結婚して仕事を辞めたい! 辞めるリスクと専業主婦になれる夫の年収
「結婚したら仕事を辞める! 専業主婦になりたい!」と考える女性もいるはず。でも、仕事を辞めることにデメリットやリスクはないのか、既婚者やFPの石川福美さんのアドバイスを紹介。現実的に、専業主婦になることが叶う相手の年収ラインも解説します。
結婚したら仕事を辞めて専業主婦になりたいと考える女性もいるのではないでしょうか? でも仕事を辞めるって本当にいいの? 収入がなくなる意外に実は損なコトもたくさんあるようですよ。既婚者やFPの石川福美先生にアドバイスをもらいました。
<目次>
結婚を機に仕事を辞めたい女性は減少している
厚生労働省の21世紀成年者縦断調査(平成24年成年者)の第4回21世紀成年者縦断調査(2016年11月22日公表)によると、ここ10年で結婚を機に「仕事を辞めたい」と考えている女性は減少傾向にあるようです。

厚生労働省の21世紀成年者縦断調査(平成24年成年者)の第4回21世紀成年者縦断調査(2016年11月22日公表)より
・結婚した後も続ける……41.8%(14年)/44.6%(24年)
・結婚を機にやめる……21.9%(14年)/17.1%(24年)
・考えていない……34.8%(14年)/37.1%(24年)
「独身女性の結婚後の就業継続意欲の状況」を見ても、14年には41.8%でしたが24年には44.6%が「結婚した後も続ける」と回答。微増ですが増加傾向にあります。「結婚を機にやめる」と回答した割合も、21.9%から17.1%と減少しています。
実際に結婚を機に仕事を辞めた女性の割合
実際に結婚を機に仕事を辞めた女性は、どれくらいいるのでしょう。既婚女性にアンケート調査してみました。
Q.結婚を機に仕事はどうしましたか?
第1位「辞めて専業主婦になった」(42.33%)
第2位「フルタイム勤務を続けた」(37.76%)
第3位「パートタイム勤務に切り替えた」(12.13%)
第4位「結婚前からパートタイム勤務でそのまま続けた」(7.78%)
※有効回答437件
およそ4割以上の女性が、結婚をきっかけに仕事を辞めたようです。とはいえ、「フルタイム勤務を続けた」女性も4割弱おり、全体的には半数以上が何らかの仕事を結婚後も継続しています。
●結婚で仕事を辞めた理由
辞めて専業主婦になったと答えた既婚女性に、仕事を辞めた理由について教えてもらいました。
<妊娠していた>
・「すでに妊娠していたので、ひとまず子育てに専念したかったから」(31歳/食品・飲料/販売職・サービス系)
・「妊娠していたので、そのまま子育てに突入したから。子どもが小さいうちは、家にいてしっかりと子育てをしたいと思ったので仕事はやめた」(37歳/その他/その他)
妊娠していた場合、仕事を続けたくても続けられないことは残念ながらあります。授かり婚などの場合、結婚したからというよりも、妊娠のためという人もいるようです。
<結婚と同時に引っ越した>
・「結婚による引っ越しで職場から遠いところに住むことになったから」(31歳/その他/その他)
・「遠距離での結婚になったから、そのまま嫁いで辞めた」(36歳/その他/その他)
新居を夫の職場の近くに構えたり、そもそも遠距離恋愛の末に結婚したりすると、物理的な距離で仕事は辞めざるを得ませんよね。彼氏の転勤がきっかけで結婚した人もいるかもしれません。
<仕事と家事の両立が厳しかった>
・「家事に集中したかったからです。同時にできないタイプだから」(35歳/その他/その他)
・「介護の仕事をしていて、かなりの重労働だったため、家事との両立は難しいと思ったから」(32歳/その他/その他)
結婚して家事と仕事を両立させるのは、とても大変なことです。仕事内容がハードな場合、家事がおろそかになってしまうのが目に見えています。夫と話し合った上で、家庭に入った人も多そうです。
<もともと専業主婦志望だった>
・「もともと結婚したら専業主婦になりたいと思っていましたし、結婚相手が違う市の人だったので、結婚を機に辞めました」(39歳/その他/その他)
・「早く仕事をやめたかったので。結婚したら専業主婦になりたかったから」(32歳/その他/その他)
もともと専業主婦志望だった人もいました。「働きたくない」という意見も。
<子どもが早く欲しかった>
・「子どもが早くほしかったから。いつでも産めるように」(39歳/その他/その他)
・「子どもが早く欲しかったので辞めました」(27歳/その他/その他)
子どもが早く欲しくて仕事を辞めた女性も。妊娠したら続けられないような仕事だったり、育休制度のない職場だったり、理由はさまざまでした。妊活の時間のために仕事を続けられないケースもありますよね。
★結婚で仕事を辞めた理由まとめ
みなさん、いろんな理由で仕事を辞めたようですね。本当は続けたいと思っていても、職場の環境だったり、仕事と家事を両立させるのが厳しくて辞めた人もいれば、専業主婦になりたくて辞めた人もいるようです。とりわけ妊娠のために辞めた人が多く見受けられました。結婚前、もしくは直後に妊娠した人が多かったようですね。
●結婚で仕事を辞めなかった理由
先ほどのアンケート結果では、6割近くの女性が仕事を辞めずに続けている結果となりました。そこで、フルタイム勤務を続けた女性に、仕事を辞めなかった理由について教えてもらいました。
<子どもがいないうちに働こうと思った>
・「まだ子どもがいるわけではないので、稼げるうちに稼いで子どもできたときや病気のときに備えるため。また、新婚旅行代を稼ぐため」(26歳/小売店/販売職・サービス系)
・「子どもができるまでは私も時間がたくさんあるし、働けるうちは働こうと思ったので。働くことも好きだった」(30歳/その他/販売職・サービス系)
とりあえず子どもができるまでは、仕事を続けようと思う人も多いようです。子どもがいないうちは、まだ自由に働くことができますし、稼ぐチャンスです。
<仕事はずっと続けたい>
・「もともと仕事は子どもを産んでも続けるつもりだったから」(35歳/機械・精密機器/技術職)
・「もともと仕事をやめる気はなく、ずっと定年まではたらきたいので」(39歳/建設・土木/技術職)
最初から仕事を辞めるつもりがなかったという女性も少なくないようですね。職場が産休育休を取りやすく、働く母に理解のある環境であれば、仕事も心配せずに続けられそうです。
<経済面が不安だったから>
・「経済的に不安があり、夫と相談して決めた」(36歳/情報・IT/技術職)
・「お金がなかったので。稼ぐしかないので。夫がどうなるかわからなかったので」(35歳/医療・福祉/事務系専門職)
夫の収入だけでは、経済的に不安を感じてしまうこともありますよね。二人で働くことで、家計は潤います。
<生活スタイルが変わらなかったから>
・「結婚したからといって居住地や生活時間帯が激変するわけではないので仕事を辞める理由にはならなかった」(33歳/その他/その他)
・「結婚したからといって生活のスタイルは変わらないから」(27歳/医療・福祉/専門職)
結婚前から同棲していたり、住む場所が大きく変わらなければ、いきなり生活が激変することはないもの。生活スタイルがそのままなら、仕事を続けることはできます。
<自分がやりたい仕事だから>
・「自分がやりたい仕事だったので、結婚はやめる理由にならなかった」(38歳/その他/その他)
・「私にはこの仕事しかないと思っていたから」(28歳/医薬品・化粧品/販売職・サービス系)
自分がやりたい仕事で、続けられる環境にあるなら、辞めることはないですよね。「結婚で辞める意味が分からない」という人もいました。
<仕事してないと暇だから>
・「今は女性も働き続けているし、辞めてもやることが無いので」(36歳/不動産/秘書・アシスタント職)
・「専業主婦になったら暇そうでいやだから」(28歳/建設・土木/秘書・アシスタント職)
仕事を辞めると、やることがなくて暇、という女性も。まだ子どももいなければ、家事だけの専業主婦には暇そうなイメージがあるのかもしれません。
★結婚後もフルタイムで働き続けた理由まとめ
経済的な理由から仕事を辞めなかった人もいれば、仕事を続けたいと望んで辞めなかった人もいるようです。子どものいないうちは、環境もさして変わらず、稼ぐチャンスです。お金のため、自己実現のため、働き続ける人は多いようですね。
経験者に聞く! 結婚を機に仕事を辞めるとする後悔
一度退職してしまうと、簡単に転職先を見つけられないこともあるもの。結婚を機に仕事を辞めて、どれほどの人が後悔しているのか、またどんな後悔が生まれるのか、既婚者に聞いてみました。
●後悔している人の割合
結婚を機に仕事を辞めて専業主婦になった女性に、仕事を辞めたことを後悔しているかアンケート調査してみました。
Q.辞めたことを後悔していますか?
第1位「後悔していない」(61.08%)
第2位「どちらかとえいば後悔していない」(24.32%)
第3位「どちらかといえば後悔している」(10.27%)
第4位「後悔している」(4.32%)
※有効回答185件(結婚を機に専業主婦になった女性)
仕事を辞めたことを「後悔していない」という女性は、6割近くいるようです。妊娠がきっかけで辞めた人が多いことも多少関係しているかもしれません。「後悔している」「どちらかといえば後悔している」という女性も15%ほどいました。環境のせいでやむを得ず専業主婦になった人たちでしょうか?
●結婚を機に仕事を辞めて後悔すること
それでは、仕事を辞めて後悔しているという女性は、どんなことを後悔しているのでしょう。引き続き既婚女性にお話を聞いてみました。
<お金が自由に使えない>
・「お金が自由につかえなくなること」(39歳/電力・ガス・石油/その他)
・「お金の自由が制限される。家にいる人に負担が全部くる」(39歳/その他/その他)
結婚することで、これまでのように自由にお金が使えなくなってしまうもの。自分で稼いでいないという引け目もあるかもしれません。
<キャリアが途絶える>
・「キャリアが中断してしまうこと。私は看護師なので離婚しても食べていけるが、あまり資格もない会社員だったらきついとおもう」(34歳/医療・福祉/専門職)
・「キャリアが途中で途絶えること、再就職しようと思ったときにはしづらい」(35歳/機械・精密機器/技術職)
これまで仕事をしてきたキャリアが、結婚を機に辞めることによって一旦中断されてしまいますよね。それを残念に感じる人もいました。再就職を考えるならなおさらですよね。
<社会から取り残される>
・「社会から取り残され、自分が何の役に立つのか、専業主婦になり夫のみの収入でやっていけるのか不安になったりする」(36歳/その他/その他)
・「社会から離れ、狭いコミュニティだけの生活になる」(36歳/その他/その他)
結婚すると周りとの付き合いも、自然と専業主婦が多くなってしまいますよね。何となく社会から取り残されているような気持ちになってしまう人も。
<収入が減る>
・「収入が減った。出産などブランクがあると、前と同じレベルの給料をもらえる仕事に戻れずパートなどになる」(37歳/その他/その他)
・「収入が減ること、子どもを育てながらの再就職はかなり難しい」(35歳/その他/その他)
仕事を辞めることで一番打撃が大きいのは、やはり収入が減ってしまうことではないでしょうか。夫だけの収入になってしまうと、家計にも大きく響きそうですね。
<時間が余ってしまう>
・「時間があり過ぎて退屈しそう。夫しか世界がないからムダに干渉しちゃいそう」(33歳/ホテル・旅行・アミューズメント/販売職・サービス系)
・「時間が余りすぎて、グータラ過ごしてしまう気がする」(33歳/医療・福祉/専門職)
ずっと仕事をしてきた人だと、いきなり専業主婦になってみても時間を持てあましてしまうのでは。活動的な人には、暇そうに感じてしまうようです。
<再就職が不安>
・「再就職ができるか不安。積み上げてきたものが途切れてしまう。腕が鈍る」(33歳/医療・福祉/専門職)
・「子どもが産まれると、フルタイムで働きたくても、なかなか思い通りにはいかないから」(38歳/医療・福祉/専門職)
いつかは仕事に復帰したいと思う人であれば、子育てが落ち着いた頃に就職活動を始めることになりますよね。スムーズに就職先が見つかるかどうかが不安になる人も多いようです。
★結婚を機に仕事を辞めて後悔することまとめ
結婚をきっかけに仕事を辞めたことで、いろんなことを後悔する可能性があるようです。大きく言えば「お金」と「キャリア」のことのよう。辞めればもちろん収入が途絶えますし、一度辞めると再就職が難しい世の中の仕組みにも頭を抱えるところです。安易には辞めない方がいいのかもしれませんね。
FPに聞いた! 結婚して仕事を辞めることのリスク
結婚して仕事を辞めることで、お金の不安やキャリアの不安があるということが分かりました。そこで、FPの石川福美先生に、結婚して仕事を辞めることへのリスクを聞いてみました。
●年収いくらの男性と結婚したら専業主婦になれる?
そもそも、仕事を辞めるのだったら、夫にはどのくらいの年収が必要なのでしょうか? 専業主婦になっても生活できる夫の年収目安を教えてもらいました。
「弊社にお越しになる方には年収200万円の派遣社員の方から、世帯年収が3000万円を超える方もいらっしゃいます。その経験からコメントさせて頂きます。
旦那さんが年収300万円台だったとしても、夫婦仲良いご家庭もありますし、1300万の旦那様をもちつつ、すぐに離婚なんてケースもありるので、幸せと年収はあまり関係がないと言えます。
もし専業主婦になることを考えている場合は、以下に注意して考えてみてください。
-
- 子どもは欲しいのか?
- 子どもの教育への考え方は、夫婦で共有できているか?(国立・私立、理系・文系など)
- もし、夫の収入が減った場合などの緊急事態に、すぐに職場復帰できる可能性はあるのか?(業務免許や資格の保有状況など)
- 家庭で将来大きな出費の予定がないか?(車や家の購入、家族旅行など)
上記のように、生活水準や、理想の人生に必要なプラスアルファの金額も考慮しましょう。もし、特にはないけど、とにかく辞めたい、と思う方がいれば、以下が夫婦の平均的な生活費になりますので、最悪これを上回った男性と結婚すれば、専業主婦にはなれますね。
約31.9万円/月(税金・社会保険料などの支出は除く)
年収にするなら、31.9万×12カ月=382.8万円(手取り)以上ということになるでしょうか」(石川先生)。
●結婚して仕事を辞めると女性の生涯年収はこれほどちがう
20代平均年収の会社員の女性が、結婚を機に(平均初婚年齢・29歳)、仕事を辞めた場合と辞めなかった場合では生涯年収はどのくらいちがうのでしょうか。目安を教えていただきました。
「単純比較が難しいのですが、なるべく簡略化した収入計算ですと、以下のようになります。
<単年度収入 税等差し引き前>
- 正規社員……平均年収262.0万円
- 非正規社員(契約社員・派遣等)……平均年収188.6万円
- パート・アルバイト第一期間(29歳~49歳)……時給960円×7時間×月12日=80,640円/月 ⇒年収967,680円
- パート・アルバイト第二期間(50歳~65歳)……時給932円×4時間×月8日=29,824円/月 ⇒年収357,888円
- 専業主婦……0円(主婦業での経済価値はカウントしないものとする)
<結婚後の生涯収入>
- 正規社員……262.0万円×(65-29歳)=9432万円
- 非正規社員……188.6万円×(65-29歳)=6789万6000円
- パート第一期間……1935万3600円、第二期間……536万8320円 ⇒通算2472万1920円
- 専業主婦……0円(主婦業での経済価値はカウントしない)
結婚して正社員で働き続けた場合、契約社員などで働き続けた場合、パートになった場合、専業主婦になった場合で、結婚後の生涯収入はこれだけ変わってくることが分かります。専業主婦と正規社員を続けた場合では、1億円近い差が出てきます」(石川先生)。
●結婚して仕事を辞めるとこんなところで損する!
結婚して仕事を辞めると収入がない以外にどんなデメリットがあるのでしょうか? 詳しく解説いただきました。
「社会保障制度において、会社員の場合と以下が主に異なります。
-
- 健康保険では受けられる以下の制度が国民健康保険だと受けられなくなる
⇒育児休業期間中の保険料免除、出産手当金、傷病手当金の支給など - 老齢年金
⇒厚生年金は納めた保険料によって受給額が変わる為、受給額の減少、もしくは受給資格を満たしていない場合は、国民年金のみの受給となります。
- 健康保険では受けられる以下の制度が国民健康保険だと受けられなくなる
- 遺族年金
⇒厚生年金に加入の方が亡くなった場合、遺族はブルー/イエローの両箇所の遺族年金が受取れます。未加入者の方が亡くなった場合は、遺族が受取可能な遺族年金はイエロー部分のみとなります。 - 勤めていた会社の福利厚生制度が受けられなくなる(団体保険は退職後の更新ができません)
- 社会的信用力の低下(クレジットカードや各種ローン申請の場合)
このようなリスクが仕事を辞めてしまうと出てきます」(石川先生)。
●結婚して仕事を辞めるとこんなリスクも!!
結婚して仕事を辞めるとお金の面以外にはどんなリスクがあるのでしょう。石川先生に聞いてみました。
「挙げるとするなら以下の2点です。
- 社会から取り残された感覚になる方もいる
- 社会復帰したいときに復帰できない
辞めて何をしたいのかが、不明確な状態で辞めてしまうと、『やっぱりやめなきゃよかった!』という方も多くいる印象です。
辞めるのであれば、ぜひ前向きな退職を心がけてください。夢の専業主婦生活に憧れる方もいらっしゃいますが、専業主婦も楽ではありません。ぜひ、結婚をしたから専業主婦になる、といった先入観を捨てて、今の時代にあった自分なりの幸せ・生き方を探してみましょう。
結婚を機に会社を辞めても、実はWEBのみでお仕事をされている方もたくさんいらっしゃいます。政府の方針などもぜひ参考にしてみるといいでしょう!」(石川先生)。
まとめ
結婚を機に仕事を辞める人は年々減っているようですが、まだまだ辞めてしまう女性は多いようですね。やむを得なかったり、パートナーとよく将来を見据えて話し合った上なら仕方がないですが、なんとなく辞めてしまうと後悔してしまうこともあるようです。辞めることによって人生で得られる収入が大幅に減ってしまったり、他にもさまざまなリスクがあることは理解しておいた方がよさそう。石川先生のアドバイスも参考にしてよく考えてから決断するようにしましょう。
(監修:石川福美/クレア・ライフ・パートナーズ、文:ファナティック)
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