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今増えている「でき婚」の意外な懸念点3つ #生きていけ、私

仁科友里

女性がタフに明るく生き抜いていくために、世の中の出来事をどう見たらいいのか。ライターの仁科友里さんが贈るコラム連載「生きていけ、私」。

こんにちは、ライターの仁科友里です。

内閣総理大臣のジュニアにして、自民党所属の政治家・小泉進次郎と、フリーアナウンサー・滝川クリステルが結婚を発表しました。総理大臣に一番近いオトコともいわれる自民党のホープと、2020年の東京オリンピックを誘致する勝利の女神のカップル。

私はお似合いだと思いますが、ネットでは妊娠が先の結婚、いわゆる「でき婚」についてよろしくないという意見も見受けられました。

妊娠してから結婚するスタイルは、特にめずらしいものではないでしょう。厚生労働省が発表した、平成22年度「出生に関する統計」によると、「結婚期間が妊娠期間より短い出生」、つまり妊娠してから結婚したカップルの割合は25.3%(平成21年)で、約4組に1組のカップルが、妊娠が先の結婚をしている計算になります。

ある意味、メジャーな存在ともなっている妊娠が先の結婚。特に抵抗を感じない人もいれば、「順番がちがう」と文句を言う人もいます。このちがいは、どこからくるのでしょうか。

それは、結婚を「家との契約」と見るか「個人の選択」ととらえるのかのちがいではないかと私は思います。

結婚は「家のため」か「自分のため」か

明治時代から第二次世界大戦まで、財産を相続できるのは原則として長男だけ。長男は親から受け継いだものを、減らさずに次世代(子ども)にバトンタッチする責任がありました。

となると「家のため」に、女性は跡取りを生む必要があります。DNA鑑定などない時代、生まれてきた子どもが確かに先祖の血をひいていることを証明するのに、一番わかりやすい方法は、セックスの経験がない処女の女性と結婚することではないでしょうか。

プラスして、処女であることを尊ぶのは、女性は若いほうが価値がある、女性は性的な経験が少ないほうがいいという男尊女卑的な発想も影響していると思います。家のため、男性のため、女性は処女であるほうが、望ましかったのです。

戦後、法律は変わり、子どもは全員が親の財産を相続する権利を持つようになりました。性も自由化し、結婚前にセックスを経験することが悪いことという考え方をする人は少なくなっていると思います。

しかし、結婚を「家のため」と解釈する人がいなくなったわけではありません。

そういう人たちにとっては、妊娠が先の結婚は貞操観念に問題がある女性を家に迎え入れるのと同じことですから、「家の体面を汚すもの」と思うのでしょう。ですから、好意的には解釈してもらえません。

一方、結婚を「個人の選択」とみなすのなら、どうでしょうか。

大人の女性には、自分の人生を自分で選択する権利があります。明日どんな洋服を着るかを自由に選んでいいのと同じように、セックスも結婚も妊娠も、いつ誰とどのようにするかは自分で決めていいのです。

誰かの権利を阻害するわけでない限り、文句を言われる筋合いはありません。家の繁栄のために、意に染まぬことをする必要もありません。

「でき婚」の懸念点3つ

私個人としては、2人の気持ちが固まっていて、経済力などの物理的要因が整えば、妊娠が先の結婚もアリだと考えています。

しかし、いくら同意の上であっても、妊娠は女性に負担がかかる部分が大きいので、2人の気持ちだけでなく、自分の置かれた環境もあわせて考えてみるといいかもしれません。

妊娠が先の結婚の懸念材料をあげてみましょう。

環境が一気に変わるので、お互いストレスがたまる

転職や部署異動を経験した方ならおわかりになると思いますが、環境が変わるというのは、大きなストレスです。

加えて妊娠した場合、女性ホルモンの影響で、女性は肉体的・精神的にもめまぐるしい変化を経験することになるでしょう。そこに仕事の疲れなども加わると、新生活の滑り出しは、すんなりうまくいかない可能性もあります。

実家が近いとか、母親との関係性がうまくいっているなど、身近に頼める人・頼れる人がいると、スムーズに新生活をはじめられるかもしれません。

男性がどこまで本気がわからない

「子どもが先でもいいよね」「それもタイミングだから」と話し合っていたとしても、その気持ちがどこまで本当かを、お互い正確に測定することはできません。

結婚後に喧嘩をした際、頭に血が上って、男性が「子どもができたから、結婚した(本当は結婚するつもりではなかった)」とか「だまされた(女性側が作為的に妊娠に持って行った)」と言い出す可能性もあります。

この言葉もどこまで本心かはわからないわけですが、相手の言葉を引きずりやすいとか、傷つきやすいタイプの女性だと、2人の関係に疑問を持ってしまうかもしれません。

妊娠が先の結婚は、何も気にしないという意味のメンタル強めの人のほうが、向いていると思います。

妊娠が先の結婚を許さない家庭もある

歌舞伎の名門・成駒屋に嫁いだ元アイドルの三田寛子。夫である中村芝翫と3人の息子の同時襲名という歌舞伎界はじまって以来の快挙を成し遂げます。

その三田が、バラエティ番組で「交際中に、彼の家に上がったことはない」とよく話していました。どういう意味かというと、正式に婚約するまでは、中村家はたんなる彼女を家に入れないということ。婚約や結婚という順番を大事にする家では、結婚前の妊娠は許されないといっていいでしょう。

割合としては少数派ですが、こういう価値観の家庭もあります。もめごとは少ないほうがいいに決まっていますから、彼との会話で実家がどんな価値観を持っているか探ってみてください。

「でき婚」がプラスになるかは人それぞれ

小泉進次郎は曽祖父の代からの政治一家です。政治家の家に跡取りは必須。妊娠には個人差がありますが、40代の滝川クリステルと結婚したいと言ったのなら、跡取り問題で反対されることは目に見えています。

それならば、妊娠が先の結婚のほうが、進次郎にとっても後援会のメンバーにとっても“安心”でしょう。

妊娠が先の結婚がいいのか悪いのかを、二元論で語ることはできません。刷り込まれた常識や一般論ではなく、あなたと現在の彼にとって、妊娠が先の結婚はプラスかマイナスかを見極めてください。彼氏のいる人は、妊娠が先の結婚についてどう思うか、彼と話してみてはいかがでしょうか。

(仁科友里)

※画像はイメージです

※この記事は2019年09月14日に公開されたものです

仁科友里 (コラムニスト)

1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。OL生活を綴ったブログが注目を集め、2006年に『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。『サイゾーウーマン』『週刊女性』『週刊ポスト』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む女性たちの相談にも答えている。
Twitterアカウント @_nishinayuri

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