下剤に頼らず便秘を解消する方法は? おすすめの漢方薬を紹介
M子「こんにちは。初めて漢方の病院に来ました」
丸山先生「ここ(※)は基本的には婦人科で、漢方を処方するといっても変わった診察があるわけではないので、リラックスしてくださいね。M子さんは、便秘で悩んでいるんですね」
※丸山先生が勤める霞が関ビル診療所
M子「はい。慢性的な便秘で、薬を飲まないと3日は出ません。出ても量が少なくて……」
丸山先生「どんな便ですか?」
M子「硬くてコロコロした感じです。便が硬いせいか、ちょっと痔みたいな症状もあります」
丸山先生「ほかに気になる症状はありますか?」
M子「常にお腹が張っている感覚があります。便秘が気になること以外は健康だし、体力もある方だと思います」
丸山先生「冷えを感じることは?」
M子「全然ないです。むしろ暑がりです」
丸山先生「なるほど……」
M子さんの体質や体の悩みをまとめると……
・体格はややぽっちゃり
・太鼓腹
・便秘、腹部膨満感、肛門痛
・下痢をすることはない
・冷えはなく、どちらかというと暑がり
・食欲はある
・体力はあり、基本的に元気
・イライラ、不眠など精神症状はない
・軽度の肩こり
・舌は紅色
M子さんの初診問診票はこんな感じです。あなたの傾向とは似ている? 似ていない?
丸山先生「M子さんには、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)を処方します。1日に3回、1包ずつ服用してください。でも、もし飲んで下痢をしてしまうようなら服用を中止してくださいね」
M子「えっ、下痢をしてしまう可能性もあるんですか?」
丸山先生「防風通聖散は体の中の毒素を取り除く漢方なんです。体の中で熱が余分だったら熱を取り除き、老廃物が溜まっていたらそれを取り除いてくれます。便秘の場合は便を排出させます」
M子「へー、そうなんですね」
丸山先生「防風通聖散は『実証』に効くといわれる漢方なのですが、『実証』とは、簡単に言うと『体力がある』とか、『体の中に余計なものがたくさん溜まっている状態』なんです」
M子「ふむふむ。それで、どうして下痢をする可能性があるんですか?」
丸山先生「『実証』に対して『虚証』という体質があり、これは『体力がない』とか、『体に何かが足りない状態』のことです。この『虚証』タイプの人に実証に効く漢方を出してしまうと、『もともと足りないところからさらに排出させ』ようとして、下痢をしてしまうなど、体に合わない症状が出ることがあります」
Point! 丸山先生の初心者講座1
防風通聖散は「肥満体質を改善する、余分なお腹まわりの脂肪を落とす」といわれて市販でもよく販売されています。ダイエット目的で購入する方も多いようですが、説明のとおり「虚証」タイプの人は合わない薬です。下痢をするようであれば服用を中止しましょう。
M子「えー! そうなんだ……」
丸山先生「診察をしたところ、M子さんは『実証』だと思われるので防風通聖散を処方します。ただ、M子さんが実は『虚証』だったりすると、薬が合わない可能性があるので、必ず経過を見るようにしてくださいね」
Point! 丸山先生の初心者講座2
M子さんを「実証」だと判断した主な理由のひとつは、お腹の力が強く、また、いわゆる太鼓腹であること。さらに、舌が紅色なのは、体内に熱がこもっている状態と診断しました。基本的に体力があることや暑がりであることも「実証」に多い所見です。
M子「なるほど。わかりました」