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「いただけます」と「いただけます」の違いとは? 「頂く」との使い分け・例文

井上明美(ビジネスマナー・敬語講師)

「いただけます」と「いただきます」の違いを知っていますか? 同じような言葉でも、そこに含まれるニュアンスは変わってきます。今回は敬語講師の井上明美さんに、「いただけます」の意味や「いただきます」との違いについて教えてもらいました。

ビジネスなどお客様との会話で「~いただけます」という表現を使うことは多いものです。

この表現は正しいのか、どんな意味をもつのかなど、改めて考えてみると迷うこともあります。

ビジネスでもよく使う「いただけます」について詳しく見てみましょう。

「いただけます」は「~してもらえます」の謙譲語

「いただけます」は「~してもらえます」の謙譲語です。

「もらえる」は可能の意味をもちます。「もらう」の謙譲語は「いただく」で、「ます」は相手に対して丁寧に述べる意の丁寧語ですから、全体では「いただくことができる」という可能の意味の謙譲表現になります。

以下の例文で考えてみます。

・こちらの機械でもお使いいただけます

お客様にカードの使い方を説明するような場合です。

「使う」のはお客さまなので、「使う」を尊敬語にすると「お使い(になる)」となります。

そして「(使って)もらう」のは自分側の会社ですから、「もらう」の謙譲語「いただく」を使い、「お使いいただくことができる」という可能の形にしたものが「お使いいただけます」です。

他にも「いただけます」は、相手に「そうしていただくことはできませんか」という意味で「いただけますか」と使われることも多いものです。

相手にそうしてもらえないかとお願いするわけですから、いきなり切り出すのではなく「恐れ入りますが」「ご面倒を/お手数をお掛けして申し訳ございませんが」などのクッション言葉を一言添えることで、より丁寧になります。

「いただけます」と「いただきます」の違いは?

「いただけます」と似た言葉に「いただきます」という表現があります。

「いただきます」の基本は「いただく」です。「いただく」は先に述べたように「もらう」の謙譲語、そこに丁寧語の「ます」で、全体としては「もらいます」の謙譲表現となります。

前段で述べた通り、「いただけます」は可能のニュアンスを含みますが、「いただきます」は断定や命令のニュアンスがあります。その点が、両者の違いといえるでしょう。

以下の例文で考えてみます。

・お話しいただきます

「話す」のは、相手なので「話す」の尊敬語「お話(になる)」を用います。

そして、「お話ししてもらう」のは自分側なので「もらう」の謙譲語「いただく」を用いたのが「お話しいただきます」となります。

言葉としては正しいものですが、実際に相手に使う場面ではもう少し柔らかい表現に言い換えられることが多いものです。

相手に何かを発言、話してもらいたいというような場面では「お話いただきます」のみですと、時にやや命令口調のような、言葉の響きとしてもきつい印象を与えてしまうこともあるものです。

単に相手が話すということでなく、自分の都合でお願いする場面ならばなおさらですね。

そのような相手に話してもらいたいという場合には、相手の都合を伺う、お願いするような言い回しを用いた方がより丁寧です。

「いただけます」を使った例文

実際に「いただけます」を使った例文を、以下に掲げます。

前段でも述べた通り、相手に「~してもらえないか」とお願いする場合には「~していただけますか」を使うことができます。

「~してもらうことは可能ですか」という意味の謙譲語になるので、より丁寧な印象を与える表現です。

例文

・こちらのポイントもご利用いただけます

・ご家族皆さまでお使いいただけます

・メールをご確認いただけますと幸いです

・申し訳ありませんが、お水を注いでいただけますか

・恐れ入りますが、こちらの資料を○○様にお渡しいただけますか

「いただく」と「頂く」の使い分け

ちなみに、同じ「いただく」でも「いただく」と「頂く」で迷うことはありませんか?

厳密に一方のみが正しいという類のものではなく、何か物をもらうような場面では、「いただく」以外に、漢字表現の「頂く」や「頂戴する」が用いられることもあるでしょう。

補助動詞の場合は主に「いただく」

「部長にご指導いただく/指導していただく」など補助動詞として用いる場合は、通常平仮名が使われるものです。

辞書の解説でも次のように記述があるものもあります。

いただくとは
頂く×戴く

二 《補動》

①⦅「お」+動詞の連用形、「ご」+漢語、動詞の連用形+「て(で)」につけて⦆
「…てもらう」の謙譲語。他人が何らかの動作をすることを、その他人に頼む形で表す。
他人を一段高いものとして扱うので、多くの場合、丁寧な感じを伴う。
「お待ち―く」「ご検討―く」「もう帰って―こう」

②⦅「…(さ)せていただく」の形で⦆
相手に願って、自分のすることを許してもらう意の謙譲語。
「帰らせて―く」

二は、多くかな書き。
(学研プラス「学研 現代新国語辞典 金田一春彦編 改定新版」より一部引用)

動詞の場合は主に「頂く」

一方、「お土産を頂く」「食事を頂く」など動詞の場合には、漢字が用いられることもあります。

ただし、必ず漢字が用いられるかというと、この場合は「いただく」「頂く」ともにどちらも使われているようです。

また、同じ「いただく」と読む「戴く」ですが、何かをもらう意で「頂戴する」は用いられることがあっても、「戴」の字が常用漢字表にはない字ですので「戴く」は通常用いられることは少ないでしょう。

丁寧な言葉を選ぶことも心配りの一つ

いかがでしたか?

「いただけます」は「~してもらえます」の謙譲語で、可能のニュアンスを含むことに対し、「いただきます」は断定や命令の意味合いがあると紹介してきました。

「もらう」の謙譲語である「いただく」の使い方にもさまざまあるものですが、相手に何かを「してもらう・してもらいたい」と依頼するということは、相手に何らかの手間暇を掛けることです。

相手の都合や気持ちを伺いながらお願いするような姿勢で、より丁寧でふさわしい言葉を選ぶことも心配りの一つですね。

(井上明美)

※画像はイメージです

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