おしるしとは
おしるしって何︖
分娩が近づいていることを知らせる兆候の一つ。妊娠中はホルモンの影響で子宮頸管の付近は粘り気のある液体で満たされています。分娩が近づくと、子宮頸管が広がるにつれて卵膜は子宮壁から剥がれて出血し、粘液とともに押し出されます。この血の混じった腟 分泌物を「おしるし」(産徴)と呼んでいます。
ただし、おしるしがないまま分娩が始まったり、逆におしるしがあってもなかなか分娩が始まらないケースもあります。
おしるしの⾊や量は︖
おしるしの色はピンク、赤、褐色などさまざま。量はトイレットペーパーににじむ程度から、血液が混じったおりもののような状態が多いようです。色、量ともに個人差がありますが、大量に出血することはありません。
おしるしから陣痛、出産まで
おしるしから陣痛までの時間
通常おしるしがあると、1~2日以内に陣痛(規則的な子宮収縮)が始まることが多いようで す 。ただし、おしるしは個人差が大きいので、分娩の開始は、規則的な陣痛(陣痛周期10分以内あるいは1時間6回以上)が出てきたときからとされています。
おしるしがない⼈も多い
前述したようにおしるしがないまま分娩が始まる人もいます。特に出産経験がある経産婦は、はっきりしたおしるしがないという人が少なくありません。
おしるしがあったときの対応方法
まずはリラックス
出血に気づくと「すぐに病院に行かなくては」などとあわててしまいがちですが、ほとんどの場合はおしるしから規則的な陣痛が来るまでは時間があります。妊娠37週を過ぎていて異常な出血(後述)でなければ「これはおしるしで順調な経過をたどっている」と認識し、リラックスして過ごしましょう。
いつも通り動く
おしるしがあってもすぐに分娩になるわけではないので、いつも通り動いてかまいません。ただし数時間以内に陣痛が始まることもあるので、遠方への外出は避けてください。破水したり、規則的な陣痛が始まったら、分娩予定の産院へ連絡して指示を仰ぎましょう。
いつでも⼊院できる準備を
おしるしの直後に分娩になるケースは少ないとはいえ、分娩が近づいていることに変わりはありません。入院用の持ち物の最終チェックをする、サポートしてくれる家族にも連絡して自家用車やタクシーをすぐに手配できるようにしておくなど、いつ入院になってもいいように準備しておきましょう。
おしるしと異常な出⾎の⾒分け方
異常出血を起こす病気とその症状
妊娠後期には胎盤早期剥離、前置胎盤、前置血管などでも性器出血が起こることがあります。「量が多い」「おなかに激しい痛みがある」「おなかが板のように硬く張っている」などの症状が一つでもある場合は、おしるしではなく異常な出血の可能性が高いので、すぐに医療機関を受診する必要があります。
胎盤早期剥離
赤ちゃんがお腹の中にいる間に、胎盤が子宮から剥がれることを「常位胎盤早期剥離」といいます。重症の早期剥離は出血が多量になることが多く、子宮内にたまった血液でおなかが大きくなる、子宮が硬く触れる、下腹部痛といった症状も現れます。より重症化した場合は、子宮が板のようにカチカチに硬くなって激しい痛みを訴え、多量の出血でショック状態になることもあります。
前置胎盤
胎盤が正常よりも腟に近い側に付着し、そのために胎盤が子宮の出口の一部、あるいは全部を覆っている状態を「前置胎盤」といい、全分娩の1%弱を占めています[*1]。
ほとんどが無症状で、妊婦健診の超音波検査で発見されますが、痛みがないのに突然出血することもあります。出血は少量が数回というパターンが多い一方、いきなり大出血から始まることもあります。性器出血があった場合には、腹痛がなくてもすぐに産科を受診するようにしてください。
前置血管
子宮口に面した箇所で卵膜に付着した臍帯(へその緒)の血管が破れて出血します。出血は少量ですが赤ちゃん側の血液なので、赤ちゃんの心臓の音が弱くなるなど状態が急激に悪化します。
破⽔の場合も
赤ちゃんを包んでいる膜が破れ、腟から羊水が流れ出てくることを「破水」といいます。分娩の途中で起きることが多いのですが、陣痛が始まる前に起こることもあります。おしるしと勘違いしてしまいがちですが、温かなさらさらした水のようなものが大量に出てきたときは破水の可能性が高いので、すぐに分娩予定の産院に連絡してください。
まとめ
おしるしは分娩が近づいているサインの一つですが、誰にでも見られるものではなく、色や量にも個人差があります。神経質になる必要はありませんが、おしるしとは異なる異常な出血には注意してください。
おしるしがあってもすぐに分娩が始まるわけではありません。入院の準備を再確認した上で、もうすぐ赤ちゃんに会えることを楽しみに、ゆったりとリラックスして過ごしましょう。

(文:熊谷わこ/監修:齊藤英和先生)
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※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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