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もし高橋一生と付き合ったら、死ぬほど神経質そうな件 #恋するワイドショー

吉田潮

“あの有名人と、もしも恋に落ちたなら”。きっと誰しもが考えたことのある、生産性ゼロでくだらない空想。今回は独特なファッションセンスでファンたちを驚かせた、あの実力派俳優との同棲生活を妄想します。

第3回「もし高橋一生と同棲したら」

一緒に暮らして、もう1年。最初は楽しかった。なんて呼んだらいいかで、盛り上がったのが遥か昔のように思える。

「イッセイ? イッセー? なんて呼んだらいい?」
「イッセーだと尾形さんになっちゃう」
「でもイッセイだとミヤケさんもいしださんもいるよ」
「英字表記だとISSEYなんだよね。世界のミヤケ、的な」
「あ、いしだはイヤなんだ(笑)」
「僕が売れないころ、売れていた人だから……嫉妬がある」
「SHITでしょ(笑)」

どうでもいい会話がよみがえる。会話のキャッチボールがいちいち楽しかった。でも、最近ではイッセイのいろいろな面が見えてきて、考えこむ夜も増えてきた。ていねいなひとり暮らし歴が長いイッセイは、私の雑な部分に辟易しているんじゃないかな。時折聞こえてくる小さな舌打ちと独り言に、そろそろ潮時かなと思う。

私の生活へのこだわりのなさを、はじめは「おおらかで自由な感じがいい」と思ってくれたんだよね? でも、掃除や洗濯に超細かいこだわりのあるイッセイは、徐々にイラついたんじゃないかな。洗濯機はセンダ君、ハンディウォッシャーはヒトミさん。テレビで家具や電化製品に名前をつける話をしていたけれど、最初は「可愛い♪」って思ったし、こだわりのある人は全部自分でやってくれるから超ラクと思っていた。同棲するなら、ひとり暮らしが長い男に限るって痛感した。

でも、イッセイの黒いパンツをうっかり漂白して、まだらにしちゃったときの、あの顔。私が自分の柔軟剤を使ったら、目の前でソッコー洗濯し直したときの、あの顔。イッセイは昔よくDV男の役をやっていたけれど、まさにあのときの仄暗い目をしていたんだよね。私がふざけて「DVされてた尾野真千子の気持ちがわかるわぁ」って言ったら、マジギレしてたし。ドラマの話をしたつもりだったんだけど、後で気づいた。地雷踏んじゃったんだよね。私、そういうの鈍感だから。空気読めなくてごめん。

あと、テツオな。イッセイは自転車をテツオと呼ぶ。とにかく休日にはテツオと出かける。買い物のときもテツオ、友だちと会うときにもテツオ。家の中でもっともいい場所に置かれて、美しくあるがためにメンテされるテツオ。イッセイの24時間のうち、テツオには十数時間、私には数分もない。この格差。モノに負ける屈辱。

お互いに心が擦り減る生活はよくない。たぶん、もっと前から日常のごく小さなすれちがいが生じていたんだと思う。「なんの断りもなく、唐揚げにレモンかける・かけない問題」とか、「躊躇なく壁に画びょうを刺せる・刺せない問題」とか。本当に些細なこと。

私も最初は「こだわりのなさに逆にこだわる」ことで、イッセイの持論に対抗したりして、おもしろかった。意見をぶつけあう議論というテイの前戯が楽しかったんだと思う。でも、面倒くさいと思うようになった。それはイッセイも一緒だったみたい。ディスカッションに発展せず、ダメ出しみたいな方向にいっちゃったよね。

たとえばファッション。基本的に「スーツにメガネ」フェチの私としては、かちっとしたイッセイを見たいけど、プライベートではほとんど着ないし。そもそも私はとがってイキった服は好きじゃない。あえて言ったよね? あのライダースとウォレットチェーンは若作りのオジサンっぽいって。『Boon』とか『メンエグ』とか読んでたんだなって。90年代に若者だった人の神アイテムってのはわかるけど、ぶらさげないほうがいいと思うの。「お財布落とすのが怖いの?」って笑って聞いたら、ガン無視。暗い目をした役を数多く演じてきたイッセイでも、今までに見せたことのないドス黒い表情。私たちの間に、冷たい風が吹き抜けた。

これが今の私たち。THIS IS US。イッセイは私を責める言葉を決して言わない。自分から別れも言わない。やさしくてずるい。でも、表情で、伝わった。「もう終わりだ」と目が語ってた。さすが役者だね。

(妄想・文・イラスト:吉田潮)

▼「恋するワイドショー」記事はこちらから

第1回「もし菅田将暉と付き合ったら」
第2回「もし船越英一郎が往年の恋人だったら」

※この記事は2018年09月01日に公開されたものです

吉田潮

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