
【第7回ビジネスマナー講座】いざというとき慌てない! 知っておきたいお礼とお詫びの表現
ビジネスシーンでは、言葉使いがその人の印象を大きく左右します。特に敬語は“なんとなく”使っていると、意外と間違っていることが多いもの。きちんとした敬語を身につけるだけで、印象アップにつながります! マナーアドバイザーの松本繁美先生と一緒に、正しい敬語の使い方をマスターしましょう♪
ビジネスシーンの中で特に大切な役割を果たすのがお礼やお詫びです。普段からいろいろな人と接している営業職の人や、ミスをしやすい新人さんは、このような機会が多いかもしれません。感謝や謝罪の気持ちをしっかりと伝えられる人は、それだけで「きちんとしたマナーが身についている」と評価してもらえます。いざというときに正しい対応ができるよう、感謝と謝罪の表現について学びましょう。
<お礼とお詫びの基本表現>
日本人は「ありがとう」を言うのが苦手なようで、感謝の気持ちを伝えるべきときに「すみません」と言う人が少なくありません。もはや口癖になってしまっている人もたくさんいるかと思いますが、まずはお礼とお詫びの基本表現を知っておきましょう。
※これらの敬語に「本当に」「誠に」をつけると、さらに丁寧さが増します。
例)誠に(本当に)ありがとうございます。
誠に(本当に)申し訳ございませんでした。
<相手に伝えるタイミング>
お礼もお詫びも、しっかりと気持ちを伝えるためには迅速に対応することが肝心です。特にお詫びは、時間が経過するほどどんどん挽回のチャンスを逃してしまいます。謝ることは誰もが苦手で心苦しいですが、なるべく早く相手に気持ちを伝えましょう。
①直接顔を見てお礼やお詫びをする
まずは相手に直接会うのが一番です。ただしこちらの都合で一方的に押しかけるのではなく、事前に連絡を取って、相手の都合を優先しましょう。
②直接会えない場合は電話
直接会いに行けないときは、なるべく早いタイミングで電話をかけるようにしましょう。最初に「お電話で失礼ではありますが……」などとつけ加えます。
③電話もできない場合はメール
謝罪の場合、メールが第一報では相手に失礼ですが、どうしても会わせてもらえない、電話も繋がらないという場合は、メールでお詫びの気持ちを伝えます。ただ、メールはあくまで「取り急ぎ」の措置。文章中にも「取り急ぎ、メールをいたしました。」と書き添え、非礼を詫び、直接謝罪に伺えるように努力します。
④手紙
手書きの手紙でお礼やお詫びを伝えるのはオーソドックスな対応です。①直接会う②電話で伝えるなどの手順を踏んだうえで、心を込めた手紙を送りましょう。ただし、手紙は長く残り、おかした過ちの証拠にもなりうるので、詫び状を送る場合は注意が必要です。のちにトラブルに発展する可能性も否めないため、上司に相談のうえ出すようにしましょう。一方お礼の場合は手紙やカードがベストです。電話やメールで一方を入れたあとに、送りましょう。
<お礼の定番フレーズ>
○ 先日はお心遣いをいただきまして(誠にor本当に)ありがとうございました。
× この前は気を使ってもらってどうもすみませんでした。
× この前はよくしてもらって、ありがとう。
※ビジネス・シーンではたとえ同僚でも、きちんとした言葉遣いが必要。ましてや取引先や上司には「どうも」などというカジュアルな言葉を使うのはNGです。
○ 素晴らしいお品をありがとうございます。
× 素晴らしいお品をすみません。
※「ありがとう」と「すみません」を混同している人がとても多いのが現実。「ありがとうございます」は“Thank You”であって、”Sorry”とは違うことを認識しましょう。また、「すみません」を「スイマセン」という人もいますが、これは敬語以前の問題です。
せっかく相手に感謝の気持ちを伝えるのですから、お互いが気持ちよくコミュニケーションを取れるようにしたいですよね。とっさに「すみません」という言葉が出てしまう人は、素直にお礼が言えるように普段から気をつけましょう。
<お詫びの定番フレーズ>
○ ご迷惑をおかけして、(誠にor本当に)申し訳ございませんでした。
× ご迷惑をおかけして、すみませんでした。
※普段は「すみません」「ごめんなさい」を口にしますが、ビジネスシーンでは使いません。口先だけでなく45度~60度(最敬礼)お辞儀をしましょう。
○ 申し訳ございませんが、いたしかねます。
× そうおっしゃっても、できません。
※「できません」はストレートすぎる表現。本当は、本当は意向に添いたいという気持ちを表すためにも「いたしかねます」と婉曲的な言い回しを使います。
○ とんでもないことでございます。
× とんでもございません。
※相手から過分なほめ言葉をもらったときなどに使います。「とんでもない」でひとつの単語なので、「ございません」と変化はしません。
○ ご利用になれません。
× ご利用できません。
※利用に「ご」をつけて尊敬語、「できません」も尊敬語にして、「ご利用になれません」が正解です。「ご利用いただけません」も許容範囲とされています。
謝罪の際には、相手の感情に共感を示す言葉も伝えます。たとえ自分は悪くないと思っていても、まずは、お詫びをするという姿勢が大切です。「ご指摘はごもっともです」「おっしゃる通りです」など、まずは相手の意見に共感する姿勢を見せ、相手の意向をきちんと聞きましょう。その上で意見を述べるときは、「恐縮ではございますが」などとクッション言葉を使って婉曲的に伝えます。
<今回のまとめ>
第7回では、お礼やお詫びの表現についてご紹介しました。お詫びをする際は心が折れそうになることもありますが、「ご指摘をいただきありがとうございました。」などと最後に感謝の気持ちを伝えると、相手の印象もよくなり、自分もポジティブに捉えることができます。第8回は「ら」抜き言葉や「さ」入れ言葉についてご紹介します。
(松本繁美)
※この記事は2016年09月20日に公開されたものです