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「人間関係に疲れる」そう思ったあなたを救う方法

笹氣健治(心理カウンセラー)

「人間関係が疲れる。つらい」と思っているあなたへ。心理カウンセラーの笹氣健治さんが、その原因や疲れたときの対処法、人間関係をラクに捉えるコツを教えてくれます。

私達は他人と関わらずに生きていくことはできません。中には、あなたに大きなストレスを与えてくる人もいることでしょう。

そういう人と関わり続けていると、精神的にどんどん疲弊していき、「人間関係が面倒くさい」「ほんと疲れる」という気持ちになってしまいます。

もしあなたが今そんなふうに感じているとしたら、このコラムを読んでぜひ役立ててください。

「人間関係が疲れる」と感じる瞬間

そもそも、人はどんなときに人間関係で疲れると感じるのでしょうか? まずは、よくあるケースを挙げながら確認していきたいと思います。

(1) 何度注意してもミスなどが直らないとき

部下や後輩に仕事を任せているが、何度も同じミスを繰り返す。注意する度に「すみませんでした」と素直に非を認めて謝るのだが、口先だけでいくら注意しても一向にミスが直らない。

「今後は注意します」という言葉も聞き飽きて、注意する際の口調もつい厳しくなってしまう。あまりのことに「ほんと疲れるわ」と思わず言ってしまうことがあるのではないでしょう。

(2)何かと口答えしてくる人がいるとき

中途採用の新人に仕事を教えていると、「前の職場ではこうだった」とか「このやり方じゃやりにくい」と、いちいち反論してくる人がいるときなども疲れるのではないでしょうか。

「うちの会社のやり方でやってください」といくら言っても、「でも」「だって」と口答えするし、ミスを指摘すると何かと言い訳してきて、ちっとも素直じゃない。この人とはもう関わりたくないと、うんざりして顔も見たくなくなってきますよね。

(3)よく意見が対立する人と一緒に仕事をするとき

馬が合わないのか、そもそも考え方が大きく違うのか、いつも意見が対立する人と一緒に仕事をしているとストレスが溜まることがあるでしょう。

どう考えてもこちらの意見の方が正しいと思うときも、相手は絶対に自分を曲げない。ついヒートアップして激論となることもしょっちゅう。

妥協して相手に合わせることも多く、その人と仕事するのは面倒くさいからイヤだと思うようになって、相手に対する諦めから自分の意見を主張しないようになることもあるでしょう。

(4)何かと干渉されるとき

仕事のやり方で細かい手順を強要してくる上司がいると、上司の指示だからと我慢してしまうことがありますよね。

結果的に同じだったらいいじゃないと思うのに、「イヤ、このやり方の方がミスがなくていいんだ」と譲らない。

他にも、自分なりに優先順位を考えて仕事のダンドリを考えてるのに、いちいちチェックして口出ししてくる。過保護な親か! と言いたくなるくらい干渉される毎日に、ほとほと疲れ果ててしまうことでしょう。

(5)気を使わなければならない人と一緒にいるとき

仕事以外でも、何事も自分の思い通りにならないとすぐ怒る気分屋の彼と付き合っているときなど、疲れてしまうのではないでしょうか。

待ち合わせに少しでも遅刻するとむくれる。レストランの店員の態度が悪いと言ってはイライラする。これでは楽しいはずのデートがちっとも楽しくない。何かと気を使わなければならない関係に疲れてそろそろ別れようかという考えにまで至ることも。

以上のようなケースに共通するのは、相手に振り回されているという点です。

つまり、マイペース、自由奔放、自分勝手、自己中心的といった相手と関わり続けなければならないときに、「人間関係が疲れる」と感じることが多いのです。

人間関係に疲れてしまう原因

人間関係に疲れてしまうのは、相手に振り回されているからだと説明しましたが、ではどうして振り回されてしまうのでしょうか? 主な原因として、次の3つが考えられます。

(1)価値観を押し付けられている

人はそれぞれ固有の価値観を持っていて、その価値観に従って物事を考え、行動します。

例えば、何かを買う際「質より量だ」という価値観を持っている人は、とにかく安価なものをたくさん買い込みますが、「量より質だ」という価値観の人は、価格よりも品質を重視します。

そして、人は得てして自分の価値観を他人にも強要してしまいます

「何でそんなに高いものを買うの? お金がもったいないじゃん!」「いやいや、安物買いの銭失いっていうでしょ? 高くても高品質な方がいいのよ!」

このように、価値観とは自分が信じて疑わない考え方ですので、他人も同じように考えて当然だと思ってしまうのは、仕方がないことだといえます。

異なる価値観の人同士が一緒に何かをするとき、立場が弱い人や穏やかな性格の人は、どうしても相手の主張に押し切られてしまいがちです。その結果、相手の価値観で物事が進むことになり、相手に振り回されてしまうことになるのです。

(2)相手の能力を過信している

注意しても直らない、いくら教えても覚えないといったとき、冷静に考えてみてほしいことがあります。それをできるだけの十分な能力を、相手は本当に持っているのでしょうか?

数字が得意な人もいれば不得意な人もいますが、数字が苦手な人にエクセルの関数の使い方を教えても、ちゃんと理解できなかったりします。

つまり、相手の能力を考慮せず、「これくらいは理解できるだろう」「これは簡単にできるだろう」という前提で接してしまっていると、相手ができないときに、「どうしてこんなこともできないのだろうか?」と思ってしまうことが起きるのです。

同じように、「これくらいは、きっと自発的にやってくれるだろう」と相手に期待するのも、本当にその期待を持ってもいいのかどうか、考えなければなりません。

相手の実際の能力以上のことを期待するのは、その人の能力を過信しているともいえます。過信しているために、「どうしてちゃんとやってくれないのだろう?」と悩み、相手に振り回されてしまうことになるのです。

(3)コミュニケーションスキルが不足している

相手にこうしてほしいと思っているのに、なかなかその通りになっていないとしたら、うまく意思疎通が取れていない可能性があります。自分の考えが相手にしっかり届いていない、ということです。

もちろん、言いにくい相手、言っても聞いてくれない相手もいるでしょう。しかし、どんな相手であっても、確実に届く適切な伝え方があるものです。

人間関係がこじれる原因のほとんどは、コミュニケーションに問題があります。逆をいえば、コミュニケーションを工夫することで、人間関係は改善できるのです。そういう意味では、相手に振り回されている原因は、コミュニケーションがうまくいってないからだといえます。

なぜコミュニケーションがうまくいっていないかというと、コミュニケーションスキルが不足しているためです。残念ながら、効果的なコミュニケーションの方法をほとんどの人がしっかり学んでいません。学ぶ機会が少ないので仕方がないのですが、だからこそ他人に振り回されてしまうことが起きてしまうのです。

切ってしまってもいい人間関係は?

人間関係に疲れているときは、その相手との接点を切ってしまうことも手っ取り早い解決です。

では、どんな相手なら切ってしまってもいいでしょうか? 例えば次のような相手の場合は、早々に縁を切ってしまった方がいいかもしれません。

(1)切ることができる相手

仕事上の相手など、関係性が深い相手はなかなか切ることはできません。

一方、無視しても問題が生じない相手や、絶縁しても弊害が少ない相手であれば、すぐに関わりを断って問題ないです。

(2)コミュニケーションが成立しない相手

人の意見を聞く気がない自己中心的な相手は、いくら努力しても関係改善は望めません。そういう人は、切れるなら早めに関係を切ったほうが得策だといえます。

(3)何度かチャレンジしてもダメだった相手

何度も注意した、何度も丁寧に教えた、それでも一向に態度が直らない相手も切っていい候補の上位に入ります。

今後、その人のことはあてにせず全部自分でやるくらいの覚悟でいた方が、忙しさは増しても精神的なストレスが減る分ラクかもしれません。

あなたの人間関係ストレス度をチェック

ここで、今のあなたが、どれくらい人間関係にストレスを抱えているのか、チェックしてみましょう。次の10項目で当てはまるものはいくつあるでしょうか?

□意思疎通がうまくいかない人(会話がかみ合わない人)が身近にいる
□関わり合うのが面倒くさいと思う人が身近にいる
□頼んだこと(指示したこと)をちゃんとやってくれない人と一緒に生活(仕事)をしている
□あれしろ、これしろ、こうした方がいい等、何かと干渉してくる人が身近にいる
□精神的に追い込まれるようなプレッシャーをかけてくる人が身近にいる
□意見が全く異なる人と一緒に生活(仕事)をしている
□威圧的で強引な人が身近にいる
□何かと気を使わなければならない人が身近にいる
□その人のことを考えると、イライラしたりムカムカしたりする人が身近にいる
□その人のことを考えると、胃が痛くなったり憂うつになったりする人が身近にいる

さて、いくつ当てはまりましたか?

診断結果別のストレス対処法

先ほどの、ストレスチェック項目の当てはまった数から、あなたのストレス度と対処法を見てみましょう。

0~2個当てはまる【ストレス度10%】

それなりにストレスはあるかもしれませんが、心にまだ余裕がある状態です。

あなたに適切なストレス対処法(1)

この機会にコミュニケーションスキルを学んで、問題の相手との関係改善に取り組んでみるのもいいでしょう。

まずは、相手の理解度に合わせて物事を伝える練習をしてみましょう。

3~5個当てはまる【ストレス度40%】

多少のストレスを抱えているようですが、生活に支障が出るレベルではないようです。

あなたに適切なストレス対処法(2)

問題の相手と離れているときに、うまく気分転換をして心をリフレッシュするようにしましょう。運動をしたり趣味を楽しんだりする、他には入浴やマッサージでリラックスするなどがおすすめです。

6~8個当てはまる【ストレス度70%】

問題の相手のことが常に頭から離れず、イヤな気分でいることが多いのではないかと思います。

あなたに適切なストレス対処法(3)

親身になって相談に乗ってくれる友人や家族に話を聞いてもらって、ストレスを溜め込まないようにしましょう

相手の行動に左右され過ぎず、時にはスルーすることを心掛けてみましょう。

9~10個当てはまる【ストレス度90%】

ストレスの蓄積により、憂うつな気分が続き、睡眠も十分に取れていないことが心配されます。

あなたに適切なストレス対処法(4)

可能ならカウンセリングを受けて心を安定させるとともに、周りの人のサポートを受けながら、問題の状況を変えるように今すぐ取り組みましょう

あなたの心身が健康であることが第一。ストレスの対象とは距離を取ってください。

人間関係をラクに捉えるコツ

コミュニケーションスキルを磨くことで人間関係の改善は図れますが、実際にはそんな簡単なことではなく、腰を据えて何度も根気強く取り組み続ける必要があります。

ですが、そんな余裕はない、とにかく早くラクになりたい、という場合は考え方を変える取り組みが役に立ちます。そのための3つの方法をご紹介しますので、ぜひ試してみてください。

(1)相手に同化してみる

人間関係に疲れているときは、「この人は一体何を考えているか分からない」という感覚になっています。理解不能な人が相手なので、二人の間の溝をどうやって埋めていけばいいか、分からなくて当然です。

そこで、相手のことを理解する取り組みが有効となります。相手のことを理解するためには、相手を外から見ていてはダメです。相手の中に入る、つまり相手そのものになってみるのです

例えば、その相手が同じ職場で働いている場合、始業前か後で周りに誰もいないときに、その人の席に座ってみます。その人の席からその人が見ている世界を体験してみるのです。

誰もいないあなたの席を見て、そこにあなた自身が座っていると想像してみましょう。そこであなたはどんな顔でこちらを見ているでしょう? あなたがいつものように何かを言ってきたと想像し、それを聞いているとどんな気持ちが湧き上がってきたかを感じてください。

「もうちょっと分かりやすく言ってくれればいいのに……」「もっと優しい口調で言ってくれればいいのに……」といった気持ちが湧いてくるかもしれませんし、「こんな職場は辞めたいな……」といった意外な言葉が浮かんでくるかもしれません。

そうやって相手に同化してみることで、「この人はこんなふうに感じているのかもしれない」と、いろいろな発見があるはずです。

これまでは自分の立場でだけ相手を見ていましたが、こうやって相手の立場を体験することで、もしかしたら自分の疲れた気持ちに少し変化が生じるかもしれません。そして、こういうふうに接したらいいかも、といったアイディアが思いつくかもしれません。

この取り組みにチャレンジしてみて、何か気付くかもしれませんし、何も気付かないかもしれませんが、そこは問題ではありません。とにかくやってみる、そして何でもいいから感じてみる、そのことが重要です。

(2)人生を俯瞰してみる

人間関係に疲れているときは、今のこの状況にしか目が向いていません。つまり、視野が狭くなっているのです。

そこで、視野を拡大して見る取り組みが役に立ちます。次のことを考えてみてください。

その人のことで疲れる状況は、どれくらいの期間続いてきましたか? また、今後どれくらい続きそうでしょうか? 人生80年として、その人と一緒の期間は、人生のどれくらいを占めるでしょうか? 2~3年くらいの短期間でしょうか? それとも数十年にもわたって長期的に続くものでしょうか?

こうやって人生を俯瞰してみると、フッと心に余裕が生まれてくることに気付くかもしれません。「もう少し頑張ってみようかな」とか「しっかり話し合ってみようかな」といったことを思うかもしれません。

その人と一緒の期間をどう過ごすかは、あなた次第です。ひたすら耐えるか、何かしら対処してみるか、この試練を自分の成長の機会として生かそうとしてみるかなど、自分の人生は自分で決めていいのです

そうやって主体的に生きたとき、今どんな選択をしても、将来振り返ってみたときに「我ながら良い選択をしたな」と、きっと思えるはずです。

(3)自分と相手の「期待」について考えてみる

心理学者フレデリック・S・パールズが作った「ゲシュタルトの祈り」という詩があるのですが、人間関係で悩んだときには、この詩を声に出して読んでみることがおすすめです。

何度も口ずさんでいると、何か大切なことにきっと気付くはずです。その気付いたことを生かして、今後の自分の生き方を見つめ直してみるのもいいでしょう。

『ゲシュタルトの祈り』
私は私。あなたはあなた。
私がこの世に生きているのは、あなたの期待に応えるためではない。
あなたがこの世に生きているのは、私の期待に応えるためではない。
私は私。あなたはあなた。
もし縁があって、私達が互いに出会えるならそれは素晴らしいことだ。
しかし出会えないのであれば、それも仕方のないことだ
フレデリック・S・パールズ

期待を持ちつつ、期待にとらわれないように生きよう

お互いに期待を持っているから、悩みが生じ、ストレスを抱えます。では、期待なんか持たない方がいいのかと言うと、そんなことはありません。期待し合うからこそ、互いに問題点を指摘し合ったり、期待に応えようとして成長の努力をしたりするのです。

大切なのは、期待を持ちつつ、期待にとらわれないこと。そのバランスをうまく取りながら、いろいろな人と素敵な人間関係を築いていけたらいいですね。

(笹氣健治)

※画像はイメージです

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