お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

槙ようこ先生の引退から振り返る。愛すべき『りぼん』作品 #PM6時の偏愛図鑑

ひらりさ

定時後、PM6:00。お仕事マインドを切り替えて、大好きなあの映画、あの舞台、あのドラマを観る時間が実は一番幸せかもしれない。さまざまな人が偏愛たっぷりに、働く女性に楽しんでほしいエンタメ作品を紹介する連載です。

令和元年7月3日、とあるニュースがアラサー女子たちを騒がせました。

「私槙ようこはこの連載を最後に漫画の世界から引退させていただきます」

高校2年生で漫画家デビューし、アニメ化された『愛してるぜベイベ★★』など、りぼんっ子たちの胸をときめかせる漫画を世に送り出してきた槙ようこ先生の引退発表です。

『りぼん』愛読のきっかけは、ちょっとした背伸び心

平成元年生まれ今年30歳の私は、小学校のあいだずっと『りぼん』を愛読していました。

少女漫画好きの入り口は、幼稚園のころ夢中になったアニメ『美少女戦士セーラームーン』。親から漫画原作であることを教えられた私は毎月『なかよし』を買ってもらうようになり、『魔法騎士レイアース』や『怪盗セイント・テール』に激ハマりするも、これらは直に最終回を迎えます。

新しくはじまった『カードキャプターさくら』に心ひかれながらも、もう少し“お姉さん”っぽいものが読みたい! 具体的に言うと主人公が中学生か高校生の! でもファンタジーっぽさはほしい! という小学生のちょっとした背伸び心(?)にフィットしたのが、そのころの『りぼん』でした。

セイント・テールで培われた“怪盗”萌えゆえに、最初はりぼんで連載されていた『神風怪盗ジャンヌ』を熟読し、絵を模写していた小学生ひらりさ。

応募者全員大サービスがあるたびに、母親にエクストラなおこづかいをせがんで(だって月500円だったから……)郵便小為替を購入し、応募用紙とともに郵送して、タペストリー・スクールセット・スケジュール帳などといったブツを、せっせと入手。郵便小為替とか、あれ以来一度も買ってないな……。

「りぼん作家」として幕をおろした槙ようこ先生

りぼんで『愛してるぜベイベ★★』がはじまったとき衝撃だったのは、主人公が男子高校生だったこと。

少女漫画といえば「少女が主人公の漫画」だと思っていたから、本当に驚かされました(それより前にりぼんで連載されていた『ミントな僕ら』も中学生男子が主人公だったのだけど、彼は女装男子だった)。

そして主人公である平の恋愛がメインになるのではなく、置き去りにされた5歳の従妹・ゆずゆとの関係性を軸に物語が展開していったこともとても画期的で、気づけば毎号展開が気になる連載のひとつとなっていました。

神から力を授かった怪盗女子から、女タラシだけど子育てに悩む男子高校生まで、1冊の雑誌のなかにおそろしいほどのバラエティが詰め込まれていたんだなあ……と改めてしみじみ。

多くの作家さんが『りぼん』からお姉さん雑誌へと活動場所を移してしまう中、りぼん作家としてキャリアの幕をおろすこととなった槙先生のりぼん愛、深すぎる。

表紙がぼろぼろになるまで『りぼん』を読んだ日々

りぼんがもっとも多く売れていたと言われているのは、1990年代半ば。『ときめきトゥナイト』とか『ちびまる子ちゃん』とか『ご近所物語』とか、このころのりぼん作品のほうが世間的な知名度は高いでしょう。私も単行本で読んで大好きです。

それでも、10代のころリアルタイムで追いかけていた1990年代後半~2000年代のりぼん作品たちは、あとから読んだどんな漫画よりも自分の血肉になっている実感があります。

自分でお金を稼ぐようになり、しかも好きなときに好きな本をkindleで買えるようになった近ごろ。

それでも毎月1回、おこづかいを手に本屋にダッシュしてりぼんを購入し、次の号が出るまで何度も何度も、表紙がぼろぼろになるまで1冊の雑誌を読み返していたあのころの自分が、結構うらやましい気がするのです。

(文:ひらりさ、イラスト:谷口菜津子)

>特集【わたしを満たす偏愛】

※この記事は2019年07月18日に公開されたものです

ひらりさ

1989年生まれ、東京都出身。ライター・編集者。女性・お金・BLなどに関わるインタビュー記事やコラムを手掛けるほか、オタク女性4人によるサークル「劇団雌猫」のメンバーとしても活動。主な編著書に『浪費図鑑』(小学館)、『だから私はメイクする』(柏書房)など。

ブログ:It all depends on the liver.
Twitter:@sarirahira

この著者の記事一覧 

SHARE