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『ヴェニスの商人』から学ぶ色々な人とどう付き合っていくのか?

世の中には本当にいろいろな人がいるもの。それはあなたも感じているはず。ではそのいろいろな人とどう付き合っていくか。そのヒントは、シェイクスピアの『ヴェニスの商人』にあった。

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●『ヴェニスの商人』のあらすじ
ヴェニスの豪商アントーニオーは、船貿易で成功した人物。その親友にバッサーニオーがいる。バッサーニオーはアントーニオーに借りた金を返済できず、一攫千金を狙ってベルモントに住む資産家の娘ポーシャに求婚する相談に来る。

そのための資金をアントーニオーに再び借りたいということ。アントーニオーはバッサーニオーに金を貸したいのだが、手元には必要な額がない。そこでユダヤ人の金貸しシャイロックに借金して、バッサーニオーに貸すことにする。

シャイロックは金を貸す担保にアントーニオーの心臓に近い身体の肉1ポンドを要求する。貿易に出ている船が戻ってくれば余裕で返せると考えたアントーニオーは喜んで承諾する。

バッサーニオーは、ベルモントへ旅立ち、みごとポーシャを妻とする。ところがそこに、ヴェニスからの伝令が来た。アントーニオーの船が座礁し、すべての財産を失ったこと、シャイロックが借金のカタにアントーニオーの肉1ポンドを要求していることなどが伝えられた。

バッサーニオーは事情を妻となったポーシャに伝え、急ぎ、大金を持ってヴェニスに帰る。そして裁判に出席する。

裁判では、バッサーニオーの妻ポーシャが変装して裁判官となる。そこで、シャイロックに慈悲を促すが、相手はあくまで証文通りに肉1ポンドを要求する。バッサーニオーは借金した何倍もの金を積むが、シャイロックは拒絶する。

日頃、ヴェニスの豪商アントーニオーがユダヤ人シャイロックをいかに侮辱し、商売である金貸しの邪魔をしたかといったことが背景にはあった。そしてついに、裁判官ポーシャは、シャイロックの言い分に筋が通っていることを認める。

シャイロックがアントーニオーの胸に短刀を突き付けようとした瞬間、ポーシャは、契約書には血をやるとは書いていないこと、1ポンドきっかりでなければ契約違反であることなどを盾に止める。シャイロックはやむなくストップする。

ポーシャは、シャイロックがヴェニスの住人の命を脅かした罪を犯したことも伝え、財産没収に値すると伝えるが、アントーニオーが取りなして折衷案でまとまる。

●シャイロックだけが異文化ではない
この劇の中で、ヴェニスの住人とシャイロックは民族も宗教も異なるため、異文化であるということがよく分かります。そこで契約書の文字通り取るか、ある程度ファジーに解釈するかという文化の相違も分かりやすいでしょう。

現代ではこの劇が上演されるときに、宗教上の弾圧がテーマとなったり、多数派(ヴェニスのキリスト教徒)と少数派(ヴェニスのユダヤ人)という対立構造を問題にした演出も多く見受けられます。

「異文化」という場合に、こうした分かりやすい例とは別に、実は我々と、アントーニオーやバッサーニオーの金銭感覚の違いなども興味深い違いがみられることでしょう。バッサーニオーは親友から借りた金で豪遊し、無一文になって、資産家の令嬢との逆玉の輿をねらった、いわば「一攫千金」の旅に出る元手を、また、親友のアントーニオーから借りようとします。

こうしたバッサーニオーや、彼に金を貸すアントーニオーの金銭感覚は、私たちの金銭感覚とはかけ離れていることでしょう。質素倹約してためたお金を融資して金利で生活していたシャイロックの方が私たちの現代的な金銭感覚に近いかもしれません。

また、シャイロックの築いた富を、娘のジェシカは駆け落ちする時に、持ちだして恋人とともに豪遊するのです。母親の形見の指輪と猿一匹を交換するなど、へっちゃらです。これは父親と子供の世代間の価値観という文化の相違と言えるのではないでしょうか。

●異なる立場の人と、どうするか
現代では職場でいろいろな立場の人と一緒に働くことが当たり前になってきています。国籍や言葉だけでなく、雇用や勤務形態、女性と男性の違いなどさまざまです。そうした問題をまずは認識するために、気軽にオープンに話し合いを持ってはいかがでしょうか。

そうした立場の違いからくる問題を深く理解することにつながり、解決の糸口を見つけるのに役立つのではないでしょうか。

(文:深山敏郎/(株)ミヤマコンサルティンググループ/コミュニケーションズ・スペシャリスト)

著者プロフィール
著書:「できるリーダーはなぜ『リア王』にはまるのか」~100冊のビジネス書よりシェイクスピア~ 青春出版社刊。コミュニケーション改善の請負人として、高級ホテル、外食チェーン、外車ディーラー、IT企業など、20年で延べ4万人あまりを直接指導。夢は、英国でシェイクスピア芝居を英語で上演すること。http://www.miyamacg.com/ お問合せ先:info@miyamacg.com

※この記事は2013年11月12日に公開されたものです

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