誤用が多い「やぶさかではない」の本来の意味は? 使い方や類語を解説
「やぶさかではない」の使い方(例文付き)
「やぶさかでない」「やぶさかではない」は、しばしば「〜に」「〜するのに」という言葉と一緒に使います。
「〜にやぶさかでない」「〜するのにやぶさかではない」と表現します。
より丁寧に言いたい場合には「やぶさかではありません」「やぶさかではございません」と表現します。
主語は「人」であって、「物事」ではありません。
例えば「その仕事はやぶさかではない」という書き方は間違いです。正しい使い方は、「私は、その仕事をすることにやぶさかではない 」です。
日常会話で使う機会は少なくなりましたが、政治家の答弁や記者会見など、報道で聞くことがありますね。
「やぶさかでない」「やぶさかではない」は、以下のような使い方ができます。例文を通じて把握しましょう。
「努力を惜しまない」の意味で使う場合
「努力を惜しまない」という意味では、次のような例文が挙げられます。
例文
・私としては、今回のコンペ参加を承諾するに、やぶさかでない。
・チーフに任命していただいたからには、本プロジェクトの遂行にやぶさかではございません。
「喜んでする」の意味で使う場合
「喜んでする」という意味では、次のような例文が挙げられます。
例文
・弊社としては、F社と協業することにやぶさかではない。
・田中様のお声掛けであれば、やぶさかではありません。
「喜んで引き受ける」意味で使う場合
(依頼に対して)快諾する意思を示す時にも使えます。
例文
・もちろんです。やぶさかではございません。
・はい、ぜひとも! お受けするにやぶさかではありませんよ。
「やぶさかではない」は誤用の多い言葉
以上のように、何かをする際に「喜んでする」のが「やぶさかではない」の本来の意味です。
ところが、平成25年度(2013年度)の文化庁「国語に関する世論調査」によると、「仕方なくする」という意味で捉えている人の割合が、「喜んでする」という意味で捉えている人の割合を上回っているのです。
日常であまり使われなくなったために、本来の意味が分かりにくくなってきているのでしょう。
加えて、「やぶさかでない 」の「ない」が否定的なニュアンスを感じさせることも一因だと考えられます。
以下に、「仕方なく〜する」「ためらいつつ〜する」という間違った意味で使っている例文を挙げます。
誤用の例文
・部長がどうしてもとおっしゃるのなら、残業するにやぶさかではありません。
・私も苦手な分野だが、他に誰もいないと伺ったので、お手伝いするにやぶさかではない。ただ、引き続き適任者探しには努めてもらいたい。
特に昨今は、上の2つ目のように「〜するにやぶさかではない。ただ……」な使い方をする人が増えています。
「喜んで〜しますよ」と言った後に、「ただ」「ただし」「ところが」などの接続詞を付け足して、条件や言い訳を述べたり、逆説的なことを述べたりするわけですね。
誤用にも関わらず、会議、国会答弁でも見受けられます。公的な場面で見聞きすることにより、ますます誤用が広まっていくという現状があります。