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光のドップラー効果を調べると遠く離れた天体の動きが分かる

突然ですが、「ドップラー効果」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。

【宇宙で一番寒い場所はどこ?―「ブーメラン星雲」時速60万km近い風が吹いている】

有名な例としては、救急車が近づいてくる時と、遠ざかって行く時とでサイレンの音が違って聞こえるという現象があります。

この現象は、音が波であるために起こるのですが、実は同じことが他の波の場合でも起こりえます。

そこで今回は、光の波で発生するドップラー効果についてご説明したいと思います。

音のドップラー効果の仕組み

では早速…と行きたいところですが、光のドップラー効果を説明する前に、音のドップラー効果の仕組みについて、あらためて整理しておきましょう。

事前の知識として、音の高さ・周波数・波長の3つの関係性についてまとめると、次のようなことが言えます。

まず、音の高さというのは周波数によって決まり、周波数が高いほど私たちには高い音として聞こえます。また、周波数は波長に反比例するため、波長が短いほど周波数は高くなります。つまり、高い音ほど波長は短くなるのです。

このことを踏まえて救急車の例を見てみましょう。

救急車が近づいてくると音の波形は圧縮されるため、波長は短く周波数は高くなります。その結果、サイレンは本来の音よりも高い音として聞こえます。

逆に、遠ざかるときには波長が長く周波数は低くなるので、実際よりも低い音として聞こえます。

このような理由で、救急車とすれ違う瞬間に、音の高さが急に変わったように感じられるわけです。

光のドップラー効果とは

いよいよ本題に入りますが、光も波の性質を持っていることから、音の場合と似たような効果が見られます。
音の場合には高さが変化しましたが、光の場合は色が変化します。

目に見える可視光線には、青い色ほど波長が短く、赤い色ほど波長が長いという性質があるため、光源が近づいてきて波長が短くなると、本来の色よりも青っぽく見え(これを「青方偏移」と言います)、逆に遠ざかって行くと赤っぽく見えます(これを「赤方偏移」と言います)。

これが光のドップラー効果と言われる現象です。

光のドップラー効果で宇宙が分かる

この光のドップラー効果を利用することで、遠く離れた天体の動きを調べることができます。

なぜなら、星の色を観測して、本来の星の色とどう違うかを比較すれば、その天体が地球から遠ざかっているのか、近づいているのかが分かるからです。
このようにして、観測している天体が、地球から見てどのように移動しているのかを測定できるというわけです。

そして、実際の観測結果によると、遠くの星ほど赤っぽく見えることが分かっています。
このことから、遠くの星ほど速いスピードで遠ざかっている、つまり現在の宇宙はどんどん膨張していると推測することができます。

天体の本来の色はどうして分かるの?

ところで先ほど、本来の星の色と比較して…と書きましたが、なぜ地球に届いた星の色が本来の色とずれていることが分かるのでしょうか。

一言で表すとするなら、光のスペクトルのずれがその理由です。

光をプリズムに通すと、虹みたいにいろいろな色に分かれて見えるようになりますが、このように光を波長ごとに分解することを「スペクトル分解」と言います。

恒星からの光は、その恒星自身の大気中に含まれる物質によって一部が吸収され、もともと欠落した状態で地球に届きます。そのため、スペクトル分解をすると、特定の吸収された部分だけが黒い帯状のライン(これを「吸収線」または「フラウンホーファー線」と呼びます)となって現れます。

光がどの物質に吸収されたかによって吸収線の位置は決まりますので、仮に同じ成分によって光が吸収されているとすれば、本来同じところに黒い帯が出るはずです。けれども、遠い恒星から届く光ほど、この線が本来の位置よりも赤い方向にずれていることから、光源(=星)が遠ざかっていることが分かるのです。

まとめ

ドップラー効果は、音と同じように光でも起こることがお分かり頂けたでしょうか。

救急車のように音源が動く場合は、その音の高さが変化して聞こえますが、光の場合には、その色が変化して見えるわけです。

それにしても、星の光の色が変化するというちょっとした現象から、宇宙全体の大きな動きが把握できるなんて面白いですね。

(文/TERA)

●著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2014年01月22日に公開されたものです

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