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「外出し」だと避妊は失敗する? 妊娠の可能性は? 確実に避妊する方法

宋美玄(産婦人科医・医学博士)

セックスの時、避妊を考え外出しをしている人もいるかもしれません。しかし、産婦人科医・医学博士の宋美玄先生いわく、外出しでは妊娠の可能性があるのだそう。どれぐらいの確率で妊娠するのでしょうか? また、確実な避妊法とは?

セックスの時、どんな方法で避妊していますか? ピル? それともコンドーム?

「そんなのは使ってない、いつも外出しだけど妊娠しないから問題ない」「彼氏は外出しがうまいから大丈夫」と考えている人もいるかもしれません。

しかし、それって本当に「大丈夫」なのでしょうか?

外出しの妊娠確率

「外出し」とは、いわゆる腟外射精のこと。性行為をするとき、コンドームをつけるなどの避妊方法をとらずに腟にペニスを挿入し、射精のタイミングでペニスを引き抜くことで妊娠の確率を下げようという方法です。

しかし、本当にこの方法で避妊ができているのでしょうか。避妊方法ごとに、避妊効果がどれくらいあるのかを調べた数値(パール指数)を確認してみましょう。

パール指数とは、100人の女性がそれぞれの避妊方法を使用した場合、1年間で何人が妊娠するかを示したものです。

避妊をしない場合のパール指数は85、つまり1年間で100人のうちの85人が妊娠します。外出しや腟外射精などの性交中絶法と呼ばれる方法のパール指数は約20 [*1]。

100人中20人ほどは、この方法を行っても妊娠するということになります。外出しの避妊効果は、「確実な避妊方法」と呼ぶには低すぎるといえます。

主な避妊方法と避妊効果

主な避妊方法とその効果を以下にまとめました[*1] [*2]。避妊効果として紹介しているのは、先ほどお話ししたパール指数で、各避妊法を1年間使用した100人の女性のうち、何人が妊娠するかを示したものです。

・経口避妊薬(ピル):0.27
・子宮内避妊システム(IUS):0.1~0.2
・子宮内避妊用具(IUD):0.6~2

・コンドーム:2~15
・リズム法(オギノ式、基礎体温など):1~15
・性交中絶法(腟外射精):約20

・避妊しなかった場合:85

上記の中で最も効果が高いとされるのが子宮内避妊システム(IUS)です。この方法では、1年間で妊娠する女性は100人中0.1~0.2人と、かなりの避妊効果が期待できます。ピルも避妊効果は高く、1年間で妊娠する女性は100人中0.27人とされています。

またこれを見ると、日本で最も多い避妊方法とされるコンドームの避妊効果は、意外と低いことがわかります[*2]。コンドームについては主に性感染症予防を目的とし、避妊のためには別の方法を併用するのが安心なようです。

外出ししても妊娠する理由

外出し(腟外射精)に避妊の効果があまりないことはわかりましたが、腟内で射精していないはずなのに、なぜ妊娠してしまうのでしょう? それには、大きく2つの理由があると考えられます。

(1)ガマン汁でも妊娠する可能性があるから

じつは精子は、精液だけに含まれているわけではありません。性的興奮を感じて勃起をしたとき、精液の前に分泌される透明な粘液・カウパー腺液にも精子が含まれています。カウパー腺液は通称「ガマン汁」と呼ばれ、このガマン汁に含まれる精子によって妊娠するケースもあります。

精液に含まれる精子だけを気にして外出ししても、それでは避妊していることにならない場合が多いのです。

(2)ペニスを引き抜くタイミングがずれることがあるから

セックス中に腟外で射精をするには、射精のタイミングを正確に把握したうえでペニスを引き抜く必要があります。ですが、自分の射精のタイミングを正確に把握するのは、たとえ経験豊富な男性であってもなかなかの高等技術です。

「引き抜く前にちょっと出ちゃった」ということも決して少なくないでしょう。感覚的には「ちょっと」かもしれませんが、それで妊娠をする可能性もあります。こうしたことから、外出しは避妊方法として適しているとはいえないのです。

安全日なら外出しでも避妊できる?

なかには、オギノ式などの排卵日計算方法を併用して、「危険日(妊娠確率が高い日)以外の避妊は外出し」という人もいるでしょう。「その方法なら大丈夫なのでは?」と思うかもしれませんが、それもやはり避妊方法として確実とはいえません。

排卵日の計算は、生理がまったくズレずに来ることが前提です。ですが、人の体はデリケートで、体調やストレスなどがホルモン分泌に影響することもあります。なので、必ず毎回同じタイミングで生理や排卵が起こるわけではなく、1~数日のズレが生じることは少なくありません。

そうなると、「安全日だと思っていた日が、じつは違った……」となってしまうことも。「妊娠しても構わない」と思っている場合を除き、避妊方法として外出しを選択することは、基本的におすすめできません。

確実な避妊方法

ここからは、いろいろな避妊方法のメリット・デメリットについて解説します。

避妊方法にはピルやIUSがおすすめ

現在の日本で使える避妊方法の中で、十分な避妊効果があり、妊娠する力(妊孕性:にんようせい)の維持も可能という点で、飲み薬である経口避妊薬(ピル)や、子宮腔内に装着するIUS(子宮内黄体ホルモン放出システム)がおすすめです。

また、女性が主体的に避妊できるという点でも、ピルやIUSは良い方法といえます。

ピルのメリット・デメリット

ピルとは、エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンが配合された錠剤のことです。低用量ピル、OCという呼び方をすることもあります。

排卵を止める作用があり、飲み続けると避妊以外に子宮体がん、卵巣がんの発生減や子宮内膜症の緩和、月経困難症の軽減にも効果的です。

ただし個人差はありますが、副作用として、服用開始後1~2週間くらいは気持ちの悪さや少量の不正出血などがあったり、血栓症や心筋梗塞などのリスクを伴ったりする場合があります。

IUSのメリット・デメリット

IUSは、特殊な器具を子宮内に挿入し、避妊効果を得る方法です。

器具には女性ホルモンの一種であるプロゲステロン(黄体ホルモン)が染み込ませてあります。それが少しずつ放出されると子宮内膜が厚くならず、避妊効果があるほか、生理が「こないのとほとんど同じ」というほど軽くなります。

副作用としては、挿入時の痛み、不正出血の持続、自然脱出、子宮内感染症、腹腔内迷入などがあります。しかし、血栓症などの全身に影響する副作用がなく、ピルのように毎日服用する必要もないので、合う人にとっては楽かもしれません。

ただし、IUSを挿入するには、数万円という安くない金額がかかります。一度挿入してしまえば5年ほど効果が持続するので、トータルで考えると決して高価というわけではありませんが、最初にある程度まとまった金額がかかるということは覚えておいたほうがよいでしょう。

また、ピルやIUSには避妊効果はあるものの、性感染症の予防効果はありません。そのため、コンドームを併用することをおすすめします。

不妊手術という選択肢もあるけれど……

ピルやIUSよりもさらに確実な効果を得たい場合、不妊手術という選択もあります。これは男性の場合は精管を、女性の場合は卵管を、手術によって切除したり切断したりして、妊孕性をなくす方法です。

ですが不妊手術には「やっぱり子どもがほしい」と思ったときに妊孕性を回復させることが難しいというデメリットがあり、基本的には「生涯子どもを持たない」という固い決意のある人、もしくはすでに出産を終え、これ以上の妊娠を望まない人向けの永続的な方法です。

確実な避妊方法を選び、不安のないセックスを

「外出しすれば大丈夫」と言われると「そうかな」と思い、応じてしまう人もいるでしょう。でも、失敗して妊娠すれば、女性の身体に大きな負担がかかることになります。

「本当に大丈夫かな」と不安を抱えたまま、うやむやのままにセックスをしてもよいことはありません。自分たちの大切な体のことです。しっかりとした知識を身につけて、安全にセックスを楽しんでください。

(監修:宋美玄、取材・文:山本尚恵)

※画像はイメージです

参考文献

[*1] 日本産科婦人科学会 編・著「女と男のディクショナリー HUMAN+」p27
http://www.jsog.or.jp/public/human_plus_dictionary/book_vol2.pdf

[*2] 平成22年度厚生労働科学研究費補助金 望まない妊娠防止対策に関する総合的研究「反復中絶防止を目的としたカウンセリング技術の開発に関する研究」パンフレット p6
http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/02/24b8aaafa1f584a840da5d0fbc600d8f.pdf

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