レトロでかわいい! 50年代ファッションとは【イラストで解説】
1945年に太平洋戦争が終結。50年代の日本のストリートファッションは、アメリカ文化の模倣にはじまり欧米の影響を大きく受けています。
戦後、国中が町の復興に取り組むなかでアクティブに動ける洋服は自然と受け入れられ、洋装ブームで女性のファッションも劇的に変化した時代です。
今回は、そんな50年代のレディースファッションについて紐解いていきます。
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イラストで解説! 50年代のレディースファッションの特徴
米軍の占領下、憧れの的になったのは、その進駐軍や家族たちのアメリカン・スタイル。なかでもクリスチャン・ディオールから発表された1947年の「ニュールック」や1955年の「Aライン」スタイルは、日本で紹介されるとすぐに女性の間に広まりました。
同時に、銀幕のファッションが注目を集めるようになり、オードリー・ヘプバーン、ジェームズ・ディーン、石原裕次郎などの衣装がトレンドを生み出していきます。
敗戦を経て、豊かな生活を求める人々の気持ちがファッションにも反映されていったのが50年代だったのです。
キーワード1.「ニュー・ルック」
特徴
ウエストを絞ったトップスに、裾が豊かに広がっていく女性らしいファッション。
そのシルエットが、数字の8に似ていることから、別名「8(エイト)ライン」とも呼ばれました。
流行背景
パリでディオールが発表し、アメリカ経由で日本にも紹介されたのが「ニュー・ルック」。
この新鮮なファッションが、進駐軍の家族や闇市で売られたファッション雑誌を通して、デザイナーやジャーナリストの関心を集めます。
まだ和装の習慣も残る時代でしたが、特に若い女性たちは新鮮なスタイルを模倣するようになり、洋裁雑誌から情報を得ては自宅で洋裁に励んでいたのです。
代表的アイテム:ウエストを絞ったワンピース
小津安二郎映画の代表作『晩春』や『東京物語』では、和装と洋装の入り混じる街並みのなか「ニュー・ルック」を装う女性たちが登場しました。
小津安二郎映画のマドンナだった原節子さんも作中で着用しています。
代表的ブランド
・クリスチャン・ディオール
・エルザ・スキャパレリ
・バルマン
キーワード2.「フレアスカート(落下傘スカート)」
特徴
ペチコートやパニエでドーム型に大きくふくらませた女性らしいAラインのシルエットが特徴。通称「落下傘スタイル」と呼ばれました。
流行背景
「ニュー・ルック」に続き、やわらかいシルエットで女性らしさを強調するトレンドは継続。というのも、戦時中にはファッションを楽しむことができる状況ではなかったため、40年代の前半までは西洋でも女性らしさを抑制したストイックなスタイルが中心だったのです。
その反動によって50年代は世界的にも華やかなファッションが支持されます。
日本の洋裁雑誌には、フリルやアップリケ、レース使いのなどの縫製の方法が豊富に掲載され、ロマンティックなロングドレスや「落下傘ドレス」もあわせて紹介されていました。
代表的アイテム:落下傘ドレス
フレアスカートの落下傘ドレスが流行しました。
リボンやパフスリーブがあしらわれ、より女性的なディティール がプラスされていたのもポイント。
代表的ブランド
・クリスチャン・ディオール
・エルザ・スキャパレリ
キーワード3.「ドット柄(ポルカドット)」
特徴
均一に配置された水玉柄が流行。ワンピースから小物までさまざまなアイテムにその柄が載せられました。
流行背景
華やかなドレススタイルが流行した当時、特に人気のデザインだったのが「ポルカドット柄」。キュートなムード満載のドレスが街に溢れました。
代表的アイテム:ドット柄のシャツ
ポルカドット柄のシャツは今着てみてもレトロでキュートな雰囲気。
代表的ブランド
・クリスチャン・ディオール
キーワード4.「サブリナパンツ(オードリー・ヘプバーン)」
特徴
八分〜九分丈で細身のパンツ。腰から裾までがぴったりと体の線に沿ったふくらはぎ丈のデザインで、活動的なウェアです。
流行背景
映画『麗しのサブリナ』で、主演のオードリー・ヘプバーンが着用したことから名付けられました。
これまでのトレンドから打って変わり、少年のような小気味よさを加味したスタイルが新鮮に映り、女性たちから絶大な人気を得ます。
代表的アイテム:サブリナパンツ
サブリナパンツは、ハイウエストで履けばスタイルアップ。
代表的ブランド
・ジバンシィ
キーワード5.「スカーフ&グローブ」
特徴
フェミニンな装いに仕上げるのに活躍した小物がグローブとスカーフ。
スカーフは頭をすっぽり覆う巻き方がポイント。どちらもあわせて着用することでグッと上品な印象です。
流行背景
1953年の映画『君の名は』で、主人公の真知子がスカーフを巻いていたことから、通称「真知子巻き」と呼ばれ大流行。
銀幕での海外スターの装いとあわせて、日本の女優や俳優の装いが人々に大きく影響を与えていました。
代表的アイテム:スカーフとグローブ
ブラックやブラウンのレザーグローブなら今でも取り入れられそうです。
代表的ブランド
・クリスチャン・ディオール
・エルザ・スキャパレリ
・ジバンシィ
50年代ファッションを今取り入れるには?
1950年代は、銀幕スターの衣装がそのまま流行を生み出した時代。今、その名画を見返してファッションのエッセンスを盗んでみるのもひとつの手。
たとえば、『麗しのサブリナ』でオードリー・ヘップバーンが着るサブリナパンツを今はくならトップスはビッグサイズのアイテムがよさそう。オールブラックでまとめつつ、アクセサリーはシルバーやゴールドを選んでアクセントをつけたいところです。
ちなみに、マリリン・モンローが両手でスカートを押さえるシーンで有名な映画『7年目の浮気』ですが……同作品内でモンローがペールピンクのサブリナパンツをはいています。ペールトーンパンツに、エクリュカラーのシャツを合わせて、ワントーンにまとめてもキュートに仕上がること間違いなし。
このように、50年代映画を楽しみながら、ぜひ、自分のワードローブに取り入れるアイテム探しをしてみてください。
50年代が日本のレディースファッションのはじまり!
1956年の経済白書に「もはや戦後ではない」と記されたように、終戦から10年が経って日本の洋装=ファッションが花開いていった時代でした。
人々の心が解放されていくのを映しながらファッションも華やかさを増していったのが特徴です。
クリスチャン・ディオールが世界を席巻した「ニュールック」のエッセンスを日常着に取り入れ、シネモードの全盛時代のなか、外国映画や邦画で描かれる風景や生活とファッションに人々は憧れました。
赤いハイヒールや、真知子巻き、セシルカットのみならず、マリン調のボーダーシャツやササールコート、ジーンズ……と今も愛されるアイテムの多くは50年代の銀幕から生まれたトレンドです。
そのさなかで、ショッピングセンターや百貨店も設立されはじめ、60年代のポップでキュートなファッションに向かう土壌が作られていったのです。
(文:ナガイタカコ、イラスト:ヤベミユキ)
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※この記事は2019年06月05日に公開されたものです