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『ハムレット』から学ぶ!意思決定のタイミング

シェイクスピアの代表作の一つ、『ハムレット』は父王のかたきうちの物語。何度も実行しようとしては、ためらってしまう。まるで優柔不断な王子のよう。でも実際にはどうだったのだろう?

【間違うと大変!殿、様、小生、小職の正しい使い方】

●悲劇『ハムレット』のあらすじ
デンマークの王子ハムレットは、父王の突然の葬儀のため、留学先から戻る。そして父の葬儀からわずか2カ月で、母ガートルードが叔父クローディアスと結婚する。不快な思いをしているハムレットに、父王の亡霊が夜ごと城を徘徊(はいかい)しているという情報が入る。

ハムレットは父王の亡霊に会い、聞かされたのは、叔父クローディアスが父王を毒殺したということ。亡霊はハムレットに復讐をして欲しいと伝え、ハムレットはかたき討ちを誓う。亡霊の言葉に半信半疑のハムレットは、何とか確証を得ようとする。

いろいろな方法によって、確証を得、いざ復讐を実行しようとするが、寸前でためらうことばかり。ついには、恋人オフィーリアの父で宰相のポローニアスを、父のかたきクローディアスと間違って刺し殺してしまう。クローディアスやガートルードに諭されて、ほとぼりが冷めるまで英国へ行くという提案にしぶしぶ応じる。

英国への航海の途上、クローディアスから英国王への密書をのぞき見したハムレットは、愕然とする。そこにはハムレットが英国に到着次第、死刑にするよう書かれていた。その後、船が海賊船に襲われ、人質になるなどの出来事を経てデンマークへ帰ってきたハムレットが目にしたのは恋人オフィーリアの葬儀だった。

ハムレットは泣き叫び葬儀をめちゃめちゃにする。オフィーリアの兄レアーティーズは激怒して、父ポローニアスと妹オフィーリアのかたきであるハムレットを殺すことを決意する。その陰には、クローディアスの陰謀があった。

表面上、仲直りのために設けられた剣の試合で、ハムレットはレアーティーズが仕込んでおいた剣の切っ先の猛毒で切りつけられる。ハムレットは自らの死期が迫っていることを知る。また、母ガートルードは間違って、クローディアスがハムレットに飲ませるために用意した毒杯を飲んでしまう。

ハムレットは、父王のかたきクローディアスに復讐して、息絶える。

●確証を得るまで苦しみながらも、意思決定を待ったハムレット
ハムレットは、父王が亡霊の言ったとおりの死に方をしたのかどうか、心理戦を仕掛けてクローディアスの反応を観察します。それまでは、怪しいとは思っても、理性で衝動を抑えます。しかし、クローディアスはなかなか尻尾を出しません。

とうとう旅役者に父王殺しとそっくりのシーンを上演させることで、クローディアスの異常なほどの狼狽をみて、確証を得ます。その後、クローディアスが独りで兄殺しのざんげをしている場面に遭遇しますが、もしここで復讐してしまったら、クローディアスは天国へ行ってしまいます。

ハムレットの父は、ざんげの機会も与えられず急に亡くなったので、昼は煉獄の火で焼かれ、夜は城をさまよっているのです。

このように、ハムレットは最後の最後まで機会を伺い、意思決定と逡巡をくり返しながら、ともすれば復讐という使命の大きさに恐れおののきながら、最後は実行に移すのです。こうして考えてみると、ハムレットは単なる優柔不断なプリンスではなく、人生の重圧に苦しみながらも自らの使命を果たしていく、悲しみをこらえる人間とみるのが妥当ではないでしょうか?

だからこそ、舞台でもその時代の人気俳優が演じるのでしょう。皆さんも一度、『ハムレット』の舞台へ赴くか、あるいは戯曲を読んでみませんか?

(文:深山敏郎/(株)ミヤマコンサルティンググループ/コミュニケーションズ・スペシャリスト)

著者プロフィール
著書:「できるリーダーはなぜ『リア王』にはまるのか」~100冊のビジネス書よりシェイクスピア~ 青春出版社刊。コミュニケーション改善の請負人として、高級ホテル、外食チェーン、外車ディーラー、IT企業など、20年で延べ4万人あまりを直接指導。夢は、英国でシェイクスピア芝居を英語で上演すること。http://www.miyamacg.com/ お問合せ先:info@miyamacg.com

※この記事は2013年11月12日に公開されたものです

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