
【File1】彼色に染まった結果、“オカン状態”になってしまった恋
今振り返れば「イタいな、自分!」と思うけれど、あの時は全力だった恋愛。そんな“イタい恋の思い出”は誰にでもあるものですよね。今では恋の達人である恋愛コラムニストに過去のイタい恋を振り返ってもらい、そこから得た教訓を紹介してもらう連載です。今回はさかもとみきさんのイタい恋。
数々の恋愛アドバイスを公私ともにぶっぱなし続ける恋愛コラムニストのさかもとです。ところで、彼氏に「たまにはご飯作って」とお願いしたら「俺にラーメン作らせたら3日かかるけど良い?」って真顔で返答されたことありますか? 私は、あります。
今回はそんな彼に全力投球してボロボロになった私の黒歴史恋愛と、その教訓を涙ながらにお伝えしたいと思います。
華の大学生で人生初依存の恋
18歳、「タイガースファンだから関西の大学に行きたい」と親元から離れ、ひときわ陽キャの多そうな野球部に勧誘されマネージャーとして入部しました。
その野球部で私のスペックでギリギリ落とせたのが、当時付き合っていた彼氏。無口で(後に内弁慶と判明)むっくりしたたたずまいがトトロに似ていたので、あだ名は「トトロ」でした。自堕落な私は大学に近い彼の家に入り浸り、半同棲状態に。
狭い廊下と小さなガスコンロ、ワンルームの部屋に1人用ベッドのある空間で、「トトロ」が集めていた漫画『ギャグマンガ日和』を何度も読む生活が始まりました。
彼色に染まり自我が消える
「トトロ」と時間を過ごすことが当たり前になっていくにつれ、だんだん私の視野や交友関係は最低限になり、「世界の中心が彼」のお花畑状態に。同時に家族のように深く関わることの安心感(後に依存と気づく……)に飲み込まれ、その状態になんの疑問も持たなくなりました。
バンドがやりたいという彼の趣味を応援していくうちに、自分は根っからのHIPHOPリスナーだったのにもかかわらずメロコアパンクしか聴かなくなり、彼が作った音源の良さを探そうと必死に何度も聞いて薄っぺらいコメントを絞り出すというゲロを吐きそうな苦行が趣味に変わりました。また、彼氏が当たり前にいる安心感からオシャレやメイクもサボり、女としてのランクも落ちていきました(これは自分のせい)。
「トトロ」は一見おとなしく無害に見えましたが、1度へそを曲げると2~3時間謝り続けないと許してくれない頑固で内弁慶な性格。私は「彼を怒らせないように」「彼がいつも機嫌良く過ごせるように」と家事を率先してやり、とにかく機嫌を伺い、尽くしていました。
でも、私、不思議と幸せだったんです。私は、彼が運命の人だと信じていたし、これだけ良くしている私からは離れられないだろうと踏んでいて、結婚するだろうなと信じていたから。
逆境ほど燃える恋からの失恋
奉仕という支配をもって、彼氏が自分から離れないと謎の確信を持っていた私の恋は、割とあっさり終わりました。彼は地元近くで就職が決まり、遠距離恋愛になることが決定。環境の変わった「トトロ」は、あっさりほかの女に心変わりをしたのです。
それは、バイトを終え、急いで夜行バスに乗り、久しぶりに訪れた彼の部屋のごみ箱に捨てられた居酒屋のレシートから発覚しました。
「友達いないのに誰かと2人で居酒屋行ってる……しかも普段頼まない甘いお酒とスイーツまで!!!!」
当時、働いている彼を支えたいと、夜行バスでせっせと「トトロ」宅に訪問しては掃除洗濯、ごみ捨てまで行い、ご飯を冷蔵庫&冷凍庫に作り置きして帰るのが常習化していました。私は、息子の部屋を掃除しているとエロ本を見つけてしまったオカンのように、他の女と行った居酒屋デートのレシートを発見したのです。
そのレシート片手に彼を問い詰め、職場に仲の良い女の子がいるのを認識。でも、私は「トトロ」との恋愛を「運命の恋」と妄信していたし、遠距離も試練だし、こんな小難しい男を並みの女が管理できるわけないと踏んでいたので、こともあろうに、そこから粘り続けました。結果、執着という地獄に、落ちていったんです。
フラれてからもしがみついた半年
そこからは、早かった……。疑惑の生まれた遠距離恋愛がうまくいくわけありません。私の誕生日も「仕事が忙しいから」と訪問すらやんわり断られ、それでもめげずにサプライズで彼の家に自分でデパ地下のケーキを買って訪れました。
その時、彼に「誕生日は、誰もがお前みたいに当たり前に祝われるもんじゃない」と迷惑そうに言い放たれ、ケーキは味が全くしませんでした。
それでもやっぱり運命の人と信じていたので、彼の親友と彼の家に押しかけたり、彼の心変わりを聞いてフラれてからも「友達としてで良いから」と半年ほど追いすがったり、彼の恋愛相談にのりながら号泣する日々。
今恋愛相談に来てる子に「ダメだよその行動!」とアドバイスしている内容を、当時は友達の忠告も聞かずにフルコースでゴリゴリしていました。ああ、黒歴史!!!
彼氏に捨てられて残ったのは、まるで体の半身をもぎ取られたような依存の後遺症からくる喪失感、そして女をサボり続けたツケで脂肪に包まれたモサい女がさめざめと泣く、絵にもならないような現実でした。
運命の恋じゃなかったと目が覚めた瞬間
泣く時間は少しずつ減り、彼の恋愛相談にのっていくうちに新しいぽっと出の女とうまくいき、彼と私の人生はもう交わらないんだろうなと思い始めた頃、目が覚めました。
きっかけは、泣き腫らしすぎた痛さに目が物理的に開かなくなり、その化け物のような姿を鏡で見たこと。「何してるんだろう」と。よく考えたら「好きなところは1つもない」という事実に気付き、終わらない、消えないと思いこんでいた「トトロ」への執着もだんだん手放せるようになりました。
久しぶりにもともと私が好きだった音楽を聴いた時の解放感ときたら! 「トトロ」のために我慢をたくさんしていたことを思い知りました。そこからはすぐ楽しくなったし、運命の恋じゃなかったのもよく分かったし、新しい恋なんてすぐできましたよね!
ギャンブルでお金をつぎ込むように、いくら労力と時間をかけても恋では「勝てない」ことに最初に気づいたイタい恋となりました。
イタい恋から得た教訓「お母さん状態になったら恋は腐る」
そんな恋愛を経て、「男性が喜んでくれるから尽くす」は恋愛において全く逆効果だと知りました。
最初こそ喜んでもらえても、当たり前になると感謝されるどころか、男をどっぷりダメにします。そのうえ、いくら尽くそうとリアルお母さんと比べられるので勝てないし、お母さんと恋愛できないから男はときめきを探してほかの女に行くし、不毛でしかありません。
うっかり尽くしてしまう、気が利く女性陣にやってほしいことは2つ。
まずは付き合う前に「やらないこと」を決めましょう。私は、同棲しても「嫁じゃないんだからお弁当はつくらない」を徹底していました。特に同棲は、期間が長すぎると結婚するメリットがなくなり、「このままで良いか」と男性に思われて婚期が延びまくります。
次に、自分でやるほうが早いと思いながらも、男性に「頼む・頼る」習慣をつけてください。ポイントは可愛く頼んで、感謝すること。仕事でも自分で全部やってしまうと、バディや部下は育ちませんよね。頑張る人とサボる人ができるだけです。
好きな人と長く幸せに過ごすためにも、私の黒歴史を踏み台に幸せになってくれることを願います。
(文:さかもとみき、イラスト:菜々子)
※この記事は2021年05月23日に公開されたものです