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加虐心とは? 意味と使い方&いじめたい気持ちが生まれる理由

高見綾(心理カウンセラー)

加虐心とは、他人をいじめたり、苦しめたりしたい気持ちのこと。このように、誰かをいじめたいという感情はなぜ生まれるのでしょうか。加虐心が生まれる原因と感情の対処法を、心理カウンセラーの高見綾さんが解説します。

加虐心という言葉をご存知でしょうか。

加虐心とは、他人をいじめたり苦しめたりしたいという感情を表す言葉です。

「いじめたい気持ち」はなぜ生まれるのか、またその感情はわたしたちの誰しもが持つ可能性があるものなのか。加虐心を抑えるための方法とともに考えていきましょう。

加虐心とは?

加虐心とはどのようなものなのか、まずか言葉の意味や使い方を見ておきましょう。

言葉の意味と読み方

加虐心と書いて「かぎゃくしん」と読みます。加虐とは、デジタル大辞泉(小学館)によると、「むごいしうちを加えること」「いじめ苦しめること」を指しています。

加虐心は「相手を傷つけることでダメージを与えたい、という心情」を表しているわけです。

わたしたちは、心から満たされていて気分のいいときには、わざわざ「誰かをいじめたい」とは思わないものです。いじめたい、傷つけたいと思うときは、心のゆとりがないときであったり、満たされない思いを抱えているときだったりします。

また、置かれた環境や役割などによっては、こうした歪んだ心理が生まれてしまう可能性もあります。

アメリカのスタンフォード大学の心理学者が行った囚人と看守の実験では、看守の役になった人が加虐的な行動を起こしやすくなるという結果が出ています。

つまり、強い立場にいると、弱い立場の人をいじめたくなる心理が生まれるケースもあるということ。したがって、いじめたい気持ちは状況次第で誰でも持つ可能性のある感情であるといえるのではないでしょうか。

類語

加虐心と似たような意味で使える言葉には以下のようなものがあります。

・残虐
・サディスティック
・虐待

対義語

加虐心の対義語には、いじめられること、自分をいじめるといった意味を持つ言葉が挙げられます。

・被虐(ひぎゃく)
・自虐

言葉の使い方(例文)

加虐心の使い方を、例文と共に見ておきましょう。

・サディスティックな映画を見ると、加虐心を煽られてしまうことがあり困っている。

加虐心が強い人と一緒にいると傷つくことが多い。

なぜ加虐心が生まれるの?

では、この加虐心が生まれる理由をよりくわしく、場面別に見ていきましょう

恋愛の場面

「相手の価値を落とすことで自分が優位に立ちたい」

自分に自信がなかったり、劣等感があったりすると、相手(恋人)を攻撃して傷つけることによって、自分の価値を相対的に高め、優位に立ちたいという心理が働くケースがあります。

例えば恋愛相手に対して「おまえはダメなやつだ」と繰り返し言うことで恋人から自信を奪い、「おまえみたいなやつと付き合ってやるのは俺くらいしかいないぞ」などと言って、自分から離れていかないようにコントロールしようとするなどです。

仕事の場面

「立場の弱い人を攻撃することでストレスを解消したい」

仕事でプレッシャーを感じていたり、多忙によりストレスをため込んでいたりすると、不安感やイライラなどのストレスを自分の中で解消することができなくなり、部下や後輩など、自分よりも立場の弱い人をターゲットに、いじめて発散するパターンが見られます。

ターゲットが傷ついたり弱気になったりしている様子を見ると、自分の思いのままに相手をコントロールできていることが気持ちよく感じられ、ますますいじめたい気持ちがエスカレートしていくことも。

友達関係の場面

「いじめる側になることで自分の強さを示したい」

周りと十分にコミュニケーションが取れていなかったり、自分は不幸だと感じていたりすると、「自分と同じようなひどい気分を味わわせてやりたい」という歪んだ気持ちが芽生えてしまうことも。

「自分の存在を認めてほしい」「自分には価値があるとわかってほしい」という気持ちが根底にあることも多く、いじめをすることで自分の強さや能力などを誇示しようとします。

また、過去にいじめられていた人がトラウマから自分を守るために、いじめる側に回ってしまうケースもあるようです。

自分の中の加虐心を抑えるには?

誰にでも芽生える可能性のある加虐心。とはいえ、実際に誰かに危害を加えることは、あってはならないことです。

人を「いじめたい」という負の感情を自分の中で抑えるには? ここでは、加虐心の抑え方を整理していきましょう。

(1)加虐心があることを客観的に観察する

自分の中に加虐心が芽生えたとき、多くの人はその気持ちをどうやって扱ったらいいかわからず困惑することが多いと思います。

「そんなこと思っちゃいけない」と蓋をしそうになったり、「こんなふうに感じる自分が怖い」と思ったりするかもしれませんが、いじめたい気持ちがあるのをなかったことにしないで、「今、傷つけたいって思っちゃったな」と客観的に受け止めてみましょう。

すると、いじめたい気持ちから距離を取ることができるので、少し冷静になれるはずです。

(2)いじめたくなる理由を知る

十分に心が満たされているときは、加虐心はわかないものです。

加虐心が芽生えたのには、なんらかの原因があるはずです。なぜいじめたいと思ったのかを、自分なりに分析してみましょう。

不安やプレッシャーなどのストレスがたまっていたのでしょうか、それとも劣等感を刺激されたからでしょうか。ノートに書き出したり、信頼できるカウンセラーなどに話したりして原因を探してみましょう。自分の心理パターンが見えてくるはずです。

(3)被害者にならない

 

“被害者”にならないことは重要です。

「誰かのせいで」という被害者意識があると、「だから、相手をいじめてもいい」「相手は傷ついて苦しめばいい」というような、加虐心を煽るような発想に陥りやすくなります。

また、自分の感情に責任を持つことは、芽生えた加虐心を抑えるために、とても大切な心の法則です。

誰かを見て腹が立ったとしても、イライラした感情は自分のものです。相手を無理やり変えようとすることで、自分の感情を解消しようとしない意識が必要です。

(4)自分を褒めて自己肯定感を上げる

今の自分が頑張っていることを褒めたり、ねぎらったりしてみましょう。

できるだけ褒めるハードルを下げておくことがポイントです。「毎日5個、寝る前に自分を褒める」などルールを決めて継続すること。自己肯定感を上げていくのには、ある程度の時間がかかりますが、加虐心を抑えるのに効果的な方法です。

地道にコツコツ取り組んで自分に自信が持てるようになりましょう。

参考記事はこちら▼

心理カウンセラーの高見綾さんに、自己肯定感を低くしてしまう言動と合わせて詳しく解説してもらいましょう。

(5)ストレス解消方法をたくさん見つける

加虐心が芽生えるときは、イライラや不安、プレッシャーなどのストレスを上手に発散できずにため込んでしまっていることが多いです。

ジョギングや筋トレなどの運動をする、大きな声で歌う、おいしいものを食べる、おしゃべりをする、好きな音楽をかけてドライブする、自然の中に出かけるなど、日ごろからストレス発散方法をいくつか持っておくことがおすすめです。

「自分はストレスをため込みやすいタイプのようだ」と自覚をして、こまめにリフレッシュしましょう。

加虐心を抑えるためには心のゆとりが必要

多くの人は、自分に加虐心が芽生えたら、そのどす黒い感情をどう扱ったらいいのかわからずに戸惑うものです。

わたしたちは心から満たされていて気分のいいときには、わざわざ人を傷つけたいと思ったり、いじめたいと思ったりはしません。いじめたい気持ちが生まれるのには、それなりの理由や原因があるものです。

自分の中の原因としっかり向き合いながら、心のゆとりを持つようにすることで周りの人と良い関係を築いていきたいものですね。

(高見綾)

※画像はイメージです

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