私たちは、上司や先輩、同僚ならびにクライアント、お客さまなど、社内外のさまざまな方と情報をやりとりしながら日々仕事をしています。その時、「報告・連絡・相談」を正しく行うことは、物事を円滑に進める上でとても重要です。
その中で、何かを人に伝える際に、「ご報告いたします」という言葉を使いますが、皆さんは正しい使い方をご存知でしょうか。
今回は「ご報告いたします」の正しい使い方や、似ているイメージのある「報告」と「連絡」の違いを解説します。
■「ご報告いたします」の意味と成り立ち
まず「報告」という言葉の意味を辞書で引くと次のように書かれています。
「しらせつげること。報知。ある任務を与えられたものが、その遂行の情況・結果について述べること。また、その内容」(『広辞苑』第6版より)
また、「ご報告いたします」という言葉は、「報告する」という動詞を、謙譲語の「ご~する」という形にし、その中の「する」という部分も謙譲語の「いたす」という形にしたものです。さらに「いたす」から「いたします」と、「ます」を付け丁寧にした言葉です。
つまり「ご報告いたします」は、相手を立てつつ丁寧に物事を報告していることになります。
これらをまとめると、「ご報告いたします」という言葉は、依頼された任務について、その進み具合や結果を相手への敬意を表す形で丁寧に伝える言葉なのです。
■「ご報告いたします」を使った例文
では、「ご報告いたします」という言葉の使い方を具体的に見ていきましょう。ビジネスでよくあるシーン別に解説します。
◇(1)任務が終了した時
依頼された任務が終了した時は、以下のように使うことができます。
☆例文
「ご依頼を受けました資料作成につきまして、完成いたしましたのでご報告いたします」
「先日ご相談いただきました件につきまして、お手続きが完了いたしましたのでご報告いたします」
◇(2)任務の中間時点
任務の途中で報告する際は、以下のように使います。
☆例文
「A社との案件の進捗状況ですが、現在~のような状況で~のように動いておりますことをご報告いたします」
「ご依頼いただきました件につきまして、現在弊社にて~の段階まで進めております。近況をご報告いたします」
◇(3)問題が発生した時
任務を進める中で問題が発生したことを報告する際は、以下のような形で使います。
☆例文
「申し訳ございません。私の不注意でお客さまにご迷惑をおかけしてしまいましたことをご報告いたします」
■「ご報告いたします」をより丁寧にした例文
「ご報告いたします」という言葉は丁寧ではありますが、「させていただく」という表現を使って「ご報告させていただきます」とすると、より敬意と丁寧さを伝えることができます。
特に問題が発生した時などは、相手の納得を得ると共に解決まで待ってもらったり、迷惑をかける可能性があるという点からも、「ご報告させていただきます」とする方がいいでしょう。
☆例文
「申し訳ございません。私の不注意でお客さまにご迷惑をおかけしてしまいましたことをご報告させていただきます」
また、特に配慮を要するクライアントやお客さまが相手の場合は、より敬語のニュアンスが高い「申し上げます」という表現を使い「ご報告申し上げます」とすると、なお良いでしょう。
■「ご報告」を使う上での注意点
続いて「ご報告」という言葉を使う際の注意点をいくつかご紹介します。
◇「ご報告まで」は目上の方には使わない
「ご報告」という言葉は、メールの文末などで「以上、ご報告まで」といった形で使われることもあります。この「ご報告まで」は語尾が途中で切れた簡略された表現ですので、上司やクライアント、お客さまなど目上の方に対してはできるだけ使わないようにしましょう。
◇「取り急ぎ」は手紙やメールなら付けても良い
「取り急ぎ」という言葉を頭に付けた「取り急ぎご報告いたします」という表現もよく使われます。この「取り急ぎ」の意味を辞書で引くと「(主に手紙で)諸々の儀礼・説明を省略し用件だけを伝える意」と記載されています(『広辞苑』第6版より)。
「主に手紙で」とあるため「取り急ぎ」は手紙やメールなど文章で伝える際に使うようにしましょう。また、用件のみにとどまらず詳細まで伝えた際には付ける必要はないでしょう。
◇「ご報告差し上げます」は上から目線の印象
「ご報告いたします」と似たような言葉として「ご報告差し上げます」があります。
「差し上げる」は「与える」の謙譲語で、一見丁寧な表現ですが、「与える」の意味を辞書で引くと「相手の望みなどに対応するような物事をしてやる意」とあります(『広辞苑』第6版より)。上から目線の印象を持たれてしまう可能性があるので、使わないのが得策でしょう。
■「報告」と「連絡」の違い
「報告」と似ている単語に「連絡」があります。使い分けに悩む方も多いので、最後に違いを説明しますね。
「報告」と「連絡」は、共に「相手に伝える」という意味を持ちますが、「報告」は、主に済んだ物事のことや結果など過去の事実を伝える時に使います。
一方「連絡」は、辞書によると「互いに関連すること。また、その関連。相手に通報すること。相互に意思を通じ合うこと」などとあります(『広辞苑』第6版より)。
つまり、さまざまな情報や状況などについて、関係する人に知らせ、共有する時に「連絡」を使うといえます。これだけだと「報告」と似ていますが、「連絡」には未来に関する事柄も含まれるのが大きな違いでしょう。
☆例文
「本日15:00より、大会議室にて〇〇に関する会議を行いますのでご連絡いたします」
「来月から新システムを導入することになりました。操作方法を含め、詳しくはメールにてご連絡いたしますので、ご確認ください」
「報告」を使うのは完了した事柄や過去のことを伝える時、「連絡」を使うのは未来のことを伝える時、と覚えておくと分かりやすいでしょう。
■「ご報告いたします」を正しく使おう
今回は「ご報告いたします」の正しい使い方をご紹介いたしました。
報告はビジネスにおいて義務ともいわれるほど重要なものです。だからこそ、「ご報告いたします」を用いるシーンは多いでしょう。正しく使えるように、今回解説したことを頭に入れておいてくださいね。
(直井みずほ)
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