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長くてつらいトンネルの「出口」になれたら。EXITが2人で目指す場所

マイナビウーマン編集部

マイナビウーマンのコア読者は“28歳”の働く未婚女性。今後のキャリア、これからどうしよう。結婚、出産は? 30歳を目前にして一番悩みが深まる年齢。そんな28歳の女性たちに向けて、さまざまな人生を歩む28人にインタビュー。取材を通していろんな「人生の選択肢」を届ける特集です。

取材・文:井田愛莉寿(マイナビウーマン編集部)、撮影:須田卓馬

“「俺らが、みんなの長くてつらいトンネルの『出口』になれればいいなって」”

仕事がうまく行かずに落ち込んで、ぼーっと見ていたテレビ番組。そこに映っていたのは、チャラすぎる風貌の2人。そして、ギャップありまくりなコンビ名の由来話。

EXITの2人にインタビューすると決まった時、思い出したのはそんな瞬間の記憶。

今の自分は、あの時何に悩んでいたかも忘れているくらいだから、きっとテレビの向こう側にいた2人がちゃんと出口まで連れて行ってくれたのだろう。

今回届ける選択肢は、笑いで誰かを救い続ける2人のスーパーヒーローの話。

EXIT

凸凹な2人がコンビになった瞬間

「出会った頃、りんたろー。さんが人生楽しくなさそうに生きてたんすよ。未来が見えないみたいな、そんな顔で漫談してたんです。だから俺が救って、一緒に楽しい道へ導いてやりてぇなと思ったのが、誘ったきっかけでした」(兼近さん)

本気なのか、冗談なのか。どちらとも取れない表情でひょうひょうとコンビ結成秘話を語る兼近さん。その隣で、りんたろー。さんが少し照れくさそうに笑う。2人の絶妙な空気は唯一無二で、純粋にうらやましい距離感だと思った。

「こいつ、いきなり『M-1かき回しましょう』って声をかけてきたんですよ(笑)。すげぇ失礼な後輩だなって思ったのが本音。でもまぁ、その勇気を買いました。で、一緒に漫才をしたら最高に楽しいものができた。その瞬間、100パー売れるって確信したんです」(りんたろー。さん)

EXIT りんたろー。さん

不完全燃焼な日々を過ごしていたのは同じ。でも、芸人を目指した理由を聞けば、2人の答えはバラバラだから面白い。

「元々は芸能人になりたかったんですけど、俳優も歌手もモデルも無理。自分のビジュアルを踏まえると芸人しか残っていなかったんですよ(笑)」(りんたろー。さん)

「俺の場合は、いろんな人に迷惑をかけて生きてきたから。少しでも恩返しするために、誰かを笑わせたり、楽しませたりしたいと思ったのが理由かな」(兼近さん)

EXIT 兼近さん

2人は噛み合っているのか、いないのか。破天荒な奇跡の出会いが、まさかここまでの大旋風を巻き起こすとは。その凸凹な意思と個性は絶妙にフィットし、形となった。

「俺にできないことは全部、りんたろー。さんがやってくれるんです。俺、きっと人より劣っている部分の方が多いんですよ。たまたまどっかの部分が優ることもあるけど、基本は劣ってる人間です。ネタを書いてくれるのも、日常の会話を成立させてくれるのも全てりんたろー。さんなんですよ」(兼近さん)

「そうそう、たまにこいつの発言はぶっ飛んでるんで、僕がそれをオフィシャルにする役目だと思ってます(笑)。

でも、逆もあるんだよね。僕、ぶっ飛べないし、すぐにひよるんで、兼近がいてくれるだけで助かる。お互いにないものを補完し合っている感じ。それに、僕を変えてくれたのは完全に兼近です。彼に出会うまでの僕は、本当に腐ってたんで」(りんたろー。さん)

壁にぶつかった2人が芸人をやめなかった理由

EXIT

“「2人でM-1かき回しましょう」”

そんな突拍子もない号令で、彼らがM-1グランプリに出場することを決めた際、つけた仮のコンビ名はSCANDAL。

言わずもがな、EXITは組み直しのコンビ。それぞれ元相方が起こした“スキャンダル”をきっかけに解散を経験し、今に至る。

一度は壁にぶつかった2人が、なぜまた人を笑わせるために再起したのだろう。

「僕に唯一誇れる才能があるとしたら、それは『お笑いをやめなかったこと』です。あの時、諦めなかった僕がいるから、それを兼近が見ていてくれて、声をかけてくれた。

それに僕、芸人をやりきった実感が全く得られていなかったんですよ。動けなくなるまでがむしゃらにやってからでも、辞めるのは遅くないと思う。そうやってアクションを起こし続ける姿は、兼近がそうだったように周りがきっと見てくれているはずだから」(りんたろー。さん)

「大体壁っていうのは、前に進もうとするからぶつかっちゃうだけ。その横を歩いたら、多分空いてるんすよ。だって、壁って一生続かないから。

一回ぶつかった壁を前に怖くなるかもしれないけど、みんな何だかんだ怖いことが好きでしょ? ジェットコースターに乗りたがるし、怖いもの見たさに新しい場所へ行く。俺は、それと一緒の感覚です」(兼近さん)

目指すは東京ドームで漫才をする芸人

最近じゃEXITの2人を目にしない日の方が珍しい。テレビ番組に、YouTube、SNS。いつもメディアの中心には彼らがいて、飛ぶ鳥を落とす勢いとはまさにこのことだと実感する。

さらに第7世代という言葉は瞬く間に広がり、EXITは昨今の若手芸人ブームを牽引する存在となった。

そんな無敵の2人に「ライバルの存在は?」と聞けば、目を合わせて「やっぱり『ちゃらん婆』しょ?(笑)」と悪い笑顔を見せる。

EXIT

「めちゃくちゃチャラいコンビなんですけど、ちゃらん婆だけには負けたくないっすね。だって俺ら、ちゃらん婆を見てチャラ男芸人を思い付いたんで(笑)。俺らが後発、二番煎じ!」(兼近さん)

「いや、本当にそうなんだよね。ただ、ネタがチャラすぎて一切笑えないっていう(笑)。そこで俺らはちょっとテコ入れしたの。だってあいつら、Zimaの瓶持って漫才するんですよ?」(りんたろー。さん)

「Zima飲んだ状態で舞台に立つやつ、お客さんもさすがに笑えないでしょ(笑)」(兼近さん)

EXIT

話は変わって2019年12月29日、EXITはパシフィコ横浜で単独ライブを行っていた。

その演出は、私たちが想像する“お笑いライブ”の域をはるかに超えていて、多くの観客を驚かせた。OPムービーが流れたかと思うと、2人はステージの下から飛び出し、音楽に合わせて歌う。まるでアーティストのライブのように。

二番煎じだなんて冗談を言って笑う彼らだけど、新しいことを生み出す姿勢と意欲は止めない。そんなEXITはこの先どんな景色を見せてくれるのか。

これから先の野望を聞けば、「東京ドーム?」とこぼす兼近さんに、当然のごとく「だね」とりんたろー。さんが相槌を打つ。

「東京ドームで芸人が漫才をやるっていうのは、そうそうないことだと思うから。『芸人』というポジションを高めていきたいんすよね」(兼近さん)

「そうやって、EXITがお笑い界を盛り上げられたらいいよね」(りんたろー。さん)

EXIT

ここで、取材の裏話を一つ。

インタビュー前、「人生観とか、ちょっと真面目な話を聞かせてください」と、2人には申し訳なさすぎる布石を打った。だけど、やっぱり出てくる話や掛け合いはまるで漫才のようで、この記事では書き切れない脱線と笑いで現場は溢れていた。

一度は長いトンネルの中で立ち止まった経験のある2人だからこそ、「誰かの出口になりたい」という言葉は本気なのだろう。目の前にいる1人から、メディアの向こう側にいる何百万人まで、1人残らず笑わせたい気持ちは十分すぎるほど伝わってきた。

東京ドームの出口で、2人が笑顔の観客を見送る日は来るのだろうか。来る気がしてならないのは、きっと私だけじゃないと思う。ヒーロー達の快進撃はまだまだ続く。

 

※この記事は2020年06月04日に公開されたものです

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