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「恐縮です」はどう使う? 「恐縮」の意味や例文を紹介

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「恐縮」とは、「身も縮むほど恐れ入る」という意味。「恐縮です」はビジネスでもよく見聞きするフレーズですが、使い方に自信がないという方もいるのではないでしょうか? ライティングコーチの前田めぐるさんに、「恐縮」の意味や使い方、例文を解説してもらいました。

「お越しいただき恐縮です」「誠に恐縮ではございますが」など、ビジネスシーンでも定型句のように使われる「恐縮」という言葉。

便利なフレーズですが、改めて「どんな意味?」と問われると困る人も多いのではないでしょうか。

今回はそんな「恐縮」の意味や使い方、類語を紹介します。

「恐縮」の意味とは?

辞書によれば、「恐縮」には次のような意味があります。

きょうしゅく【恐縮】
身もちぢむほどに恐れ入ること。
感謝や謝罪や依頼の言葉としても用いる。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

「恐縮」とは、相手から多大な配慮を受けたり、相手に迷惑を掛けたりして、申し訳なく思うことを意味する言葉です。主に、感謝・謝罪・依頼を伝える言葉として使われます。

また、「気恥ずかしさに恐れ入って、体が縮こまる気がする」という意味でも使われます。

「恐縮」を使う上でのポイント

「恐縮」という言葉は、相手に対して恐れ多く感じる場面で重宝する表現です。

ここでは、「恐縮」を使う上でのポイントを紹介します。

定型句として多用するのは避ける

定型句は便利ですが、機械的に多用してしまうと、気持ちが伝わりにくかったり、効果が弱まったりするものです。

例えば、感謝のメールの中で何度も「恐縮」という言葉が登場したら、相手はどう感じるでしょうか?

そもそも、「恐縮」とは「身が縮むほど恐れ入る」という意味です。相手によっては、社交辞令と感じたり、あるいは「もしかしたら、自分が大げさなことを言って迷惑を掛けたかな?」と思ったりするかもしれません。

そのため、1通のメールや手紙の中で使うのは、1回にとどめるのが程良いといえます。

後段で掲げる類語や言い換え表現も併用し、多彩な表現を心掛けましょう。

話し言葉としても使える

「恐縮です」「恐縮ですが」というフレーズは、依頼状やお礼状などの書き言葉で使われることが多いのですが、話し言葉としても使えないわけではありません。

例えば、相手から褒められた場合やお土産をもらった場合などに、その場で「恐縮です。ありがとうございます」と返すことができます。

ただし、相手によっては堅苦しいと感じさせることもあります。その場合には、「恐れ入ります」と柔らかい言葉に言い換えても良いでしょう。

目下ではなく目上の人に使える言葉

ビジネスシーンで「恐縮です」は、こちらが恐縮する立場にある相手に対して使います。つまり、上司や取引先など、主に目上の人に対して使う言葉です。

場面としては、心遣いを受けた時や失敗をフォローしてもらうなどサポートを受けた時、褒められた時などが挙げられます。より丁寧に表現したい場合には、「恐縮でございます」と使います。

一方、目下の人に対して「恐縮」は使わないので、注意しましょう。

「恐縮」の度合いが大きい場合には言葉を足す

恐縮の度合いが大きい場合には、強調するためのさまざまな表現があります。

以下は、手紙やメールなどの書き言葉としてよく使われる言葉です。とてもありがたいと感じている時や大変申し訳なく感じている時には、「恐縮」に付け加えて使うと良いでしょう。

・甚(はなは)だ恐縮です
・恐縮の至りです
・恐縮の極みです
・恐縮しきりです
・恐縮千万(せんばん)です

直接的な感謝や謝罪とは受け止められないことがある

「恐縮」という言葉には、「あまりにもありがたくて、恐れ多く、身が縮こまるほどだ」という感謝の意味と、「あまりにも申し訳なくて、恐れ多く、身が縮こまるほどだ」という謝罪の意味の両方があります。

ここで少し気を付けたいのは、「ありがとう」という感謝の言葉や「申し訳ありません」という謝罪の言葉が文面に入っていないと、相手や場面によっては意味が伝わりにくい可能性があるということです。

そのため、心からの感謝を表したい場面では、「感謝してもしきれません」「誠にありがとうございます」など、「感謝」や「ありがとう」という言葉を選ぶ方が無難でしょう。

また、特に相手に大変な迷惑を掛けたり、ひどく怒らせてしまったりした場合には、「恐縮です」よりも「大変申し訳ございません」という言葉を選ぶ方が、謝罪の気持ちが確実に伝わるはずです。

「恐縮」はどんな時に使えるのか?(例文付き)

では、具体的に「恐縮」はどんな場面で使うのでしょうか?

ここでは、場面ごとに使い方と例文を紹介します。

相手から受けた配慮に対して感謝の気持ちを述べる時

上司から褒められたり、取引先からありがたい配慮を受けたりした時、失敗をカバーしてもらうなどのサポートを受けた時に、「〜していただき恐縮です」と使います。

例文のように、お礼の言葉もしっかり述べたり、事後報告をしたりすると、相手にも良い印象を持ってもらえるでしょう。

例文

・先日は、珍しいフルーツをお贈りいただき、恐縮です。スタッフと一緒に、とてもおいしくいただきました。本当にありがとうございました。

謝罪やおわびの気持ちを述べる時

失敗をして迷惑を掛けたり、不快な思いをさせたりした場合に使います。

例文のように、おわびの言葉とともに、今後どのような対策を講じるかなども述べると、謝罪の気持ちがしっかり伝わるでしょう。

ただし、前段でも述べたように「恐縮」の意味が謝罪だけとは限らないため、重大なミスについて謝罪する場面では、「恐縮です」よりも「大変(誠に)申し訳ございません」という言葉を選ぶようにしましょう。

例文

・このたびはご迷惑をお掛けし、恐縮です。誠に申し訳ございません。今後このようなことがないよう、一層留意してまいります。

相手を尊重しつつ、ぜひとも依頼したい気持ちを表す時

ビジネスでは、納期の延長、価格の交渉、参加の依頼など、少なからず相手に負担を掛けそうな依頼をする場面があります。

その場合に、相手を尊重しつつお願いするクッション言葉として「〜して恐縮ですが」というように使います。

例文

・大切なお時間を割いていただき恐縮ですが、ぜひともご高覧(こうらん)の上、ご助言やご感想を賜(たまわ)りましたら幸いです。

相手の依頼や申し込みを申し訳なく思いながらも断る時

「恐縮です」という言葉は、相手からの依頼や申し込みを断る時にも使うことができます。

「断らざるを得ないことを申し訳なく思う」という意味で、クッション言葉として使い、次のように表せます。

例文

誠に恐縮ですが、昨今原価も上昇しており、そのお値段ではお引き受けいたしかねます。

褒め言葉に対して謙虚さや気恥ずかしさを表したい時

「恐縮です」という言葉は、相手に褒められたことに対して謙虚な姿勢を表す場合に、「とんでもないことです」と同じような使い方をすることができます。

また、気恥ずかしく感じる場合にも使えます。

例文

・お褒めいただき、恐縮です。大変励みになります。

第三者が恐れ多く感じている様子を相手に伝えたい時

身内や部下が相手に対して感謝や申し訳なさを感じていることを伝えたい時に「恐縮しておりました」などと使うことができます。

例文

・先生に本日お会いすることを父に伝えたところ、「先日のお礼をお伝えしておいてくれ」と、大変恐縮しておりました。

「恐縮」の言い換え表現

「恐縮」と似たような意味を持つ言葉、類語、言い換え表現を以下に紹介します。

「恐れ入る」

「恐縮です」という言葉の「(相手を)恐れる」という意味だけを表す言葉です。「身が縮むほど」という意味が含まれていない分、「恐縮」よりも使いやすいといえます。

「恐れ入ります」も「恐縮です」と同じように、褒め言葉への返しや御礼、おわび、依頼の言葉として使うことができます。

例文

・早速ご発注いただき、恐れ入ります。良いものをお届けできるよう頑張ります。

「恐悦至極(きょうえつしごく)」

「恐悦」とは「相手の好意や配慮をもったいなく思って喜ぶこと」「至極」とは「この上なく」という意味で、手紙文などで使われます。

「喜ぶ」という意味が入っており、目上の人の慶事を祝う時にも使える言葉です。

例文

・お褒めの言葉を頂戴し、恐悦至極に存じます。

「痛み入る」

相手の親切に対して、「恐縮」の度合いが大変強く、「心が痛いほど恐縮している」という意味。

心から感謝している場面などで使う言葉です。

例文

・この度のご配慮、誠に痛み入ります。

「もったいない」

相手の褒め言葉に対して、「恐れ多い。恐縮です」という意味で使う表現です。

例文

・そのようなお言葉を頂戴するとは、もったいないことです。

「斟酌(しんしゃく)」

「相手に対して配慮し、控えめにすること」を意味する言葉です。

例文

・あなたと私の間柄で、何の斟酌も要らないでしょう。

より気持ちが伝わるような表現を

今回は、ビジネスシーンで毎日のように目にする「恐縮」という言葉について、意味や使い方、言い換え表現を紹介しました。いかがでしたか?

どのような言葉でも言えることですが、ここでもやはり「相手によって捉え方は異なる」ということを考える必要があります。

あまりに何度も「恐縮」と言われると、「そんなに怒っているように見えたかな」「ありがた迷惑だったかな」と感じる人がいないとも限りません。

また、「ありがとう」という直接的な感謝の言葉が入っていないと「恐縮させるばかりで、感謝はされていないのか」と思う人もいるでしょう。

機械的に使わず、前後の文脈も含めて、より気持ちが伝わるような表現を工夫しましょう。

(前田めぐる)

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