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誤用が多い「やぶさかではない」の本来の意味は? 使い方や類語を解説

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「やぶさかではない」の言い換え表現

前述の通り、「やぶさかではない」の誤用が広い範囲にわたって増えていることが分かりました。

しかも、文化庁の調査によれば、それに疑問を感じない人の方が多いわけですから、注意が必要です。

なぜなら、「やぶさかではない」「やぶさかでない」を本来の積極的な意味で使っても、それが相手に正しく理解されなければ、「仕方ないからやりますよ」という消極的な意味に受け取られてしまうからです。トラブルの元になることもあるでしょう。

コミュニケーションにおける言葉の役割は、何より互いの意思が伝わること。誤解を招きやすい言葉なら、伝わりやすい言葉に変換する工夫も必要でしょう。

そこで、「やぶさかではない」「やぶさかでない」に変わる言葉を次に紹介します。

「喜んで〜する」

物事の可否だけでなく、「喜んで」という気持ちを表すことができます。

例文

・私でよろしければ、喜んで参加します。

「進んで〜する」

立候補する時など積極的な意思表示ができます。

例文

・彼は、そのプロジェクトに進んで手を挙げた。

「全面的に賛成する」

一点の曇りもなく同意する時に使えます。

例文

・今回の案件を進めることに、全面的に賛成です。

また、何かを打診された時に、快諾する時には以下の言葉を使うといいでしょう。

「お安い御用です」

簡単に行える時に使います。

例文

・ええ、お安い御用ですとも。

「もちろん」

「言うまでもなく」という意味で使います。

例文

もちろん、OKです。

「ぜひ」

「ぜひ」は、「あることを実現したいという強い気持ちや意思を表す」語です。

「どうあっても、きっと」という意味で使います。

例文

・うれしい! ぜひ、やりましょう。

誤解を生まないためには言い換えや表現の工夫を

いかがでしたか?

「やぶさかでない」「やぶさかではない」は、本来は「喜んで~する」という意味であると紹介しました。

ただ、「仕方なくする」という意味で捉えている人の割合が、「喜んでする」という意味で捉えている人の割合を上回っていることからも分かるように、「やぶさかではない」は誤用が多い言葉です。

何かを打診され、その相手には積極的な気持ちや快諾を表現したいけれど、周囲に対しては何となく濁しておきたい……。

そんな空気を読む風潮の中で「やぶさかではない」という言葉が選ばれ、「ただし~」というような条件付きの誤用表現も増えているのでしょう。

そんな時は、「賛成」という言葉に言い換えた上で、「私も理念としては100%賛成です。ただ、現場では……」など、何に対しての同意で、障害や条件は何なのかをピンポイントで明解に示す方が良いですね。

本来の言葉の意味は正しく理解しておきつつ、相手や状況に合わせて言葉を言い換えたり、言い回しを工夫したりすることで、より誤解を生まないコミュニケーションが可能になります。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

※この記事は2020年09月18日に公開されたものです

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師) (ライティングコーチ・文章術講師)

コピーライターとして長年「ことば」に関わってきた経験値を元にまとめた「ほどよい敬語」(https://ameblo.jp/comkeigo/)が好評。過剰さや不適切さを排し、明快に説く内容は「違和感の理由がわかりスッキリした」と質問サイトなどでたびたび引用される。

自治体・団体・医療機関向けSNS活用、文章術研修の講師でもある。

著書に『この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術』(青春出版社)『前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?』(日本経済新聞出版社)『ソーシャルメディアで伝わる文章術』(秀和システム)など。公益社団法人日本広報協会アドバイザー。

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