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態度に出したくない? 怒りを鎮める方法○つ

熊谷佐知恵(心理カウンセラー)

はらきよか

職場や家庭で「怒る」ことは誰しもが経験しているはず。でもあとで振り返ってみると、怒ってる時間って、なんだか損した気分になりますよね。とはいえ、突然燃え上がってしまうのが「怒り」という感情のやっかいなところ。理想は感情をコントロールできるようになることだけど、それって難しい……。せめて、怒りを鎮める方法だけでも知りたい! そこで、心理カウンセラーの熊谷佐知恵さんに、怒りのメカニズムと役割、そして怒りを鎮める効果的な方法についてレクチャーしてもらいました。

なぜ怒る? 怒りのメカニズムとは

まずは、怒りのメカニズムについて解説してもらいました。

「感情の蓋」としての怒り

心理学では、「怒りは感情の蓋」といわれています。わたしたちの感情は層になっていて、感じていることを我慢したり抑圧しているとき、意識の一番上にあるのが怒りなんです。言い換えれば、怒りを覚えやすい状態のときというのは、感情的になることや感情を感じること、表現することを避けた結果ともいえます。

怒りが感情の蓋ならば、怒りの下には、まだ感じられていない悲しみや痛みが隠れているのかもしれません。本人が自覚せず、未完了のままになっている感情は、潜在意識下に抑圧され、蓄積されています。似たようなシュチュエーションや出来事に、たびたび怒りを覚えるのは、これまで蓄積していた感情を処理する機会がやってきているともいえるのです。

それゆえに、怒りを自覚し始めた頃というのは、潜在意識と表面意識との間で大きなギャップを感じることがあります。感情が溢れてきてしまったときにどう対処していいかわからない、といった不安や怖れ、葛藤も起こりやすい状態といえます。

「助けを求める声」としての怒り

一方、「怒りは助けを求める声」ともいわれています。わたしたちが怒るのは、いっぱいいっぱいで心に余裕がないときだからです。

また怒りは、防衛手段として自分の正当性を主張するような状態をつくることもあります。意外かも知れませんが、自分の正当性を主張しなければならないような状態というのは、「自分はまちがっているのではないか?」と怖れを感じている状態ともいえるのです。

心理的に追い詰められ極度の緊張状態をあらわすことわざに「弱い犬ほどよく吠える」というのがあります。つまり、吠えている犬は怖いので「これ以上近づくな!」「俺って怖いんだぞ!」と威嚇するわけです。

怒りが収まらない状態というのは、このように心に余裕がなくて本当は助けが必要なときともいえます。もしかしたら、日頃から自分を責めているのかもしれません。あるいは自分の正当性を主張しなくてはならないくらい、自信がないということもあるでしょう。

「裏切り」に対しての怒り

期待が裏切られたとき、叶わなかったときというのも怒りを感じやすいシュチュエーションです。私たちは、「こんな自分を見せたら嫌われるかも」といった怖れがあるときには怒りを表現することは難しいのですが、期待を寄せるくらいどこか深いレベルでの信頼やつながりを感じる相手には怒りをぶつけることもあるかと思います。

「わかってほしい」「助けてほしい」「愛してほしい」というような自分のニーズを向けられる相手ほど、遠慮や手加減を忘れてしまうものなのかもしれませんね。

怒りを鎮める方法5選

怒りのメカニズムがわかったところで、その怒りに対する解決策、怒りを鎮める方法を教えてもらいました。

怒りは態度に出してもOK?

一般的には、「特定の誰かに嫌な気分にさせられた」と解釈されることの多い怒りの感情ですが、「怒りを出すか、出さないか?」と悩まれる方の多くは、前提として、怒りに限らず感情的に生きることを怖れていたり、禁止しているようなところがあります。

怒りっぽい人=面倒くさい人
怒り=やっかいなのも

このように考えているのならば、自分自身が怒りを態度に出してしまったあとには、怒りが鎮まるというより自己嫌悪に陥ってしまうかもしれません。

それよりも、まずは「いつの間にか、わたしは感じることや感情を表現することを避けてきたのかもしれない」と受け止めなおしてみてください。怒りがあるときは、意識の上では「あの人はまちがってる!」と反発したり抵抗したりしながら、自分の正当性の声が沸きあがるとき。その心の声を聞き逃さないことがポイントです。

先述したように、感情の蓋である怒りの目的は、あなた自身がまだ感じきれていない未完了な思いがあることを自覚させるため。「わたしは○○に対して怒っている」だとしたら、この○○の部分って一体どんなことを指すのでしょうか? その理由や言い分をあなた自身が自覚する必要がありそうです。

怒りを態度に出したなら、相手にはあなたが怒っていることは伝わるかもしれません。けれども何に対して怒っているのかをあなた自身がよくわかっていなければ、相手に正しく伝えることも理解してもらうことも難しいでしょう。

ここは、感情的知性を高めるチャンス! と腰を据えて自分自身の感情と向き合う態度を身につけてしまったほうが、真の解決につながります。さらに、同じような問題に悩まされることがなくなります。

内なる怒りを鎮めるには、あなた自身が自分の気持ちに寄り添えるようになることが何よりも大切です。感情はしっかりと感じきることで、「鎮める」のではなく「鎮まる」のです。

怒りを鎮める5つの方法

日頃から無理や我慢しない

最初は些細なこととやり過ごせているつもりでも、塵も積もればやがて大きな不満へと膨らんでいくもの。「なんでいつも私ばかり!?」と思うのなら、ひとりで抱えずに誰かに手伝ってもらう、お願いするなど、人との対等な関係性を身につけておきましょう。

予定を詰め込み過ぎない

忙しさや時間的ゆとりのなさが、あなたの心の余裕を奪っていませんか? 許容範囲が少ないダムはすぐに水が溢れてしまうように、心にもゆとりが必要です。リラックスしたりのんびりできる時間を意識的につくり、心のリズムを整えることを心がけてみましょう。

感情に寄り添う時間を持つ

怒りをやり過ごした日には、どんなことが許せなかったのか、怒りが教えてくれる言い分やその下の悲しみにそっと耳を傾けてあげましょう。どんなことをわかってもらいたかったのか、まずはあなた自身が知ってあげてくださいね。

自分のニーズに正直になる

自分のニーズに気づいたら、それを表現することにチャレンジしてみましょう。怒りっぽい人というのは、実は甘えることに禁止や苦手意識や恥ずかしさがあります。その内なる抵抗が遠慮や我慢になっていませんか? 人に甘えたり、頼るときの抵抗を自覚することで怒りは収まり、次の課題に取り組む意欲へと転化させることも可能なのです。

内なる女性性を育んでいこう

感受性の豊かさは、本来、女性性の持つ得意分野なのです。豊かな感情を恩恵として受け取れるようになるためにも、自分の弱さと戦わず、大切に育んでいきましょう。与えることばかりでなく受け取ることにも意欲的になり、自分のニーズさえも素直に正直に表現できる風通しのよい関係をまずは心がけてみてくださいね。

「怒り」の感情に正面から向き合うことが大切

自分が何に対して、どんな理由で怒っているのか、それを考えるだけでも少し怒りが鎮まる気がします。何事も自分だけで抱え込まず、常に心にゆとりを持っていれば、怒ってしまうことも少なくなるはず。それでもイライラしてしまうときは、怒りの感情を相手にぶつけるだけでなく、怒っている自分に正面から向き合うことが大切。今回紹介した怒りを鎮める方法を、ぜひ心がけてみてください。

(文:熊谷佐知恵、構成:はらきよか)

※画像はイメージです

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