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【File24】彼氏のファッションに幻滅した話

#イタい恋ログ

佐々木笑

今振り返れば「イタいな、自分!」と思うけれど、あの時は全力だった恋愛。そんな“イタい恋の思い出”は誰にでもあるものですよね。今では恋の達人である恋愛コラムニストに過去のイタい恋を振り返ってもらい、そこから得た教訓を紹介してもらう連載です。今回は佐々木笑さんのイタい恋。

このコラムのご依頼が来た時、イタい恋愛なんてしてたっけ? と疑問に思った。

面白いよとすすめられたYouTuberが震えるほどつまらなかったり、付き合った初日に「俺、芸人より笑いとっちゃうからなぁ」と言われて興醒めしたり、まあまあ笑える(笑えない)ことがきっかけで別れたことはあるけど、イタい恋愛はどうなんだろう……? と。

イタい恋愛しかしてなくね(笑)?

自分では分からなかったので、私のことをよく知る親友に「私って今までイタい恋愛してたっけ?」と聞いたら、「イタい恋愛しかしてなくね(笑)?」と一言返ってきた。

2、3週間に一度行く美容室の担当のお兄さんは、「なんか面白い恋愛あった?」と毎回聞いてくる。こんなスパンであるわけないでしょと思うが、口を開けば「聞いてくださいよぉ〜」とノンストップで話している自分がいる。

時々お母さんと恋バナすると「えみの男性を選ぶセンスねぇ……(笑)」と、電話口で若干笑われる。

あれ? ちょっと自分……大丈夫? いや、私、イタくない恋愛もしてたよね……? と不安になり、久しぶりに日記を読み返したら「こんなに人を好きになったの超久しぶり……ていうか初めての感情……マジで好きすぎる……」という言葉と共に、半年に一回くらいの高スパンで別の男性への思いが書かれていて「全然久しぶりじゃないじゃん」とめちゃくちゃ笑った。

これらのことから、「何か一つ大きいエピソードがなくても、私はベースでずっとイタい恋愛をしているのかもしれない」という、恐ろしい答えに行きついた。

ファッションって大事なんですね

とは言っても、コラムを書くにあたって何かテーマを絞らなければ……と最新の恋愛事情から順に追っていったら、まあスルスルと気持ち良く、芋づる式に出てきたトピックがある。

「男性のファッション問題」だ。

どうですか。すでに痺れますよね。ここで3つ、私が過去にイタい経験をしたエピソードを。

エピソード1「暗闇に浮かぶ白い顔」

ブラックコーデを愛してやまない男性のお話。

夜に、彼を実家に連れて行ったことがあった。私の実家はかなりの田舎なので、夜になるとあたりが真っ暗になる。車から降り、真っ暗な庭を歩き、玄関に到着する。着くと両親が出迎えてくれた。玄関先で、真っ暗な庭を背景に、お父さんが彼と軽く話す。その後家の中で軽く談笑して、彼は帰って行った。その後のことだった。

お父さんが「もしかして〇〇君って黒の全身タイツ着てた? 暗闇に白い顔だけ浮かんでたんだけど」と言った。

その時は彼のことが好きだったので、「ブラックコーデだよ!! 東京ではあれがおしゃれなの!! お父さんには分かんないだろうけどさぁ」とめちゃくちゃキレた。

けど、その日を境に彼の服装を見ると「コイツ黒ばっか着てんな……」と、全身タイツが頭をよぎるようになってしまった。

ブラックコーデは世間一般的にはおしゃれなコーデでもあるし、着こなしている人もたくさんいる。ただ、タートルネックの黒インナーに黒スキニー、黒のコートに黒の靴が、私の中の黒すぎ注意報に引っかかったのだ。

エピソード2「主婦の知恵に救われた私の鼻」

恐ろしいほどお金がなかった男性のお話。

恋人のお金の有無について、多分私は世間一般の女性より気にしないタイプなんだと思う。だから、付き合ってる時はあんまり気づかなかったのだけど、今考えると彼の経済状況は「毎日生きるの大変じゃん……」と思うほど。

どうやら服が好きらしくて、将来は自分の洋服屋さんを立ち上げたいと言いながら、な〜んにもしてない人だった。

その日着ていたTシャツを「これはこうで、こういうところが気に入っている」と楽しそうに話していたのだが、次の日になると「財布にお金が無いから服売ってくる」と、ベタ褒めしていた服を売りに行った

「えっ、前日あんなに気に入ってたのに!? てか服好きなのに!?」とビックリしたが、何も言えなかった。

そんな中、私の部屋がずっと臭かったことがある。「部屋が臭いって思われたら嫌だな。原因なんだろう。水回り……?」と、彼との会話そっちのけで原因をたどっていたら、気づいてしまった。

生乾き臭だ。

でも、部屋に洗濯物は干していない。となると……。目の先にあったのは彼が脱いだズボン。絶対アイツだ。鼻が限界だった私は、気まずいとかそういう感情そっちのけで「てか部屋臭くない? てかズボン臭くない?」と言ってズボンを手に取った。完全にコイツだった。

服が好きなのに、服が臭い。どういうこと? 逆説?

そんな疑問が頭から離れなかったが、とにかくこのズボンをどうにかしないと鼻が終わる。私は急いで湯船に熱湯を溜め、憎きズボンを投げ入れた。生乾き臭をとるには、熱湯に浸けるのがいいと知人に聞いたことがある。見事、鼻は救われた。主婦の知恵が、私の鼻を救ってくれた。

エピソード3「ブランド“風”のシャツを着る男」

年上の男性のお話。

絶賛ベタ惚れ中だった私からすると「服装が若い♡」。夢から冷めた私からすると「大人の男性がするような格好ではない」というような服装をしていた彼(今思うと、黒が多かった)。

ある日、ブランドの偽物のシャツを手に入れたとの報告が入った。いわゆる、ブランド“風”のデザインのものだ。

彼に首ったけだった私からすると「カッコよく着こなせてスゴい♡」。正気に戻った私からすると「そ、その歳で……ブランド“風”って……、だ、ダサくない……?」

ブランド“風”の服を本当にカッコよく着こなせるのは、ごく一部の人間だと思っている。多分、上記2つ同様“服にこだわりがあるのに”が引っかかるポイントだった。

恋は盲目とはよく言ったもので、あの時の私にはきっと、本物のブランド物以上に価値のあるものに見えていたんだと思う。目が覚めてよかった。

イタい恋から得た教訓「ファッションセンスを好みと合致させるのは難しい」

臭いはともかく、ブラックコーデもブランド風の服もれっきとしたおしゃれだ。私が問題と思ったポイントは「行きすぎた黒」と「イキったブランド風」ということ。ついでに、アクセサリーじゃらづけも、個人的には厳しい(上記3人、全員そうでした)。

もちろんファッションセンスが無くてもすてきな男性はたくさんいるので、そこより良い部分を持っている男性を見つけるに越したことはないのだが。

私が結婚したい年齢は27歳(ちなみにこの年齢は歳を重ねるごとにどんどん先延ばしになっている)。イタい恋愛が楽しめるタイムリミットはあと2年。いやいや、もうこの箇条書きを増やしたくはない。

将来は、黒くて臭いブランド風の服を着ていない旦那さんと、でっかい犬をいっぱい飼って、野球チームが作れるくらいたくさんの子どもを育てたい。もうイタい恋愛を更新しませんように……。

(文・佐々木笑、イラスト・菜々子)

※この記事は2021年10月31日に公開されたものです

佐々木笑

1996年生まれ。宝島社ムック局編集部のち、フリーランスの編集者・ライター。笑と書いてエミ読みます。本名通りお笑い大好き人間に育ちました。同じくらい恋愛も大好きです。アイコンは麒麟川島さんに描いていただきました。最高!

Twitter:https://twitter.com/sasaemi17

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