。
イタい恋から得た教訓「黒歴史になるけど、ホストクラブに通うならイタい方が楽しい」
こんなイタい台詞を吐いても金さえ払えば正義なのが歌舞伎町なのですが、当時の超低料金でこんな図々しい自分を思い出すと痛すぎて恥ずかしいです。今は酸いも甘いも噛み分けたからこそ、色恋営業になかなかハマれない自分がいます……。
みなさんもホストクラブで恋愛するときは、思いっきりイタくなってみてはいかがでしょうか。その方がずっと楽しいと思いますよ。
彼を切った後にガチ恋したホストが突然「彼女のため」と店を辞めたり、その次に指名したホストはモラハラ気質だったり、また別のホストに高額を使っても、その数日後にそいつの彼女がSNSでそのホストを晒してたり……。そんなこともありますが、それはまた別のお話。
そろそろ数年前のようなイタい恋がしたいです。
(文・佐々木チワワ、イラスト・菜々子)
※この記事は2021年11月14日に公開されたものです