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コラム 片思い

愛の言葉は「殺す」か「死ぬ」か? 破壊衝動がスパークする曲 #ラブソングのB面

ぱぴこ

聴く人、聴く環境によって「ラブソング」の捉え方はさまざま。そんなラブソングの裏側にある少し甘酸っぱいストーリーを毎回異なるライターがご紹介するこの連載。今回は、外資系OLコラムニストのぱぴこさんに「ラブソングのB面」を語っていただきます。

思い出をフラッシュバックさせるラブソングには、歌詞への共感や陶酔、憧れなど、自分の気持ちの投影先としての機能が必要です。

感情に寄り添う歌詞、思いを具現化したような旋律。アーティストが紡ぐ音と調べに、我々一般ピープルは自分の心の鏡の役割を期待します。

しかし、です。

中学〜高校時代に私が熱狂した音楽は、椎名林檎、Cocco、鬼塚ちひろ、柳美里プロデュースの奥田美和子という「THE・黒歴史養成学校(特進クラス)」といったラインナップでした。

曲の中で彼ら・彼女らが描く人々は、愛しい相手を食して同化したがったり、恋した相手の屍を抱いて眠りたがったり、グレッチで殴られたいと望んでいました。ハードルが高い。高すぎる。

全身全霊で飛び込む恋愛は「いのち すてます」になる

当時、私が大好きだった歌の歌詞を見ると「戦場に生きているのか?」「平成の東京はどれだけ修羅の国なのだ?」と疑問が沸く、死にたがりっぷりが満載だった。

私の腕はどうしてあの日 あなたを抱いて殺めなかった(Cocco『晴れすぎた空』)

新宿のカメラ屋さんの階段を降りた茶店は ジッポの油とクリーム あんたの台詞が香った
云ったでしょ?「俺を殺して」(椎名林檎『浴室』)

上記2曲はサビどころか、歌い出しでこのザマです。ティーンが本気で影響を受け、実行した瞬間に、少年刑務所・鑑別所へ一直線。しかし、これらはまぎれもなくラブソングです。

強烈さがあればあるほど特別に違いないと思い込む女

破壊衝動がマシマシな曲の根幹メッセージは、「他などいらぬという強い意思」「唯一無二の相手への恋慕」です。自分以外の他者によって、強烈な感情を抱きたい! そのような恋愛をしてみたい! と、少女に強烈な憧れを抱かせるには十分すぎる破壊力を持っていました。

結果、少女時代の私は「“なんとなく”付き合う」という主体性のないものを恋愛と見なせぬ! という、メンドクサイこじらせ方をします。

このように恋愛を過度に神格化する女の行動は、大きく2つに分かれます。

(1)理想が高すぎて恋愛に踏み出せなくなる
(2)運命の恋を求めて片っ端から試してみる

どちらに行っても獣道! 地獄にしか繋がっていない! と叫びたくなりますが、無駄に好奇心だけ強い私は「(2)運命の恋を求めて片っ端から試してみる」派として、盛大に失敗することになります。

感情ジェットコースターを経験して大事故へ

片っ端からといっても、中高生の恋愛なんてたかがしれています。恋という名の餌に釣られ、自らの未体験ゾーンに突っ込む死にたがり野郎さながらですが、当時は「あの歌詞のような感情を知りたい」という気持ちが最優先でした。

18歳の私は、「あれも違う、これも違う」を繰り返した後、「運命!」と思い込める相手と出会い、付き合い、ある日破局して、その後2年のどん底失恋期間を味わいます。

私の運命の恋(錯覚)は、突然届いた「もう好きじゃない」というメールでドンガラガッシャーンと壊れます。しかし、陶酔した恋愛が木っ端みじんに壊れて訪れたのは、ラブソングへの理解の深まりです。

そう。「強烈な感情」は幸せ絶頂時だけでなく、失恋時にも味わえます。そして、破壊衝動がマシマシな歌詞たちは、どん底にいる女にほど響くものです。

もうあんな没頭はできないから、聴きたい破壊衝動ラブソング

自分の感情の上下の激しさ=「思いの大きさ」でないことを今の私は知っています。

18歳のときは脳がスパークして焼き切れるような、相手と死ねる関係をラブソングに見ていましたが、今は一緒に生きて歩いて行ける関係が理想です(当たり前だ)。

だけど、あの日憧れた「あなたのために死ねる」をめちゃくちゃエモーショナルに歌い上げた曲を聴く度に、強い衝動が一瞬よみがえります。破壊衝動ラブソングに憧れたり、気持ちを重ねたりすることはもうないけれど、残り火を楽しむように「あなたと私」の世界に浸るのは悪くありません。

(文:ぱぴこ、イラスト:オザキエミ)

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