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【ワーママデビュー! 2】ふたりの子持ちで仕事も家庭も両立させるワーママに。出産しても働けるという“流れ”をつくっていきたい

ミノシマタカコ

働く女性の多くはいづれ結婚して出産もしたいのですが、ワーママとしての働き方やワークライフバランスのとり方がわからないなど、不安も多いのが現状です。2015年3月にGoogleは、女性の仕事復帰を応援するプロジェクト「Women Will #HappyBackToWork」を立ち上げ、多くの賛同企業とともにさまざまなアイデアを実践してきました。この連載では、そのサポートを受けたワーママたちの話を紹介します。

PROFILE:田村霞(たむら かすみ)●2006年12月アルバイトとして入社、2007年正社員に。入社当初から現在まで、アナザーエディションの店舗スタッフとして勤務している。2009年7月~、2012年9月~と2回産休・育休を取得。

入社当時、産休や育休の制度はまったく知りませんでした

服飾・雑貨のセレクトショップを展開企業、ユナイテッドアローズ。従業員の約6割を女性が占める。女性の育休・産休の取得率はほぼ100%、復職率も95%を越える。多くの従業員が再び職場に戻り、仕事を続けている。

同社が展開するブランドのひとつ、「アナザーエディション」の店舗で働く田村霞さんもそのひとり。30歳にして2児の母である田村さんは、2度の育児休暇を経て、現在も店舗で働いている。

「入社の理由は、もともとアナザーエディションというブランドが大好きだったからなんです。アルバイトとして働き始めたのは21歳の頃。2年目に正社員になりましたが、産休や育休といった制度についてはまったく意識していませんでした」

24歳、仕事で悩んでいるタイミングで妊娠が発覚

憧れの職場で働き始めた田村さん。しかし、24歳になった頃、迷いが生じる。この仕事を続けるのか、それとも別の仕事に転職するか……。そんな悩みがわきあがり悩んでいた頃に妊娠を知る。

「妊娠したことで、会社を辞めようと思えば辞められる状況になったんです。でも、不思議なものでそうなってはじめて、『この仕事を辞めたくない』という気持ちに気づきました。人事に妊娠報告をしたとき『おめでとう』と言われたのも、後押しになりました。『(仕事を)続けるの?』とは聞かれなかったんですよね。そっか、この“流れ”に乗って、仕事を続けていいんだ、と思えたんです」

店舗初だったからこそ抱いた、キャリアへの不安

田村さんは、アナザーエディション事業内店舗スタッフ初の産休・育休明けの店舗復職者だった。「人事にも、上司にもすごく良くしてもらったし、“生まれたらこうなる”という計画表をもらうなど様々な社内サポートをしてもらえました」と語る、田村さん。しかし、産育休からの復職経験のある先輩が身近にはいない中、「リアルな働き方が想像できない」という不安もあったという。

心の支えになったのは、産休・育休中、自宅に定期的に送られてくる社内向け情報誌「くるみん通信」。復職後の働き方のコツや周囲からのフォローなどリアルな声が掲載されていた。

「自分のまわりには、復職した店舗勤務の先輩がいなかったこともあって、『くるみん通信』が心の支えでした。特に印象に残っているのは、ユナイテッドアローズの店舗で一番最初に短時間勤務で副店長に就いた人の記事。自分と同じく店舗勤務の人の行動スケジュールや時間管理の情報もすごく参考になりました。戻ったらこういう感じなんだなってことがわかると、すごく安心できました」

時短勤務をしながら、昇格試験に挑む

一人目の出産を控え、時短勤務制度を活用しながら店舗勤務を続けしていた頃、田村さんは上司に、昇格試験を受けるよう、薦められる。勉強や接客トレーニングの時間が足りないことを理由に断った田村さん。しかし、職場で必要とされていると感じ、励まされたという。そして、育休から復職後、昇格試験に挑戦し、見事合格する。

「実は復職後の時短勤務を始めた当初、これまでのような“数字”が出せないことに、焦りや挫折感を覚えたこともありました。以前は売り上げも上位だったのに、下から数えた方が早くなってしまって……。でも、今の私にとって必要な頑張りどころは自分自身で作れる数字だけじゃないなと気持ちを切り替えたんです。自分の数字には見えなくても、みんなのフォローやお店のために何ができることか?に重点を置くようになりました」

2度目の育休から復帰してから5ヶ月後、田村さんは副店長に抜擢される。時短勤務中のスタッフが副店長を務めるのもまた、産休に続いてアナザーエディションの店舗では初めての事例となった。

「本当に“流れ”というか、昇格試験は受けることは決めていたけど、まさか当時、副店長を任せてもらえるとは思ってもみませんでした」

田村さんは“流れ”に乗りながら、ワーママとしてのキャリアを着実に切り開いていく。

★田村さんのある一日
6:30 起床
8:15 保育園に子どもたちを預ける。2人の子どもは別々の保育園。それぞれ通っている園まで送り届けます。
10:00 出社、開店の準備
11:00 開店
17:00 退社
18:00 保育園にお迎え
18:30 帰宅
19:15 夕飯
21:30 就寝

広がり続ける「働き方」の幅と選択肢

ユナイテッドアローズ社では、制度の改善や追加も行っている。10年も前から、半日単位で有給休暇を取得可能な制度を導入。

「日中に保育園から呼び出しの電話がかかってきたら、半日分だけ有給休暇を使うことができます。このようにママに頻発する緊急時出動のためにも有給休暇を節約しながら対応できるのがありがたいです」

時短勤務の制度もどんどん変化している。時短勤務とはいえ、少しでも長く働きたい人のために、出勤時間や退社時間を選べるなど、さまざまなライフスタイルをもつ従業員各人が、働き方の選択肢をもてることで長く働けるよう、柔軟な制度になっている。

「時短勤務のミニマムが6時間/日からだったのですが、4月からは4時間/日も可能になりました。最小4時間~最大7.5時間/日の間を30分単位で1日の就労時間が選択ができ、働き方の幅が広がりました。」年度初めと年に1回は、この短時間勤務時間が変更可能という、とても柔軟な制度になっている。

「今後は産休・育休をとる後輩たちが自信を持って、やりたいことにチャレンジできる “流れ”を作っていきたいです。出産や子育てで、以前より店舗にいられる時間が減ったとしても、じつはやれることはたくさんあります。仕事をしていると、いつも思い出すのが、以前、副店長として声をかけてもらったときに、当時の上司に言われた『切り開け』という言葉。2人の子どもを育てながらでも、ステップアップを望んでいけるということを後輩たちに教えてあげたいです」

妊娠・出産してからたくさんの「初めて」を経験したという田村さん、同じ店舗で働いている女性全員の将来を切り開くよう、今日も精一杯がんばっている。

(ミノシマタカコ)

★次回の『ワーママデビュー!』は4月28日(木) 更新予定です。お楽しみに!

>>『ワーママデビュー!』のバックナンバーはこちら

※この記事は2016年04月15日に公開されたものです

ミノシマタカコ


モバイルコンテンツ業界生まれ、ウェブ業界育ち。企画・ディレクション・運営業務等を経験し、現在はフリーライターとして活動中。主な執筆分野は女性、健康、ライフスタイル、旅行など。『定年後の暮らしとお金の基礎知識2015』『冷え退治バイブル』(共に扶桑社)にライターとして参加。

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