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【新連載】異動!? 1年半前に別れた元カレが同じ支店にやってきて……

「いただきます」

不思議な気分だった。
ふたりで同じ麻婆豆腐定食を注文し、
同時に箸を割って、食前のあいさつをしても、
この関係はもう、とっくに終わっているのだ。
なのに、寂しくない。

それに、栄太がわたしに謝ったのも、
本当に悪いと感じているかといえば、あやしい。
これから仕事を上手くやるための、処世術かも。

……それでも、口に出してもらってよかった。
案外、言葉にして謝ってもらうと、
それだけで、気なんか済んでしまうみたい。
わたしたち本当に、大人になれたんだな。

「そうそう歓迎会、
月曜の夜なので、空けておいてね」
「うん、わかった。
しかし、ここの麻婆豆腐、すごくおいしいね」
わたしは栄太が飲み干した空のグラスに、
店員さんが水を注ぐのを、
一瞬、ぼんやりと見つめていた。

付き合っていた頃は、こんな日がくるなんて、
思いもよらなかったな、と感じつつ。

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