【No.12】忙しい日々を駆け抜けるドラマプロデューサーの場合
いつも輝くあの人は、仕事でどんなバッグを使っているんだろう? バッグとその中身は、仕事への姿勢や価値観を映す鏡。企業で働くマイナビウーマン世代の女性をインタビューし、彼女たちの仕事バッグをのぞく連載です。
取材・文:太田冴
撮影:洞澤佐智子
編集:照井絵梨奈/マイナビウーマン編集部
「昨日は1日中、海ロケだったんです! もしかしたら鞄に砂がついているかも……!」
連日の撮影で疲れているはずなのに、満面の笑顔で元気に話してくれるおかげで、取材現場は一気に賑やかになった。その包容力からは、重責を担う“プロデューサー”というポジションについているだけの気概を感じる。
「ドラマプロデューサーという仕事は、名称だけ聞くとなんだか華やかに感じるかもしれませんが、実際は全ての撮影現場に立ち会い、早朝から深夜まで稼働する泥臭い職業。たくさんの制作スタッフや演者の皆さんが病気・怪我なく作品を作り終えることができるように見守りつつも、PR用のオフショット撮影や会議室の予約という細かいことまで、何でもやります。“見守り担当”でありつつ“何でも屋”でもあるんです」
内部では“総監督”とも言われているというドラマプロデューサーの仕事。普段の生活ではなかなか目にすることのない仕事だからこそ、そのカバンの中身から実態が見えてくるかもしれない。
諸田 景子さん
大学卒業後、日本テレビ放送網株式会社に入社。6年半、バラエティ番組のディレクター等を担当したのち、ドラマ班に異動。アシスタントプロデューサーとして『白衣の戦士!』、『同期のサクラ』(2019)、プロデューサーとして『35歳の少女』(2020)を担当。7月26日(月)放送開始のシンドラ『武士スタント逢坂くん!』では自身初の単独プロデュースを担当する。
使い勝手の良さそうなネイビーのリュックサックは、ラルフローレンのもの。ロケに同行する際に必要なものを詰め込める容量の大きさと、その見た目の上品さのバランスが気に入っているという。
「ロケ先では、演者さんのサポート・フォローが第一優先です。当然ながら私のことをかまってくれる人はいませんから、道端や砂浜にバッグを投げ出して放置しておく、なんてこともしばしば。とはいえ、あまりに少年っぽいバックパックでもテンションが上がりません。ラルフローレンのリュックは機能性もあっておしゃれ心も満たしてくれるから、ちょうど良いんです」
サブバッグのショルダーはなんと撮影現場近くのコンビニで買ったんだとか。一緒にいたスタッフと一緒に「これ撮影の時にちょうど良さそうだよね」と即購入した、と語ってくれた。
●バッグの中身
1 iPad
2 充電バッテリー、外付けHDD
3 コード類をまとめるSEPHORAのポーチ(元はチークブラシケース)
4 AirPods
5 充電コード
6 Canon一眼レフカメラEOS M
7 iPhone×2(プライベート用 11Pro、社用 8)
8 「おさるのジュリアス」のポーチ(首から下げるタイプ)
9 ハンディファン
10 ユニクロのUVカットパーカー
11 各種サプリメント、青汁など
12 アサヒ 1本満足バー プロテインチョコ
13 H THINK CBDリペアロールオンリラックスユズ、ZARA オードパルファム EBONYWOOD、çanoma オードトワレ 2-23
14 体温計
15 「おさるのジュリアス」のルームシューズ
16 ペットボトルホルダー
17 アネッサ ホワイトニングUV ジェル AA
18 レインコート
19 ベルミス スリムタイツ
演者のサポートが第一優先、という言葉の通り、そのカバンの中身は“自分で自分の身を守るため”のグッズが盛りだくさんだ。最近は今月放送開始のドラマ『武士スタント逢坂くん!』の撮影が佳境に入っており、早朝から深夜まで連日撮影が続いているという。
「“総監督”である私が周囲のスタッフに負担をかけたり、体調を崩したりするわけにはいきません。炎天下や雨天での撮影にも耐えうるように、UVカット機能のあるパーカーやレインコート、ハンディファンなどは必須です」
「連日撮影だとロケ弁続きで栄養も偏ってしまうので、青汁やダイエット用のサプリメントも持ち歩いていますね。それから体温計も毎日使うのでバッグにはいつも入っています」
コロナ禍での撮影。自分自身の体調管理だけでなく、現場での感染防止にも配慮が必要だ。中でも欠かせないグッズはiPadだという。
「撮影現場では、カットがかかるとモニターで映像をチェックします。その際、監督の周辺が“密”になってしまわないよう、このiPadでもチェックできるようにしているんです。また、台本もPDFデータで入れているので、iPadさえあればいつでも確認できます。これ一つで何でもできますから、撮影期間にはなくてはならないアイテムですね」
プロデューサーと聞くと、会議室で大事なことを決めたり、社内の調整ごとを行ったり……というようなイメージを持っていたけれど、まるで違う。最も現場を想い、最も長時間現場に滞在し、最も多くスタッフ・演者と接する人物だ。
諸田さんは、マイナビウーマン読者と同じアラサー世代。たくさんの職業・世代の人が集まる撮影現場で、どのようにスタッフや演者とコミュニケーションをとっているのだろうか。その答えは意外なものだった。
「大好きな“おさるのジュリアス君”のグッズを、必ず身につけるようにしているんです。ポーチは常に首から下げていますし、撮影現場ではいつもジュリアス君がプリントされたTシャツを着ています。
元々ジュリアス君が大好きで身につけていたのですが、いつしかそれが私のトレードマークのようになって。今では日替わりで違うジュリアス君のTシャツを着ていることが、演者やスタッフとの雑談のきっかけになっているんです」
目に入るだけでテンションが上がるショッキングピンクのルームシューズも、“おさるのジュリアス君”のものだ。忙しくピリピリとした現場でも、キャラクターグッズをきっかけに始まるコミュニケーションが心を軽くしてくれる。そんな空気作りにも、フランクで明るい諸田さんらしさを感じる。
そんな彼女が現在の部署に異動してきたのは約3年前のこと。それまでは『ヒルナンデス!』などの人気バラエティ番組で6年半ディレクターを務めていたという。
現在はドラマプロデューサーとして作品をゼロから立ち上げ、制作し、視聴率という成果まで求められる厳しいポジションにいる。そのプレッシャーは大変なものでは、と聞くと、彼女らしい前向きな答えが返ってきた。
「成果はもちろん求められますが、できることをやるのみ。結果を見て、対策を練って、その結果を見て、また対策を練って……と走り続けるしかありません。もちろんプレッシャーはありますが、自分がA4の紙2、3枚に書いた企画書が実現し、台本ができ上がったときの感動は言葉では表せられないほど。その楽しさがあるから、大変な日々も駆け抜けられるんです」
いつかは、自分と同世代の女性にフォーカスを当てた作品を手掛けたいと考えている。
「良い企画は“怒り”の感情から生まれる、と言われています。私自身も、日々生活する中でアンテナを広く持ち、視聴者の胸を打つことのできる企画を書けるようになりたいですね」
Information
日本テレビ シンドラ『武士スタント逢坂くん!』
©ヨコヤマノブオ・小学館/NTV・JStorm
毎週月曜24:59~(※初回・第2話は25:09~)
2021年7月26日スタート
キャスト:濵田崇裕(ジャニーズWEST)、森本慎太郎(SixTONES)、久保田紗友、長井短、今井隆文
原作:ヨコヤマノブオ『武士スタント逢坂くん!』(小学館 『ビッグスピリッツコミックス』刊)
2019年11月~2021年4月まで『週刊ビックコミックスピリッツ』にて連載されたコミックを実写化。江戸時代、人気の春画師だった武士の逢坂総司郎(あいさかそうじろう)が令和の漫画家・宮上裕樹の下へタイムスリップ! 現代の「まん画」に魅了された逢坂が宮上のアシスタントとして、恋もしながら現代で「自分の春」を見つけ出すコメディ。動画配信サービスHulu・TVer・日テレTADAでも配信されます。
©ヨコヤマノブオ・小学館/NTV・JStorm
公式ホームページ:https://www.ntv.co.jp/bushi/
公式Twitter:https://twitter.com/bushi_ntv
※この記事は2021年07月19日に公開されたものです