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「忖度」の意味は? 使い方や類語を解説

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

ネガティブイメージのある「忖度」という言葉。本来の意味を正しく理解できていますか? 今回は、「忖度」の意味や使い方、言い換え表現についてライティングコーチの前田めぐるさんに解説してもらいました。

2017年の流行語大賞に「インスタ映え」と共に選ばれた「忖度」。政治問題をきっかけに広く使われるようになった言葉ですが、一体どれほどの人が本来の意味を把握しているでしょうか?

「忖度」とは、どういう意味なのか? どう使うのが正しいのか? この機会に、理解していきましょう。

「忖度」とは「他人の気持ちを推し量ること」

まずは、「忖度」の意味を辞書で調べてみましょう。

そんたく【忖度】
(「忖」も「度」も、はかる意)
他人の心中をおしはかること。推察。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

以上のことから、「忖度」とは、他人の気持ちを推し量り、察することです。

「忖度」はネガティブな意味で使う言葉?

政治問題をきっかけに認知が広まった「忖度」。

ここでは、「忖度」がネガティブな意味合いで使う言葉なのかどうか、解説します。

本来「忖度」に否定的な意味合いはない

辞書にもあるように、「忖度」は本来「相手の気持ちを推し量る」という意味です。

そこに、必要以上に気を回したり、ましてや良からぬことをしたりというようなネガティブな意味合いはありません。

日常会話で使われている場面に接する機会は少なかったものの、書籍でも以下のように正しい意味で使われてきました。

・他人の腹中を忖度してみるほどの気力は、私にしても、最早尽き果ててしまった。
(引用:藤水名子『蒼き炎』祥伝社)

・その土地の土地柄を忖度し土地の文化を尊重して残した。
(引用:石原慎太郎『時の潮騒』PHP研究所)

文中の「忖度」はいずれも、「相手の気持ちを推し量る」という意味で使われています。

ネガティブな意味として使われ始めたきっかけ

2017年の森友学園問題がきっかけで、「忖度」の受け止められ方が大きく変化しました。

同学園の理事長が「口利きはしていない。忖度をしたということでしょう」と記者会見で言ったことから、権力のある人に配慮する、あるいはその結果社会に褒められない行動を取るという意味で使われることが急速に増えたのです。

さらに、2017年の流行語大賞受賞で一層知られるようになったことは、周知の通りです。

大阪の企画会社によって開発・販売された「忖度まんじゅう」の包装紙には大きく「忖度」の文字。その横には「人の心をおしはかること」と本来の意味がしっかり書かれています。

また、2017年以降、タイトルに「忖度」という言葉を使った書籍も多数出版されています。その多くが、「必要以上に気を回したり、良からぬことをしたり」というようなネガティブさを感じさせるタイトルです。

本来の意味とは異なる、否定的な意味合いで広まった「忖度」という言葉をシャワーのように浴びると、あたかもそれが正しい意味かのような錯覚に陥ってしまいそうです。

あるいは、そうでなくとも正しい意味で「忖度」を使うのに、少々勇気や工夫が必要になってしまっているのが、2017年以降の日本かもしれません。

「忖度」をメールや手紙で使う場合は要注意

「忖度」は、国語的には、メールや手紙、口頭など、どの手段でも使える言葉です。

ただ、対面と違い、メールや手紙では相手の顔が見えないため、注意が必要です。

誰に対しても使える言葉ですが、前述の通り、「必要以上に気を回したり、良からぬことをしたり」というネガティブなニュアンスで理解している人もいます。

そのため、「この人は正しい意味を知っている」と確信できる相手に限って使う方が、安全だといえるでしょう。

「忖度」は、どんな時に使えるの?(例文付き)

「忖度」という言葉は、権力者や上位者だけでなく、同僚や部下も含めて、広く相手の気持ちを推察するという意味で使います。

(1)周囲をもっと理解したいという気持ちを示したい時

例文

・リーダーとして、もっと現場の気持ちを忖度できるようになりたいと思う。

(2)取引先や仕入れ先の意を組むべきであると示したい時

例文

・T社の人たちのことももっと忖度すれば、より良い関係性が築けるはずです。

(3)研修などで「忖度」をコミュニケーションスキルの一種として伝えたい時

例文

・お客様に対して忖度できることは、接客の大切なスキルです。

研修などで使う時には、「“忖度”の正しい意味を知っていますか?」と、言葉の意味も一緒に伝えると良いでしょう。

多くの人が意味を取り違えている言葉なので、本来の意味を知った時のギャップで深く印象付けることができます。

「忖度」の言い換え表現

言葉というものは、使う側がいくら本来の意味で使っても、相手が正しい意味を知らなければ、誤解から関係性がねじれてしまいかねないことがあります。

メディアを通じて、誤解されたままの意味が広まってしまった「忖度」という言葉も、注意が必要です。

「お気持ち、忖度いたします」と伝えた相手が、意味を誤解し「私をそんな人間だと思っているんですか! 見損なわないでください」と関係性が悪化してしまうことにならないとも限りません。

そんなことにならないよう、「忖度」同様「推し量る」という意味合いを持つ言葉を、言い換えの表現と共に以下に紹介します。

「推察」

「他人の事情などを推し量ること」を意味します。

例文

・彼女の推察するスキルが高いのは、その奥に人としての思いやりがあるからかもしれません。

「拝察」

「察すること」の謙譲語。

自分が相手を察する場合に、目上の人に対して使います。

例文

・お気持ち、いかばかりかと拝察いたします。

「高察」

「察すること」の尊敬語。

目上の人が自分を察してくれる場合に使います。

例文

ご高察に心より感謝いたします。

「憫察(びんさつ)」

相手がこちらを察する際に「哀れんでする思いやり」という意味があります。

例文

・お恥ずかしいですが、ご憫察を乞う次第です。

「汲み取る」

「推し量って理解する」という意味です。

例文

・財務が苦しい実情を汲み取っていただきたい。

「推す」

「推量する」という意味です。

「推して知るべし」などとも使います。

例文

・もはや彼は一刻の猶予もないだろうと、私は推します。

本来の意味を正しく理解したい「忖度」

今回は「忖度」という言葉の本来の意味と使い方を紹介しましたが、いかがでしたか?

メディアを通じて、違う意味が広まってしまった「忖度」。

顔色をうかがったり、ご機嫌を取ったりするようなネガティブな意味合いに変化しつつある「忖度」ですが、「他人の気持ちを推し量ること」という正しい意味をしっかり理解し、本来の使い方を意識しましょう。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

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