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住宅としてお城の天守閣を建てるにはどんなハードルが待ち構えている?→「問題山積み」

突拍子もない話ですが、戦国時代や江戸時代のお城を、一般住宅として建設するとしたら、現在の建築法のどんな問題や基準をクリアしないといけないのでしょうか? 不動産会社の人と一緒に、お城を建てる場合のシミュレーションをしてみました。

建てる前から問題が山積み

お城そのものを建設するとなると、あまりにも規模が大きすぎるので天守閣を建設する場合について調べてみました。サンプルに選んだのは、江戸城の慶長天守閣です。

●江戸城 慶長天守閣

木造5階建て
高さ:約65メートル(建築物48メートル、土台17メートル)
土台面積:36メートル×36メートル(約400坪)
建築物1階床面積:32.4メートル×28.8メートル(約280坪)

慶長天守閣の規模は諸説ありますが、今回はこのサイズを建設する場合で進めます。

――江戸城の天守閣と同じサイズのものを建設するには、まずどんな問題が発生しますか?

まずは「土地」の問題ですね。これだけ大きな建築物が建てられる住宅用地を見つけないといけません。もしそれに見合う広さの土地が見つかったとしても、今度は「高さ制限」や「容積率」「建ぺい率」などもクリアしないといけません。

――当然、そこが最初の難関ですよね。

そういった問題以外にも、「日影規制」もクリアしないといけませんね。

――日影規制というのは、周辺が影にならないようにしたりする規制ですよね?

そうです。さすがに65メートルの高さですと、その規制に引っ掛かってしまう地域も多くあるので……。これらをクリアするには、そういった高さ制限や日影規制の影響がない地域の土地を用意するか、広大な土地を用意するしかありません。土台が約400坪とのことですので、例えば1,000坪の土地を用意すれば、周辺が日陰になっても影響がありませんし、容積率の問題も解決します。

木造5階建ては高額!

――何とか建設可能な土地が見つかったとして、今度は実際に建築を始めるわけですが、ここではどんな問題が出ますか?

次はお金の問題ですね。まぁ広大な土地を準備できる時点で、お金のことは考えないでもいいかもしれませんが、こうした5階建て400坪の建築物を木造で建設すると、めちゃくちゃお金が掛かります。鉄筋で造るよりもはるかに費用が掛かりますよ。

――一般住宅の木造2階建てとはレベルが違いますもんね。

そうですよ。木の耐久性や、建築物の大きさに見合う木材の調達など、困難を極めると思います。

――軽く億はいきますよね?

当然です。文化財の補修とか、そういったレベルを超えていますからウン十億の話になると思いますよ。

――確かに国とか自治体がやるような工費になりそうですよね(笑)。

中身もいろいろ付けないといけません

――建設可能な土地、そして莫大な工費を確保しました。さぁ、次はどんな問題が出ますか?

構造計算をしないといけません。積載物の荷重、地震や積雪、風の影響にどれだけ耐えられるかなどの確認をします。その後、建設にかかります。

――これだけ巨大な建築物だと、一般住宅にはない設備などが必要になりそうですね。

当然必要になります。20メートルを超える建築物なので、「避雷針の設置」が必要です。また、60メートルを超えているので飛行機に建設物があることを知らせる「航空障害灯」も設置しないといけませんね。60メートル級なのでこの場合は「低光度赤色航空障害灯」が必要です。

――航空障害灯というのは、高層ビルなどの屋上で赤色に点灯しているやつですね。

そうです。あとは「高層建築物」に認定されるので非常用エレベーターの設置も必須です。また、スプリンクラーや消火器などの防火設備も必須です。自動火災報知設備も必ずいります。建築物自体の耐火性も問題になります。防火・準防火地域では耐火建築物にしないといけませんね。

――だんだん住宅ではなくなってきますね(笑)。

これだけの大きさの建物ですし、規制は当然厳しいですよ(笑)。

――では、こういったハードルをクリアして、ようやく住宅としてのお城が完成、ということですね。

そうですね。まぁもし建設するとしても、木造5階建ての建築物を建てることのできる技術がある建設会社を探すのが一番難しいと思いますね(笑)。

現代の建築基準を一つ一つクリアすれば、城の天守閣を住宅として建築することは可能のようでした。ただ、どう考えても道楽以外ではやれませんよね(笑)。

(貫井康徳@dcp)

※この記事は2013年07月02日に公開されたものです

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