心が折れる瞬間とは? 心が折れたときの立ち直り方
生きていれば誰しも「心が折れる瞬間」があるものです。仕事であったり、学校生活であったり、さまざまな場面で心が折れることがあります。では、そうした心が折れた状況から立ち直るにはどうすればいいのでしょうか? 心理カウンセラーの浅野寿和先生に話を聞きながら、「心が折れたときの立ち直り方」を探ります。
「心が折れる」ってどんな意味?
「心が折れる」とは、目標を達成しようとする意欲を失ってしまったり、志半ばで諦めてしまったりすることを意味します。「心」は前向きな言動を支えているもの。その心が折れて支えがなくなると、前向きな気持ちを維持できなくなりますよね。
心が折れてしまう原因とは?
では、心が折れてしまう原因にはどんなことが考えられるのでしょうか?浅野先生に聞いてみました。
心が折れてしまうのはなぜ?
心が折れる最大の理由は「自分への失望」です。たとえば、以下のようなことが挙げられるでしょう。
男女関係
失恋・離婚・死別・浮気の発覚は心が折れてしまう代表的な原因です。自分の好意を伝えたけど断られた。愛し合っていると思っていたパートナーが実は他の異性と関係を持っていた、などが原因で自分に対しても失望し、心が折れてしまうのです。
職場の対人関係
信頼していた上司・同僚・仲間の裏切り・心変わりなどです。信頼していた仲間が自分の評価を下げるようなうわさを流していた、など自分が信頼していた人からの裏切りに遭うと、人への不信感が強まります。それと同時に自分にも失望し、心が折れてしまいます。
私生活での対人関係
典型例は「いじめ」です。周囲からの無視、陰口、陰湿な攻撃などで「自分など存在する価値がないのではないか」と感じてしまいます。人は誰かからいじめを受けると、「いじめられた私に何か悪いところがあったのでは?」と、必要以上に自己否定を強めます。その結果、自分に存在価値を感じられず心が折れてしまうのです。
日常の中での失敗
たとえば、絶対に失敗してはいけない状況での失敗など、多大な影響を及ぼすような大きなミスに直面すると心が折れやすいですね。「悔やんでも悔やみきれない」と絶望的な気分になります。また、今までできたことが「できなくなった」ときも心が折れやすいもの。これらはすべて自分への失望です
心が折れてしまいやすい人の特徴って?
心が折れる大きな原因は自分への失望ですから、「自分に失望しやすい心の状態」の人は心が折れやすいですね。
具体的には
劣等感が強く、失敗やできないことをすぐに恥じる
人を頼らない、自分のことを隠す
些細なことでもついうそをついてしまう
不安やストレスをため込み、我慢する
休めない、休むと言い出せない
完璧主義で何事も白黒はっきりさせようとする
自己否定が強めでマイナス思考
挫折経験が少ない優等生タイプ
思い込みが激しく、不安の先取りばかりする
物事を考えすぎる、先延ばしにしがち
などです。言い換えれば、「日頃から心の中で人とのつながりを感じない状態」になっている人は、心が折れやすいといえますね。
心が折れやすい人と折れにくい人の差は?
「自分は誰のためにもなっていない」と感じている人は自分に失望しやすく、心が折れやすいといえます。反対に「自分は人からの求めにしっかり応じられている」といった感覚があれば、気持ちが前向きになり、心も折れにくくなります。
たとえ自分が人と同じ努力をしていても、日頃からストレスや疲労、不安をため込み、無理や我慢をしていると、心の余裕を失ってしまいます。そうなると「自分のことで精一杯」の状態になります。この状態が続くと心が折れやすくなります。
一方で普段から心に余裕を持ち、「自分はできる」「人のためになっている」と感じている人は、たとえ逆境にあっても行動を起こし、そこから抜け出すことができるのです。
心が折れてしまったときの対処法
心が折れてしまったときは、どのようなことを意識すればうまく乗り越えることができるのでしょうか? 「心が折れてしまったときの対処法」を浅野先生に聞いてみました。
心が折れてしまったときの立ち直り方とは?
(1)つらい気持ちを抱え込まず人に話す
まずは信頼できる人に共感してもらうことです。つらい気持ちを人に話して理解してもらうことで、つらい感情から解放され、徐々に楽になります。心が折れやすい人は、自分のつらさを人に話すことを「恥や失望」と考えてしまう傾向が強いもの。それが「自分に失望する理由」になることが多いので、自分の気持ちを素直に表現する機会を持ってみてください。
(2)思い切って休む
たとえば、足を骨折したまま走れば当然ながら悪化しますよね。心が折れたときも同じで、心の手当てをすることが大切です。心が折れてつらい気持ちがあふれている場合は、思い切って長期の休みを取ることも有効。特に「旅行に出かける」など、場所を変えて今の気分を変えることは、心が回復しやすい行動です。
(3)「何事も60%程度の力で」を意識する
心が折れたときはしっかり休むことも大切ですが、まったく何もしないと「私は何もしていない」と失望感に苦しめられることもあります。そんなときは、「何事も60%程度の力で行う」ことを意識してみましょう。60%の力でもそれなりの行動が取れますから、無理をせずできることに取り組みましょう。そうすると「何かをしている」という感覚を積み重ねることができ、それが心の回復につながるのです。
(4)今(今まで)の自分にOKを出す
たとえ心が折れやすい自分であっても、それを頭ごなしに否定せず、自分に「OK」を出しましょう。自分を否定すると自分への失望がさらに強まります。それまでも自分なりにがんばってきたはずなのですから、自分に厳しく当たらず、優しく認めてみるといいですね。
強い心を作るトレーニングはある?
目指すべきは「鉄のような心」ではなく、「打たれてもしなる柳の木」のような心です。鉄の心であっても折れることがありますし、その場合は一度折れると元には戻らないことも多いのです。「柳の木のような心」を作るには、以下のようなことを意識しましょう。
(1)完璧を求めるのではなく、今できていることに意識を向ける
普段から自分に完璧を求めている人は、「今の自分は完璧なのか」と常に自分を疑っている状態です。そのようにすごしていれば、誰だって心が折れやすくなります。完璧を求めるのではなく、今できていることに意識を向け、それでOKだと思うよう習慣づけましょう。「ここまでしかできなかった」ではなく、「今日はここまでできた」とポジティブに意識するといいですね。
(2)自分軸で物ごとを考える
自分に失望したくない人ほど、「相手がどう思っているのか?」と他人からの評価を基準に物ごとを考えています。そのため、普段から「自分の軸」で物ごとを捉えることを習慣づけてみましょう。自分の思いを大切にしながら、他の人の思いに応えることが、失望した心を癒します。
(3)感謝を表現する機会を増やす
たとえば、気持ちのいい挨拶や人への感謝の気持ちを持つことは、心にいい効果をもたらし、折れにくい心を育みます。家族やパートナー、職場の同僚などはもちろん、コンビニのレジでも店員さんに「ありがとう」と伝えるなど、感謝する習慣を取り入れてみてください。実際に声に出すことがポイントですよ。
打たれてもしなる「折れにくい心」を身につけよう
劣等感が強く失敗を恥と考える人や、なかなか人に頼れない人、また完璧主義やマイナス思考の人は、心が折れやすいとのこと。つまり、自分に厳しく、感情を素直に吐き出せない人は心が折れやすいといえますね。何かと心が折れてしまう人は、当てはまっていたりしないでしょうか。折れない心を持つには、そうした自分への厳しさを和らげたり、完璧思考を変えたりすることが重要。理想を高く掲げることも大事ですが、心が折れるのを避けるためにも、ときには「このくらいでいいか」と気楽に考えることが必要なのかもしれませんね。
(文:浅野寿和、構成:中田ボンベ/dcp)
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