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「できません」の敬語とは? ビジネスで使える丁寧な断り方

松岡友子(コミュニケーションマナーアドバイザー)

ビジネスでは、上司やお客様など目上の人に対して「できません」とお断りしなければならない時もあります。そんな時、どんな敬語を使うのが正しいのでしょうか? 今回は、コミュニケーションアドバイザーの松岡友子さんが「できません」の敬語を例文と共に解説します。

ビジネス上の人間関係を円滑に進めるためには、物事を肯定的に表現するよう心掛けたいもの。たとえ否定的なことを伝える場合でも、なるべく相手に配慮して表現する意識が大切です。

例えば、物理的に不可能なことや都合上難しいことを、「できません」とお断りしなければならない時、皆さんはどのように伝えていますか?

今回は「できません」の敬語表現を例文つきで分かりやすく解説。併せて、丁寧にお断りするために気をつけたいポイントを紹介します。

「できません」は敬語?

ビジネスシーンでは、何かをお断りしなければならない場面は多々出てきます。

しかし、「できません」という言い方だと、語気の強さや切り捨てるような薄情さを感じさせて、お互い気まずくなってしまいます。

そのため、「できません」自体は敬語ですが、ビジネスシーンにおいてはやや不適切と言えます。

目上の方に対して「できません」を使うのは、よっぽどの禁止事項をお伝えする場合などにしましょう。

「できかねます」は正しい敬語?

「できません」の丁寧な言い換えとして、「できかねます」という言葉が使われることがあります。そうすることで、少し柔らかい表現となるからです。

ただし「できかねます」も敬語ですが、筆者は正しい表現とは言い切れないと考えています。

「できかねます」が正しいと言い切れない理由

「できかねます」の「かねる」は、辞書によると「他の動詞の連用形に付いて、躊躇・不可能・困難などの意を表す」とあります。

つまり、単体で「○○することができない」という意味を示します。

「できる+かねる」の形である「できかねる」では、「できる」「できない」という2つの意味を持つことになってしまうため、厳密に言うと正しい表現ではありません。

「いたしかねます」と言い換えるのがおすすめ

「できません」を言い換える場合は、「いたしかねます」を使うのがおすすめです。

「いたしかねる」の「しかねる」は、「しにくい。難しい」といった意味。できないことをやんわりと遠回しに伝える表現なうえ、謙譲語の「いたす」を使うことで「いたしかねる」は、へりくだった表現になるのです。

つまり「できかねます」よりも「○○いたしかねます」の方がより丁寧な表現だと筆者は考えます。

「できません」の言い換え表現(例文あり)

では、「いたしかねます」以外に使える「できません」の丁寧な言い換え表現を例文と共に見ていきましょう。

難しい・厳しい

難しい・厳しいという伝え方は、どちらも文字の通りに捉えれば、「まだ少し望みがある、頑張れば何とかなる」というニュアンスを感じるかもしれません。

「できません」という否定の表現はやや弱まりますが、柔らかい言い方をしたい時に便利です。

例文

・本工事を年内に完了するのは難しい状況です。

・今月の売り上げ目標を達成するのは厳しいと言わざるを得ません。

「できません」の英語表現

ここからは「できません」の英語表現について解説します。

英語でも、日本語と同じようにクッション言葉に似た表現を用いて、「できない」ことに対して申し訳なく思っている気持ちを伝える傾向にあります。

例文

・I’m sorry , but I can’t accept your request.
(申し訳ありませんが、あなたのご要望にお応えできません)

・I’m afraid that it is difficult for us to meet your schedule.
(残念ながら、あなたのスケジュールに合わせることが難しい状況です)

断る時に気をつけると良いこと

ビジネスシーンなどで何かをお断りする際、丁寧な言葉を使う以外にも気をつけると良いことがあります。

(1)クッション言葉を使う

お断りする時には、クッション言葉を使うことで、相手の希望に沿えず残念に思っているというニュアンスが伝わり、より丁寧な印象になります。

特に、メールであれば冷たく受け取られないよう、クッション言葉の存在が重要となります。

例文

・個人情報の問題もあり、こちらからのご連絡はいたしかねます。

・誠に勝手ながら、時間の都合上ご質問にはお答えいたしかねます。

(2)代替案を提示する

どうしても何かをお断りしなければならない場合、同時に代替案を提示することで、相手に誠意を伝えられます。

いかに丁寧にお断りしたところで、相手には不満が生じる可能性があります。「できないこと」から「できること」へ視点を変えてもらうために、精一杯の提案を同時に示すことは、ビジネスパーソンとして大切なスキルではないでしょうか。

例文

・第1希望でご提示いただいた日はあいにく満席となっており、ご要望に沿いかねます。第2希望でしたらご用意することが可能でございます。いかがでしょうか。

(3)不可能な理由をはっきり伝える

「できません」を柔らかく表現する一方で、物理的に不可能であることをはっきりと伝えなければならない場面もあります。

そんな時は、なるべく丁寧な表現を心掛ける他、理由を明確に述べることで相手を不快な気持ちにさせないように注意しましょう。

例文

・機械の都合上、当店ではクレジットカードをご利用いただけません。

・他のお客様のご迷惑となりますので、お煙草はご遠慮いただきますようお願い申し上げます。

正しい敬語表現で信頼を得よう

言葉は変化していくもので、間違った用法であっても、広く使われることで違和感がなくなりいつの間にか一般的になることもあります。

ですが、正しい言葉や使い方を知り、その正しい理由や間違っている理由に納得するならば、ぜひ正しい日本語の使い手になってほしいと思います。そうすることで、あなたのビジネス上の信頼感もきっと増していくことでしょう。

(松岡友子)

※画像はイメージです

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