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ニキビの種類と見分け方とは。できる場所ごとの悪化の原因と正しい治し方

横井彩(皮膚科学会認定専門医・医学博士)

一度できるとなかなか治らないニキビ。ニキビには炎症の度合いや進行過程によりいろいろな種類があり、できる場所(体の部位)によっても悪化の原因が違うのだそう。皮膚科学会認定専門医・医学博士の横井彩先生にニキビの種類や治し方について伺いました。

思春期に入ったばかりのころ、おでこのあたりにニキビがたくさんできて悩んだ方も多いのではないでしょうか。

そして最近では、あごや口のまわりにばかりできるようになったと感じる方もいると思います。いったい、どうして同じようなところにばかり肌のトラブルが起こるでしょうか。

ニキビには発生しやすい部位があり、その部位によって対処法を考えることができます。ニキビの種類やよくできる場所、そして治し方など、ニキビに悩む方のための基礎知識を紹介します。

ニキビの種類

私たちが「ニキビ」と呼んでいるものは、医学的には「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)」という皮膚疾患です。「白ニキビ」「赤ニキビ」などと呼ばれているものは、その進行過程によって現れる特徴を表しています。まずはニキビの種類について見てみましょう。

※以下、単に「ニキビ」と表記する場合は、白ニキビや赤ニキビなど全ての段階の「尋常性痤瘡」全般を指します。

白ニキビ・黒ニキビ

ニキビの初期に現れる症状の一つで、見た目は白いふくらみか、その先端が黒ずんでいるものをいいます。医学用語では「面皰(めんぽう/コメド)」と呼ばれる状態で、毛穴の口がふさがり、その中で分泌される皮脂が内部に溜まった状態のことをいいます。

赤ニキビ

ニキビの原因菌であるアクネ菌が面皰の中で異常に増えた結果、炎症を起こして赤みを帯びた状態をいいます。白ニキビからこの状態になることが多く、大きいものでは5mmを超えることがあります。

黄ニキビ

赤ニキビの炎症がさらに悪化して内部が膿んでしまった結果、先端に黄色い膿(うみ)が見えるようになってしまったものです。

さらに重症化した症状

さらに重症化した状態として、皮膚の下に膿の溜まった袋状のものができる嚢腫(のうしゅ)や、ニキビが硬くしこりのようになってしまう硬結(こうけつ)という状態もあります。

強い炎症を起こした後は、皮膚が赤く盛り上がった状態の傷跡(肥厚性瘢痕)になったり、皮膚が凹んでしまったり、ニキビ痕(あと)として残る可能性が高くなります。

ニキビができやすい場所とその悪化原因

ニキビは、皮脂を分泌する脂腺が密集している部位にできます。また、日常的に髪の毛や衣服が当たるなど物理的な刺激によってもニキビが発症・悪化しやすいとされます。どのような場所にできやすいのか、それぞれについて紹介します。

Tゾーン(おでこから鼻にかけてのエリア)

おでこから鼻にかけてのTゾーンと呼ばれるエリアには脂腺が密集していて、もともと皮脂の分泌量が多くニキビができやすい場所と考えられています。

皮膚の表面にはニキビの原因菌であるアクネ菌など、皮脂をエサにして暮らしている常在菌がいます。毛穴が詰まり、そのうえホルモンの影響などで皮脂の分泌が過剰になってしまうと、エサが豊富になった結果アクネ菌が異常に増えてしまい、ニキビの発症・悪化につながるのです。

思春期になってニキビが初めてできる時には、おでこを中心としたこのエリアに集中することが多いとされています。このエリアは前髪などの先端が触れることも多く、そういった刺激がニキビの悪化につながる可能性があるので注意しましょう。

Uゾーン(頬・あご・口まわり)

Tゾーンと同様、Uゾーンも脂腺が集中する場所で、性ホルモンの作用による皮脂の増加などといった影響を受けやすいとされています。また、このエリアは頬杖やちょっとしたしぐさなどで無意識に触れることが多く、こうした接触時の刺激がニキビを悪化させる原因となることがあります。

ニキビができやすい部位は、一般的に思春期にできるニキビの中心であるおでこから、年齢が上がるにつれて、頬、あごへと移っていくことが多いとされています[*1]。

首まわりや胸元、背中

頭や顔ほどではありませんが、首まわりや胸元(デコルテからみぞおちにかけての体の中心ライン沿い)、そして背中にも脂腺が多く分布しています。こういった部位もまたニキビが発生しやすい部位といえます。

髪の毛やマフラー、衣類などによる物理的な刺激を受けやすい部位であるため、このエリアのニキビがなかなか治らない場合は心当たりがないか考えてみましょう。

ニキビの治し方

ニキビができたらどうすればいいのでしょうか。悪化すると痕として残りやすい皮膚トラブルであるため、早い段階で積極的な対処をしたいものです。ここからは、ニキビを治すにはまずどうすればよいか、日常生活でできるケアにはどのようなものがあるかを紹介します。

ニキビ治療の第一選択肢は皮膚科へ行くこと

ニキビができたら市販薬でどうにかしたいと思う人が多いようですが、おすすめは皮膚科を受診することです。

ニキビ(尋常性痤瘡)治療では、今できているニキビを治す「急性期の治療」と、よくなった後も再発を防ぐために続ける「維持期の治療」と、両方の治療を組み合わせて行うことが重要です。

ニキビの初期段階である面皰を改善する薬から炎症を引き起こすアクネ菌を抑える抗生物質まで、医療機関で処方される薬の選択肢はどんどん増えており、ニキビの段階に合わせた治療が行われるようになってきました。

これらの治療は保険適用で受けられるので、早い段階で皮膚科へ行くことをおすすめします。

お家でできる正しいケアとは

ニキビができたら皮膚科を受診するとして、自宅での洗顔やメイクなどはどうすればいいのでしょうか。

(1)洗顔は1日2回がおすすめ

ニキビの対処法といえば顔を洗うことと考える人が多いでしょう。これは間違いではありません。ニキビに対する洗顔のメリットは、余分な皮脂を取り除くことにあります。

余分な皮脂はニキビの原因菌を増殖させてしまう可能性があるため、洗顔である程度取り除くのがよいのです。ただし、洗いすぎはかえって肌を傷つけることもありますので、1日に2回の洗顔をおすすめします。

また、オイルクレンジングがニキビに悪いといわれていましたが、オイルクレンジング自体はニキビを悪化させる要因にならないとされています。皮膚に刺激のないクレンジング剤で、適切にメイクを落とすようにするとよいでしょう。

(2)保湿のしすぎは禁物。ノンコメドジェニックなコスメを

ニキビに効くと思って過度に肌を保湿することは禁物です。現在のところ、保湿がニキビを改善するという医学的根拠はありません。むしろ、油分の多い保湿化粧品で過剰に保湿することがニキビの悪化原因となる点に注意しましょう。

スキンケアに使うコスメは、皮膚への刺激が少なく毛穴をふさぎにくい「ノンコメドジェニック」という表記のあるものを使います。最近ではノンコメドジェニックテスト済みのメイク用品が登場して選択肢が増えてきているので、メイクする際にはそういったものを選ぶとよいでしょう。

(3)食生活はバランス良く

「チョコレートを食べすぎるとニキビができる」という話を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。しかし現在のところ、チョコレートを含めて特定の食品がニキビの要因になることは証明されていません。

ニキビができないように特定の食品を食べてはいけないということはなく、必要なのは皮膚をはじめ全身の健康を考えながらバランスの良い食生活を心がけることなのです。

日常生活のなかでできる対策を

ニキビにはできやすい場所があります。ニキビの予防や悪化を防ぐためには、日常生活のなかで「ニキビができやすい場所」への刺激を避けることや、適切な洗顔・洗浄によって余分な皮脂を取り除くことが重要です。

また、低刺激でノンコメドジェニックなコスメが続々と登場しており、今までいわれてきたようにニキビ肌の人もスキンケアやメイクを諦めなくてもよいようになっています。

ニキビは痕を残しやすい疾患です。ニキビをつくらないための努力はもちろん、できてしまった後も早いうちから皮膚科を受診して、改善や再発防止に努めたいですね。

(監修:横井彩、構成・文:株式会社ジーエムジェイ

※画像はイメージです

参考文献

日本皮膚科学会尋常性痤瘡治療ガイドライン改定委員会〔編〕:尋常性痤瘡治療ガイドライン2017.日本皮膚科学会誌127(6):1261-1302,2017.(https://doi.org/10.14924/dermatol.127.1261)

清水宏(北海道大学):あたらしい皮膚科学 第3版.中山書房,2018.
林伸和:日本香粧品学会誌40(1):12-19,2016. (https://doi.org/10.11469/koshohin.40.12)

林伸和, et al.:日本皮膚科学会雑誌111(9):1347-1355,2001.(https://doi.org/10.14924/dermatol.111.1347)

皮膚科Q&A(日本皮膚科学会ホームページ) 2020年10月20日閲読(https://www.dermatol.or.jp/qa/)

[*1] 林伸和, et al.:日本皮膚科学会雑誌111(9):1347-1355,2001.

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