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大正噴火100周年ってなに?「大正噴火で、桜島が陸続きになった」

今年1月12日、桜島大正噴火100周年記念の式典がおこなわれた。被害者の追悼と、防災意識を高めるのが目的だ。

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桜島は今でも活動を続け、2010年以降は毎年1,000回以上の噴火が観測されている。富士山でさえいつ噴火してもおかしくない状態だから、大正噴火は「将来のできごと」と受け止め、備えておくのが肝要だ。

慌てず騒がず落ち着いて!

桜島は、約3万年前に鹿児島湾で起きた巨大噴火によって誕生した。その3~4,000年後に最初の噴火が起き、桜島の原型となる北岳ができたと考えられている。それからおよそ500年後に北岳を覆う形で南岳が生まれた。

1つの山として扱われているものの、実体は2つの火山が合体した複合火山なのだ。

以降も活動を繰り返し、資料が残っている最古の記録は764~766年の天平宝字(てんぴょうほうじ)噴火で、続日本紀には62区画の民家が被害にあったと記されている。その後の大規模な噴火をあげると、

・1471年 … 文明(ぶんめい)噴火 … 北岳が変形

・1779年 … 安永(あんえい)噴火 … 安永諸島が誕生

そして1914年の大正噴火だ。

これだけ活発に活動しているのに、大正噴火がクローズアップされるのはなぜか? まずは噴火の規模だ。桜島を「山」と思っているひとが多いのだが、その名が示すように、もともとは「島」だった。ところがこの噴火による溶岩によって、大隅(おおすみ)半島と陸続きになったため、現在の姿になったのだ。

幅400m・深さ80mほどの瀬戸海峡を埋め尽くした溶岩は推定30億トン、噴煙は上空8,000mまで達し火山灰を小笠原諸島にまで運んだというから、自然の力や恐るべしだ。

大正噴火の教訓はなにか? まずは「情報」だ。

この噴火による直接的な被害者は、25人(内閣府の資料では30人)と驚異的に少ない。もちろん被害者ゼロが望ましいのだが、2万1千人ものひとが住んでいたことを考えると奇跡といえよう。

問題は、間違った情報を信じたため、わずかながらでも被害者が出たことだ。歴史的に噴火を繰り返す桜島だけに、住民の意識は高くほとんどが自主避難を始めた。ところが測候所が「噴火していない」との情報を発したため、信じた人たちが逃げ遅れてしまったのだ。

また、災害は噴火だけではないことも重要で、6時間後に発生したマグニチュード7.1の地震は鹿児島市でも震度6(烈震)となり、鉄道や道路への土砂災害、電話/電力線を切断し、復旧まで長時間を要した。そのため避難したひとは、不衛生な環境での暮らしを余儀なくされ、伝染病が発生し噴火よりも多くの犠牲者を出してしまったのである。

つまり、噴火→避難は当然だが、その後の生活にも備えておくのも重要だ。

大噴火はまた起こる?

桜島はまた噴火するのか? 答えは「大いにあり得る」だ。

「桜島大正噴火100 周年記念誌」によると、大正噴火以降も山頂火口噴火、昭和火口噴火と、現在も活動を続けている。特に2008年以降は活発で、年間の爆発・噴火回数をあげると、

・2008 … 29 / 80

・2009 … 548 / 755

・2010 … 896 / 1,026

・2011 … 996 / 1,355

・2012 … 885 / 1,107

・2013 … 835 / 1,097

で、2011年をピークに減少方向ではあるが、たび重なる噴火で削り取られ、2006年→2012年で昭和火口が2.5倍にまで拡大しているほどだから予断は許されない。

それではいつ噴火するの?と聞かれれば、残念ながら現代科学をもってしても、はっきりとした予測は誰にもできない。「始まったな」「あぁ、すべてはこれからだ」の状態になれば○日後に□が起きるか高精度で予測できるのだが、いつ「その状態」になるのかは、予測しきれないのだ。

まとめ

・大正噴火で、桜島が陸続きになった

・噴火の直接被害者は0.1%で、原因は誤報

・ほとんどが自主的に避難

・噴火後の地震による被害者の方が多い

噴火も地震も防ぎようがないので、冷静な判断、迅速な避難、避難後の生活を支える準備が重要だ。また起きるかもしれない災害に、大正噴火から学ぶべき点は多い。

被害にあわれた方に、謹んで哀悼の意を表する。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年01月30日に公開されたものです

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