【イラストで解説】「80年代ファッション」とは。ハマトラ、カラス族、オリーブ少女
2017年から2018年にかけて、リバイバルで流行した「80年代ファッション」。
今、人気の90年代ファッションの土壌ができたのはこの時代です。
さまざまなテイストのジャパンブランドが生まれ、それぞれのコンセプトがはっきりと打ち出されるようになった時代。代表的なファッションは、どういったものだったのでしょう。
今の若い女性に知ってほしい、時代背景とともに解説していきます。
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リバイバルして流行中! 「90年代ファッション」【イラストで解説】
イラストで解説! 80年代のレディースファッションの特徴
80年代は女性の社会進出が進んだ時代。イギリスでは初の女性首相サッチャーが誕生し、日本でも男女雇用機会均等法を背景にした「キャリア・ファッション」が浸透しました。
さらに世界的な好景気のなかで、日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われるほどの経済発展を見せバブル景気に突入した年代でもあります。
そんな時代だからこそ人々のブランド志向は強まり、どのブランドの服を着て、どこの街に出かけるかアイデンティティーのひとつになっていったのです。
さらに、川久保玲・山本耀司といったデザイナーがパリで活躍。モード界に“黒の衝撃”を与えたことで、国内でも黒やモノトーンのスタイルが流行しました。
そんな潮流に乗って多くのDCブランドが生まれ、人気を集めました。
それぞれのスタイルを追求していくなかで、1989年には渋カジが誕生。90年代ファッションへのうねりとなっていったのです。
キーワード1.「ジャパニーズ・プレッピー」
特徴
プレッピーとはスクールウェアをルーツとする学生のようなスタイリング。たとえば、エンブレム入りのブレザーやカーディガン、ラガーシャツやローファー……などを着崩すのが特徴です。
それをマネて日本で定着したのがジャパニーズ・プレッピー。ポロシャツにホワイトデニム、テニスのラケット持って歩くのが流行しました。
流行背景
50年代後半から定着していた「アイビー・ルック」=「アメリカン・トラディショナルなスタイル」に対して、「プレッピー」は1980年に出版された『PREPPY HANDBOOK』によって世界に発信されたスタイル。
アメリカの一流私立の学校を意味するプレパラトリー・スクール(予備学校)から生まれた言葉とされています。
アイビー・ルックよりも’80sらしくカラフルでシルエットもルーズなのが特徴。アメリカナイズされたスタイルに強い憧れを抱いていた日本人が、等身大でプレッピーを着こなそうとしたことでジャパーニーズ・プレッピーに発展していったのです。
代表的アイテム:カレッジニット
もしも今取り入れるなら、オススメはチルデンニット。
この春ならコットン素材を選んで、パンツと合わせて1枚でさらりと着ると今っぽい。
プレッピーもリバイバルしてトレンドになっているので、スクールアイテムの定番であるチノパンや、BDシャツ、カレッジロゴスウェットなどとコーディネートを楽しんでもいいですね。
代表的ブランド
・ポロ・ラルフローレン
・ラコステ
キーワード2.「ハマトラ」
特徴
ハマトラは、ブラウスに膝丈のスカート、ハイヒールを合わせたお嬢さん風スタイル。
「横浜発祥トラッディショナル」を略したものです。
1970年代後半から80年代前半にかけて特に流行しました。
流行背景
トラッド(=アメリカン・トラディッショナル)を更新するファッションとしてプレッピーが生まれたのと同じように、ハマトラもトラッドを発展させたもの。
DCブランドの増加によってファッションが細分化される中で生まれた、女性らしいトラッドスタイルです。
雑誌『JJ』ではそのファッションが教科書のように解説され、多くの女子大生の愛読書になりました。
代表的アイテム:ひざ丈スカート
膝丈のA ラインスカートや、ナチュラルなタイトスカートがマストアイテム。
コーディネートは上品なブラウス、ショルダーバック……と、女性らしく清楚な雰囲気でまとめます。
代表的ブランド
・フクゾー
・ミハマ
・キタムラ
どれも横浜発祥のブランド。フクゾーの服に、ミハマの靴、キタムラのバッグが、ハマトラが三種の神器とされたそうです。
キーワード3.「DCブランドとカラス族」
特徴
とにかく全身を黒でまとめたカラス族のファッション。
ロング丈や、ボロボロのディテールも組み合わせて、重さのあるレイヤードで着こなすのも人気でした。
黒いカラスが群がっているような様子が名前の由来です。
流行背景
1982年春夏のパリ・コレクションで川久保玲と山本耀司が作品を発表し、ファッション界に“黒の衝撃”を与えました。
それが、現シャネルとフェンディのデザイナーであるカール・ラガーフェルドや、ジャン=ポール・ゴルチェ、ダナ・キャランから評価され、次第にマスコミ、芸能人、アーティストと、時代の最先端の人々に伝わります。
さらに、当時、人気のあった「コムサデモード」「スクープ」などのDCブランドも黒いファッションを追って提案。
原宿・渋谷のみならず、大人の街・銀座もカラス族でにぎわいました。
代表的アイテム:黒のジョッパーズパンツ
黒のレイヤードならなんでもありですが、ジョッパーズパンツは特に人気アイテムです。
代表的ブランド
・コムデギャルソン
・ヨウジヤマモト
・コムサデモード
・スクープ
黒をメインにしたデザイナーズブランドはもちろん、トレンドを日常着にしやすくカジュアルに落とし込んだDCブランドも人気でした。
キーワード4.「ボディコン&肩パット」
特徴
前髪を大きくカールしたウェービーなロングヘアに、体のラインを強調したミニワンピースで、身体の女性性を打ち出したスタイル。
ワンレンのロングに、水色のアイシャドー、鮮やかなピンクのリップといったヘアメイクもセットで、”ワンレン・ボディコン”と呼ばれ、注目を集めます。
流行背景
1981年のミラノコレクションでアズディン・アライアが発表したボディコンシャスなファッションが注目を集めたのが最初。
そして皮肉にも女性の社会進出とともに、女性が官能的な女性らしさを取り戻そうとする時代へ進みます。
80年代のレディースファッションは「ニューリッチ」と「エグデクティブブウーマン 」とも称され、肩パッドで肩をいからせたパワースーツは女性の地位を明確に示し、社会的な成功の象徴のようにも映りました。
代表的アイテム:パワーショルダー&ボディコンワンピ
パワーショルダーのスーツ、ボディコンシャスのミニワンピが流行しました。合わせれば強くてセクシーな雰囲気。
代表的ブランド
・アルファキュービック
・ジュンコ・シマダ
・ピンキー&ダイアン
・アズディーンアライア
このスタイルの提唱者であるコレクションブランドはもちろんのこと、学生ディスコパーティやオフィスシーンでの需要によって、比較的に購入しやすい価格帯のDCブランドも人気を集めました。特に、ピンキー&ダイアンは「ピン・ダイ現象」とも言われたほど多くの人に着用されていたそう。
キーワード5.「オリーブ少女&ピンクハウス」
特徴
ガーリーでロマンティックなスタイル。
元祖「森ガール」とも捉えられる、大きな襟のブラウスやティアードスカート、お団子ヘアが人気でした。
とはいえ、スニーカーやスウェット、ビルケンシュトックのサンダルを合わせて、適度なカジュアルさをキープするミックススタイルも好まれました。
流行背景
1982年にマガジンハウスより『Olive』が創刊。1983年にはロマンティックで個性的なデザインが特徴のツモリチサトがデビュー。
リボンやレースのあしらわれたドリーミーなウェアを提案していたピンクハウスも大人気を博します。
DCブランドの紹介に力を入れながら『Olive』が提案するファッションは「オリーブ少女」を生みました。
代表的アイテム:フリルブラウス
大きなフリル襟で、パフスリーブの甘い雰囲気のブラウスが人気でした。
代表的ブランド
・ピンクハウス
・ツモリチサト
・BASSO
・ATSUKI ONISHI
・DO!FAMILY
・アニエス・ベー
コンセプトを理解して。80年代ファッションを今取り入れる方法
ライフスタイルとファッションが結びついていた80年代ってそれぞれのジャンルがとてもコンセプチュアルです。
たとえば、スクールアイテムや、ボディコン、全身黒……今の視点で見るとなんとも個性的。
だからこそ、その文脈を理解して取り入れてみると、むしろ全身にまとまりが出るのです。
たとえば、チノパンとローファーにチルデンニットを合わせたらトレンドのプレッピー。全身黒にするなら太パンにタイトなTシャツをインしてメリハリをつけたら今っぽい。
それくらい、自分のワードローブに当たり前にあるアイテムでコーディネートしながら、裏テーマには‘80sを据えてみるとぐっと垢抜けるはずです。
80年代は「ファッションでその人がわかる!」ようになった時代
「ニュートラ」「ハマトラ」「ボディコン」「プレッピー」「オリーブ少女」「ポパイ少年」「キャリアファッション」「カラス族」……ファッションの方向性がそれぞれのライフスタイルに合わせて枝分かれした80年代。ブランドのオープンや雑誌の創刊が相次ぎ、さらに渋谷・原宿・銀座といった街とファッションが結びつき、それぞれのコンセプトが強くなった時代です。
ファッションでその人の属性がわかるようになった時代でもありますね。
そんなコンセプチュアルな‘80sを、今、とりいれるのはきっとおもしろいはずです。
(文:ナガイタカコ、イラスト:ヤベミユキ)
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※この記事は2019年02月27日に公開されたものです