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【File2】やけくそで付き合った「王子」との恋

#イタい恋ログ

E子

今振り返れば「イタいな、自分!」と思うけれど、あの時は全力だった恋愛。そんな“イタい恋の思い出”は誰にでもあるものですよね。今では恋の達人である恋愛コラムニストに過去のイタい恋を振り返ってもらい、そこから得た教訓を紹介してもらう連載です。今回はE子さんのイタい恋。

やけくそで付き合った男のあだ名は「王子」

そもそも私と彼が付き合ったのは、シンプルに「やけくそ」であった。

19歳のときに自分が好きになって付き合った人の学歴が、私より少し低い、ということで親に交際を反対され、「有名国立大学の大学生の知り合いがたくさんいるでしょう⁉ なんでそういう男の子と付き合えないの!」とバカみたいな説教をされたことに腹を立てた私は、手ごろな有名国立大学の大学生と付き合ってみることにした。

ホーラ、こういうのと付き合えば満足すんだろ? おおん?

という反抗心でなげやりな気持ちで付き合ったわけだが、親はたいそう喜んだ。

彼は某一流国立大学の大学4年生で、色白でとてもキュートな顔立ちをしていた。

あだ名は「王子」。
そして、ものすごいバカだった。

これに関しては本人も「俺、勉強のできるバカなんだ」と自称していたため、誹謗中傷にはあたらないと思っているのだが、マジでバカのひとつ覚えで受験勉強をすべて暗記で乗り越えたらしく、考える力が皆無のバカだった。

しかし、バカを自覚している…という点で、やはり一応国立大学に受かるだけの頭はあったのだろう。本当のバカは自分がバカだと気づかないからだ。

「僕と君のことを歌った歌のよう」……ほんとに?

私が王子に告白されたのはカラオケ屋だった。

何回かデートをした末、王子は私をカラオケに連れていき、湘南乃風の純恋歌を熱唱した。

王子はマジで笑えるくらい歌が上手くて、ほんとうに笑えるくらい美声だったのが、すごく笑えた。

要するに、たいして好きじゃない男が一生懸命歌ったり、美声だったりするとなんかウケる、ということだろうか。

そして歌い終わると王子は、「この曲を聴くと、僕と君のことのようだなといつも思ってた。付き合ってほしい」みたいな感じで告白してきた。

私は心底驚いた。

だって私は彼にとって、大親友の彼女のツレじゃないし(バイト先の先輩後輩でした)。
私パスタ作ってないし。
大貧民もしてないし。

そもそも彼のあだ名は「王子」であるとおり、とても「湘南乃風」とはリンクしがたいキャラだし。

一体どこに感情移入して、どの辺が私とあなたの2人のことを歌ったようだと感じたのだろう? バカの言うことはまじでよく分からない。

が、どういう告白であれ、とりあえず王子と付き合うと決めていた私は、疑問を抱きながらもOKした。

付き合って即、親への紹介を強制される

付き合って3日で私は後悔した。

王子は、「真剣な付き合いなら親に紹介し合うのが当然、将来結婚も考えてほしい」みたいなことを言い出したのである。

19歳の女に向かってなんて重いことを言うのだろう? 意味不明だし親に紹介するほどこちらの気持ちは温まっていない。やんわり断ると王子はめっちゃキレた。

「付き合っているのに親に紹介できないなんておかしい、遊びの付き合いなのか⁉」と。

今思えば遊びもくそも、付き合った理由は「やけくそ」なので、そもそも真剣な付き合いではなかったわけだが、とにかくあまりにしつこいので、面倒を避けるために私は親に王子を紹介した。

親は王子を大変気に入った。

「今まで連れてきたどの女友達よりも、女の子っぽくてカワイイ子ね」と評されるほど、王子はとにかく中性的で乙女チックで、顔が私より断然かわいかった。

王子がくれた、最後の贈り物は……

結局無理がたたって、私はすぐに別れを切り出したわけだが、とにかく別れるのが大変で、半年くらい時間がかかった。

別れると言うと王子は「川に身投げして死ぬ」と言ったり、私の親にメールをして(いつ連絡先交換したの?)、「僕は娘さんのことをこんなに愛していて尽くしているのに、娘さんが応えてくれません」とか言ったり、とにかく完全にストーカーなるものになってしまって、本当に大変だった。

共通の知人である年上の男性から説得してもらい、ようやく王子のストーカー活動は幕を閉じた。

その年のクリスマス、王子は私の親にあるものを預けにきた。「これを、クリスマスの朝に娘さんの枕元に置いておいてくれませんか」と。

それは、純恋歌のCDだった。

親は私に気を遣って、「枕元に置いておいてと頼まれたんだけど、キショイと思うから今渡すね。あの人やっぱちょっと、なんというかあなたには合わなさそうね……」と手渡してくれた。ありがとう、親……。

イタい恋から得た教訓「やけくそで付き合ってはいけない」

軽い気持ちで始めた交際がこんなに大変な事件になってしまうなんて当時の私は思ってもみなかったし、純恋歌は告白のときと最後のクリスマスプレゼント以外でとくに登場しなかったけれど、彼にとっては私との思い出の曲だそうだ。

たぶん、そういう、「この曲を聴くとあいつのことを思い出すぜ……」みたいなのをやってみたかったんだろうナ。

そんな風に思い返して思うわけだが、たしかに私自身、「純恋歌」を聞くと彼を思い出してしまうという呪いにはかかってしまった。

今思い返せば、後にも先にもこういうタイプの男性と付き合ったのはこの1回キリだし、できることなら無かったことにしてしまいたい、イタい過去…。

湘南乃風には申し訳ないが、純恋歌が聞こえてくるたび、イタい過去を思い出させられるようで恥ずかしい気持ちになるのである。

(文:E子、イラスト:菜々子)

※この記事は2021年05月30日に公開されたものです

E子 (アラサー独女コラムニスト)

婚活・恋活を趣味とし活動を続ける30代独身こじらせ女。

いよいよおかしくなりつつある恋愛観が、ツイッター(@escape_no_e_yo)で女性たちに無駄に共感されている。好きな食べ物はダントツで納豆。

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