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自分の舌を大切にして働く「食べキャリ」。ネスレ日本 荻原裕子さんの働き方

#働くわたしの選択肢

ameri

「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。

取材・文:ameri
撮影:洞澤佐智子
編集:高橋千里/マイナビウーマン編集部

大学にて食物学科を専攻し、乳業メーカーにてキャリアを積んだ後、ネスレ日本株式会社に中途入社した荻原裕子さん。

食品事業部にて、自社製品を使用したメニューを開発・提案する業務を担当。大学でフードスペシャリストの資格を取得したことから、名刺にも「フードスペシャリスト」と記載しています。

柔らかい雰囲気をまとっている彼女ですが、コックコートを羽織ると一変! キリッとした表情で料理と向き合っている姿が印象的。

話を伺ってみると、そこにはあふれる「食」への熱い思いが。彼女がどんなことを大切に働いているのか、詳しく聞いてきました。

高校生時代、食の道へ進むことを決意

ネスレ日本で「食」に関する専門的なお仕事をされている荻原さん。いつ頃この分野へ進もうと決めたのでしょうか?
高校生の頃から「食に携わる仕事がしたい」と思っていたので、食物学科のある大学へ進学しました。調理実習に力を入れている大学だったので、本格的なフランス料理を習得したり、栄養素の基本を学んだりしました。
高校時代、食分野に進もうと決めたきっかけはあったんですか?
元々、食べることも作ることも好きだったのですが、高校時代に周りの友達よりも「食」に関する知識が多いことに気付き、それが自分の強みなのかもと感じたことがきっかけでした。
昔から料理が好きだったんですか?
はい! 母が管理栄養士だった影響もあり、「食」への興味は人一倍あったと思います。

大学の食物学科で学んだ後、新卒入社後はどのようなお仕事をされていたんですか?
乳業メーカーに就職し、果汁飲料やヨーグルト、プリンなどの商品開発を担当していました。人数が少ない会社だったので、一から配合して味を作り、パッケージを決め、営業同行まで行っていましたね。
幅広い! そもそも、商品開発に関わっている方自体がとても少ないイメージなのですが……。新卒で商品開発を担当するのは、狭き門ではなかったですか?
そうですね。小さい会社だったということもあり、商品開発に関われたのはラッキーだったと思います。大手の食品メーカーでは、商品開発がしたくても、営業からキャリアをスタートしている方が多いので。
そこからネスレへ転職されたとのことですが、転職のきっかけは何だったのでしょうか?

一通り商品開発に携われたことで、乳業に限定せず、もっと広い範囲で商品を開発してみたいという気持ちが芽生えてきました。

あとは、それまで担当していた商品開発はどうしても「料理」というより「実験」に近い形だったので、より「料理」に近いメニューの開発に関われたらいいなと思い、転職をすることに決めました。

数ある食品メーカーの中で、転職先にネスレを選んだ理由は何だったのでしょう?
実は私、最初はネスレの募集要項が目に入っていなかったんですよ(笑)。
えっ、どういうことですか?

コーヒーが苦手でして(笑)。

やっぱり「ネスレといえばネスカフェ」というイメージが強くて、最初は転職先候補になかったんですけど、募集要項をよく読んでみると「メニュー開発」という文字が目に入りました。そこで初めて「何のメニュー開発をするんだろう? コーヒー以外の商品もあるの?」と興味を持った感じです。

調べていくと、自社商品を使ったメニューを開発してレストランやホテルに提案するなど、自分のやりたいことにマッチしていたので、転職先候補に決めました。

入社前後で、ギャップを感じたことはありましたか?
大きな会社なので、入社前は「一部の業務だけを担当するんだろうな」と思っていました。ですが、実際に入社してみると各部署の人数は思っていた以上に少なく、広範囲の業務を担当できています。
荻原さんが感じる、ネスレの好きなところを知りたいです!
明確な目標があって、そこへ向かってみんなが計画的に頑張っているところが好きです。
逆に「ここ、どうなの?」と不満に思う部分はありますか?

大企業かつブランドを大切にしている会社だからこそ、何かを決める時にはさまざまな部署の関係者に確認をしなければいけないことが大変ですね。

ある部署に確認したら「あっちにも聞いて」、言われた部署に確認したら「そっちにも聞いて」と、どんどん広がっていって終わらないこともありました(笑)。前職との規模感の違いに戸惑うことは、正直あります。

「フードスペシャリスト」の資格を生かしたメニュー開発

聞いたところによると、荻原さんは「フードスペシャリスト」として働かれているとか。
実は、フードスペシャリストというのは肩書きではなく、「日本フードスペシャリスト協会」で取得できる資格でして。私はその保有している資格と業務内容がマッチしているので、名刺にも書かせてもらっているんです。

フードスペシャリストって、どういう資格なんですか?
「食全般に詳しい専門家」であることを示す資格です。
かっこいい……!
逆に私、栄養士の資格は持っていないんです。というのも、栄養バランスの整った食事を提供する機会が多い栄養士さんの仕事よりも、食の楽しさを知ってもらう食事を提供することに特化したフードスペシャリストの仕事に魅力を感じていて。
なるほど。荻原さんのように1つの分野を極める専門職は、行き詰まった時に別の道へ行きにくいリスクもあると思います。そこに怖さはなかったですか?
それよりも、やりたいことをやりたい気持ちが強かったですね。今後も「食」という軸はぶらさないと思います。
今は具体的に、どんなメニュー開発を担当されているんですか?
今は食品事業部という部署に所属して、コンソメやブイヨンでおなじみの「マギー」製品や、デザートブランドの「ドチェロ」製品を使ったメニュー開発を担当しています。

ちなみに部署のメンバーは何名いるんですか?
一緒に働いているのは6名です。
思ったより少ない! 部署内の男女比はどれくらいですか?
2:4で女性が多いです。部署内の6名はそれぞれ担当が違うので、同じ仕事をしている人はいないですね。
最近、コロナの影響で働き方は変わりましたか?

コロナ前までは、ホテルやレストラン向けの製品を扱う業務用の問屋さんが開催する展示会に試食メニューを数百個単位で出していたのですが、コロナの影響でそれが今は全て中止になっています。

現状そういった外食業界のお客様へのメニュー提案は減ってきていますが、その代わり“自炊”や“中食”の需要が伸びているので、「マギー」や「ドチェロ」を使った、自宅で楽しめるメニューの開発を進めています!

「レシピの専門家」として聞かれたこと以上を返したい

荻原さんが食の専門家として働く上で、大切にしていることはありますか?

メニュー開発の依頼はもちろん、それ以外にも「取引先に提案をするので、○○のレシピの詳細が知りたい」などといったレシピに関する質問があった時には、なるべく早く返事をするようにしています。

自分の細々とした仕事よりも優先するように、かつプラスアルファで返事をすることも意識しています。

プラスアルファとは、具体的には……?

例えば「〇〇のレシピが欲しい」と依頼された際に、もし目当てのレシピがなかった場合「ありません」で終わらせるのではなく、「こういうものだったらできます」「似たものでどうでしょう」「少し待ってもらえたら試作しますよ」と提案するんです。

レシピについて詳しく知っているのは私たちなので、「尋ねられたこと以上を返したい」とは常日頃思っていますね。

ちなみに、これまでの中で印象に残っているメニュー開発はありますか?
やはり「マギー 無添加コンソメ」を使った「氷のコンソメ」ですかね。コンソメスープを凍らせ、かき氷にして料理にかける新感覚メニューです。

初めて見た時は衝撃を受けました! 「氷のコンソメ」のような、クリエイティブなアイデアを生むために意識していることはありますか?
テレビのグルメ番組はよく見ているかもしれないです。インターネットでがっつり情報を取りに行くとどうしても自分で選んでしまうので、普段何となく見ているテレビ番組の方が、意外と新しいアイデアにつながることが多いです。
日頃から自然と情報収拾をしているんですね。
「氷のコンソメ」も、テレビで放送されていたハンディータイプのかき氷機の存在を思い出して、「凍らせたコンソメと掛け合わせたら面白そう」と思いつきました。
何となく目にした情報がアイデアとつながるなんて、すごい!

仕事とプライベートは切り分ける派。でも食への愛は絶やさない

荻原さんのプライベートについても教えてください! 普段、ワークライフバランスは意識されてますか?
バランスの割合はあまり意識していませんが、土日は仕事のことを忘れるようにしています!
切り分けているんですね。休日は何をしているんですか?
中学生から続けているバドミントンをしたり、長期休みは食べ歩きの旅へ出たりしてリフレッシュしています。
切り分けているとはいえ、やっぱり休日にも「食」が出てくるんですね。
そうですね。宿は安くても良いのですが、食事にはしっかりお金をかけます。高いものを食べるということではなく、その土地ならではの食事を楽しむのが好きです。
郷土料理を食べると、「食」の新しい発見が多そうです。

旅行以外でも、普段からさまざまな食べ物を食べてみることは意識していますね。知らない食べ物を取り入れ、自分の中の「食」をアップデートするようにはしています。

その場では「おいしいな」くらいしか考えていませんけど、仕事でメニューを考える時に引き出しの1つになっていると思います。

荻原さんにとって「食」は、切っても切り離せないものなんですね。「食」への愛の深さを感じました。そんな荻原さんが開発するネスレのメニュー、これからも楽しみにしています!

※この記事は2020年11月26日に公開されたものです

ameri

2016年より執筆をはじめ、主に美容・恋愛・ウエディングについて書いています。美容とコーヒーとチョコレートをこよなく愛するフリーライター。コスメと触れ合うこと、旅行、カフェ巡りが趣味です。百貨店のコスメフロアによく出没する特徴あり。

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