【新連載】何この子? 彼と親し気な彼女の存在が気になって……
Story1 ★ふたりに北風
「……寒っ!」
電車から降りると、すぐに木枯らしが吹き付ける。
この土地名物の冬の強風は、
おそろしく冷たいと同時にとても乾いていて、
体にもお肌にもよろしくない。
わたしは巻いていたマフラーを口元まで高くし、
ホームを流れる人波にのって歩いた。
帰ったら晩ご飯は何かな、くらいの、
軽い気持ちで。
「よっ、真奈。元気か」
改札に定期をタッチして出たところで、
後から聞き慣れた声に呼び止められた。
「あ、大地」
わたしは反射的に、微笑みかけていた。
杉村大地は愛すべき、同い年のお隣さん。
家は酒屋さんをしているが、
今、その酒屋さんは結婚したお兄さんが継いで、
大地は隣町にある、市役所に勤務している。
わたしたちは、当たり前のように、
ふたり並んで家に帰る。
こんな日が、月に1度か2度ぐらいある気がする。