20歳代になると女性ホルモンの分泌はピークに達し、生理(月経)の周期が安定し排卵もコンスタントに起こるようになります。
不規則な生活やストレスの影響により女性ホルモンのバランスが乱れたり、何かの病気が隠れていたりすることによって、生理期間が長くなったり短くなったりすることがあります。
ここでは一般的な生理期間について説明するとともに、生理期間が長い場合や短い場合に考えられる原因や対処方法について説明します。
■生理の平均期間はどれくらい?
生理の傾向(周期、期間、経血量)は18〜20歳ころに定まり、20~30歳代は女性ホルモンの分泌が活発になります。一般的に生理周期は25~38日、生理期間は3~7日、経血量は20~140mLとされていますが、人によって大きなバラつきがあります。
・生理周期:25~38日
・生理期間:3~7日
・経血量:20~140mL(平均40mL程度)
◇平均的な生理周期
生理周期が25~38日の間で、周期ごとの変動が6日以内であれば正常といえます。生理周期が24日以内と短かったり(頻発月経)、逆に39日~3カ月まであいたり(希発月経)、3カ月以上あいたりすると(続発性無月経)、周期の異常となります。
ホルモンの異常やさまざまな病気により、生理の時以外に性器から出血することを不正出血といいますが、生理周期が短い頻発月経と勘違いすることがあるので注意が必要です。
◇平均的な生理期間・経血量
生理期間は3~7日が正常で、平均は5日です。医学的には、生理期間が2日以内の場合を過短月経、8日以上持続する場合を過長月経といいます。
経血量は個人差があり他の人と比較できませんが、一般的には20~140mL(平均37~43mL)を正常範囲内とし、20mL以下の場合を過少月経、140mL以上の場合を過多月経といいます。
過短月経のほとんどが過少月経と同時に起こり、ナプキンの交換がほとんど必要ないほど経血量が少なく短期間です。
過長月経は過多月経と同時に起こることが多く、ナプキンが1時間ももたないような状態が何日も続くことがあります。
【生理(月経)期間・量の異常】
■生理期間が平均より長い場合
生理期間が8日以上続く場合は、医学的には過長月経といいます。
生理をコントロールしている女性ホルモンは、脳の視床下部が下垂体に女性ホルモン分泌のゴーサインを出し、下垂体から卵巣に女性ホルモンを出すように命令することで分泌されます。
女性ホルモンのバランスを司っている視床下部は自律神経系や免疫系の司令塔でもあることから、女性ホルモンの分泌はストレスの影響を受けやすいという特徴があり、そのため一時的に生理期間が長くなるケースがあります。また、子宮筋腫などの病気により長くなるケースがあります。
◇生理期間が長いと判断する基準
出血期間が8日以上あると「長い」と判断されます。出血期間が長くなり、月の半分くらいが生理中のような感じになることもあります。経血量も多くなり貧血を起こしやすくなるため注意が必要です。
◇生理期間が長くなる理由
女性ホルモンのバランスの乱れが原因となる場合や、子宮の病気が原因となる場合があります。
☆(1)女性ホルモンの乱れ
不規則な生活、ストレス、激しいダイエットなどでホルモンバランスが崩れると過長月経・過多月経を起こすことがあります。ただし、このような生理が2~3回続いて正常に戻るときはストレス性と考えられる場合が少なくありません。
☆(2)子宮筋腫
子宮筋層(子宮の中にある筋肉でできている層)にできる良性の腫瘍で、30~40歳代の女性に多く見られます。女性ホルモンの1つであるエストロゲンが関与しており、女性ホルモンの分泌が盛んな年代の20~30%に見られるとされています。
症状は下腹部痛、腹痛、吐き気、頭痛、疲れやすいなどの生理痛(月経困難症)、腰痛、頻尿(トイレが近い)などです。徐々に経血量が多くなっていき、生理期間も長くなることがあります。
☆(3)子宮腺筋症
子宮筋腫と同じような症状で、30歳代後半~40歳代の出産経験のある女性に多く、出産回数が多くなることはリスクとなります。また、子宮内膜の操作を伴う子宮手術をしたことがある女性に多いと考えられています。
この場合、生理を重ねるごとに経血量が増え、月経痛も激しくなり、生理期間の延長や過多月経が見られます。
☆(4)無排卵周期症
生理のような出血はあるものの、排卵していない状態です。生理があれば必ず排卵があるとは限りません。
排卵がないまま子宮内膜がはがれる無排卵周期症では生理周期が不順なことが多く、生理期間が長くなることがあります(短くなることもあります)。排卵が起こらないため、不妊の原因にもなります。
■生理期間が平均より短い場合
生理期間が1~2日で終わってしまう場合を、医学的に過短月経とよびます。ストレスなどが原因でホルモンバランスが乱れることによって排卵が起こらないこともあります。
◇生理期間が短いと判断する基準
生理が始まってから終わるまでの期間が2日以内だと「短い」と判断されます。閉経間近であれば日数が短くなるのは自然ですが、20~30歳代前半の場合は、原因として子宮の発達が未熟なことが考えられます。ただし、多くは臨床的に問題にはなりません。
◇生理の期間が短くなる理由
ストレスなどにより女性ホルモンのバランスが乱れることで排卵がなくなったり、経血量が少なくなったりすることがありますが、多くは子宮が未発達なことが原因です。
☆(1)子宮発育不全
子宮が未発達なケースでは、子宮が小さいために子宮内が狭くなり、はがれ落ちる内膜が少ないことから生理期間が短くなると考えられます。
☆(2)子宮内膜癒着
人工妊娠中絶や流産などの手術で子宮内膜に傷がついた場合や、癒着のため内膜が増殖する範囲が狭くなっている場合に生理の期間が短くなることもあります。ただし、このようなケースは滅多にありません。
また、無排卵周期症でも生理期間が短くなることがあります(前出の無排卵周期症を参照)。
■生理期間の乱れを放置するとどうなる?
生理期間には個人差があるので、排卵周期がきちんとしていれば心配はいりません。排卵は基礎体温を測り、低温相(低温期)と高温相(高温期)の2相に分かれていることで確認できます。
生理期間が長い状態あるいは短い状態が続く場合は、放っておくと不妊となる可能性もあります。
◇過長月経を放置すると起こること
生理期間が長くなるため、経血量が多くなり貧血を起こしやすくなります。また、無排卵周期症であれば不妊の原因にもなります。
◇過短月経を放置すると起こること
生理期間が短いことを理由に医療機関を受診する女性は少なく、臨床的にもあまり問題にはなりません。基礎体温を測ってみて、高温期があるかどうかを確認しましょう。
■生理期間に乱れがある場合は医療機関の受診を
生理期間が長い状態あるいは短い状態が続いて不安に思うようであれば医療機関を受診することをおすすめします。「もし病気だったら……」という心配が先に立ち受診が遅れて大事に至るケースもあります。それよりも「ちょっと変かも……」と思ったときに診てもらった方がよいでしょう。以下は受診する際にやっておくと良いことや注意点です。
◇基礎体温を測る
基礎体温は、4~5時間以上の睡眠後に、起床時の安静な状態で婦人体温計を舌の下に入れて測定します。基礎体温表は診断の手助けになりますので、婦人科を受診する際には持参しましょう。
◇受診する際の注意点
例えば、「毎回5日間だった生理期間が、3カ月前から長引くようになった」といった受診理由や、生理周期、最終生理、過去にかかった病気、服用中の薬、聞きたいことなどをメモして持参すると、医師への伝え忘れを防ぐことができます。
下着を脱いで診察台に乗る「内診」も想定されるため、パンツスタイルや長いスカート(汚れることもある)での受診はおすすめしません。また、オールインワンでの受診はやめた方がよいでしょう。
生理期間の不順は放置せずに医療機関へ
ストレスなどで女性ホルモンのバランスが乱れて生理期間がいつもよりちょっと長くなったり短くなったりすることはあります。ただし、そのような状態が長く続く場合は病気が隠れている可能性もあります。
生理期間が長くなる状態が続く場合は子宮筋腫や子宮腺筋症などの子宮の病気が原因となっている可能性があります。
生理期間が短い場合はほとんど問題になりませんが、子宮の成長が未発達である可能性があります。
隠れた病気がないか確認するのは大切なことです。気になるようであれば、そのまま放置せず、基礎体温表を持って医療機関を受診しましょう。
(文・構成:株式会社ジーエムジェイ、監修:窪麻由美先生)
※画像はイメージです
参考文献
「病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科(第4版)」(メディックメディア 2018)