【医師監修】妊婦の鉄分補給に役立つ6つの栄養素とは?

【医師監修】妊婦の鉄分補給に役立つ6つの栄養素とは?

妊娠すると、どんどん変わっていく自分の身体。大きくなっていくお腹を眺める幸福感と共に、妊娠前は経験しなかったマイナートラブルに戸惑いを感じることも多いでしょう。貧血もその1つ。妊娠すると貧血症状が出る場合が多いですが、たかが貧血……と侮らず、しっかり対策をとっていきましょう。


この記事の監修ドクター
 産婦人科医 加藤智子 先生
浜松医科大学医学部医学科卒業、社会医療法人財団新和会八千代病院勤務 産婦人科医長を経て、三河安城クリニック勤務。
日本産科婦人科学会(専門医)、日本医師会認定産業医、健康スポーツ医、日本抗加齢医学会(専門医)、NPO法人女性と加齢のヘルスケア学会(更年期カウンセラー)、日本産婦人科内視鏡学会、日本女性心身医学会、検診マンモグラフィ読影認定医、女医+(じょいぷらす)所属。

妊婦は貧血になりやすい?

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※画像はイメージです

貧血とは、血液中のヘモグロビン(赤血球中にある物質。血液の赤さの素となる)が減少した状態と定義されています。

平成29年国民健康・栄養調査報告(厚生労働省)によると、ヘモグロビン量が基準値(男性13.1~16.3g/dL、女性12.1~14.5g/dL:日本人間ドック学会)より低い人の割合は、成人男性では8.9%、成人女性14%と女性のほうが多く、また女性では年代別に見ると20代9.4%、30代22.4%、40代23.1%で基準値を下回ることがわかっています。また、妊婦の場合は、全体のおよそ20%に妊婦貧血(鉄欠乏性貧血以外も含む)が見られるとの報告があります。

妊娠すると、お腹の赤ちゃんに栄養を運ぶために自然と血液の量が増えますが、液体成分である血漿(けっしょう)は増えても、赤血球などの細胞成分はそれほど増えないので血液が薄くなってしまいます。そのため、ヘモグロビン濃度やヘマトクリット値(血液中に占める赤血球の容積の割合を示す数値)が低下し、貧血になりやすくなります。妊婦に貧血が多いのは、このためです。

妊婦の体に鉄分が必要な理由

厚生労働省では貧血を防ぐために、妊娠初期では非妊娠時※1の+2.5(mg/日)、妊娠中期・後期では非妊娠時の+15.0(mg/日)の鉄分摂取を推奨しています。[*1]
では、貧血を予防するためになぜ鉄分が必要なのでしょうか。

※1:非妊娠時における鉄の推奨摂取量は、18~29歳の女性で6.0mg/日(月経中は10.5mg/日)、30~49歳の女性で6.5mg/日(月経中は11.0mg/日)とされています。

どうして「鉄」が必要なの?

妊娠中に起こる貧血のほとんどは、鉄の不足による鉄欠乏性貧血と、葉酸の不足による葉酸欠乏性貧血、あるいはその両方が合併したものです。
鉄が不足すると貧血になるのは、鉄がヘモグロビンを構成する重要な原料であるためです。血液が薄くなるのを予防するには、十分な鉄分を摂取し、ヘモグロビン濃度が下がりすぎないようにすることが大切なのです。

貧血を放っておくと…

【お腹の赤ちゃんは……?】
ママが摂取した鉄は優先的に赤ちゃんへと運ばれるため、ママが貧血気味であっても、お腹の赤ちゃんが栄養不足に陥ることは滅多にありません。それでも、貧血が重症化してしまうと、低出生体重児や未熟児、胎児死亡になる頻度が高くなることがわかっています。

【ママは……?】
ヘモグロビンは酸素と結びつく性質があるため、血液に乗って身体の隅々(すみずみ)まで酸素を届ける役割を担っています。そのため、ヘモグロビンが不足して貧血状態になると酸素不足になり、めまいや立ちくらみ、全身倦怠感、動悸、息切れなどを起こすことがあります。
また、お産の際には平均でおよそ300mlの出血を伴うため、妊娠中に貧血がある場合は出産後に症状がひどくなる可能性があります。[*2]

鉄分の種類

食品中に含まれる鉄分の形態は、主に「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」に分かれます。ヘム鉄は肉や魚などの動物性食品に含まれ、一方の非ヘム鉄はほうれん草などの植物性食品に含まれています。同じ鉄分ですが、体内に取り込まれる吸収率はヘム鉄の方が高いです。それでは、ヘム鉄と非ヘム鉄の違いについて、詳しく見ていきましょう。

ヘム鉄

タンパク質と結合した鉄で、肉や魚などの動物性食品に多く含まれます。特殊な担体(他の物質を吸着したり固定する物質)によってそのままの形で腸管に吸収されるため、非ヘム鉄に比べて吸収率がよく、鉄欠乏性貧血の予防により効果的と言われています。

非ヘム鉄

無機鉄である非ヘム鉄は、植物性食品に多く含まれます。吸収率15~35%と言われるヘム鉄に比べ、非ヘム鉄の吸収率は2~20%と言われ低めですが、非ヘム鉄を豊富に含む小松菜やほうれん草、納豆などは副菜として取り入れやすい食材なので、毎日の食事に欠かさないことで貧血予防の一助とすることができます。

食べ合わせに気を付けて!

コーヒー、紅茶、緑茶などに含まれるタンニンは、非ヘム鉄の吸収を阻害すると言われています。お茶碗やコップ1杯程度に含まれるくらいなら問題ないとされますが、念のために食前・食後30分は間隔を空けてから飲むといいでしょう。また、玄米などの穀類の外皮や豆類に多く含まれるフィチン酸も、非ヘム鉄の吸収を阻害するとされています。

貧血予防に効果的な栄養素とは?

妊娠中は血液の液体成分が増えるため、特に妊娠後期では健康な妊婦さんでも貧血になりやすいです。そのため、妊娠中は普段より多くの鉄分摂取が推奨されています。特に、日本人の食事摂取基準(厚生労働省)によると、妊娠後期の妊婦さんで非妊娠時のおよそ2~3倍もの鉄分が必要とされています。[*1]

また、貧血予防には鉄分だけを摂るのではなく、吸収率やその働きを促す効果のある食材と併せて食べることが勧められます。貧血予防に効果的な栄養素の代表をご紹介します。

赤血球の色素成分であるヘモグロビンの原料になります。貧血の予防・改善には不可欠な栄養素です。

【鉄を多く含む食品】
・ヘム鉄…赤身の肉(牛のヒレ肉など)、あさりの水煮、
牡蠣、かつお・さんまなどの魚類、鶏卵
・非ヘム鉄…ほうれん草、小松菜、切り干し大根、がんもどき、納豆、プルーン

タンパク質

タンパク質は赤血球やヘモグロビンの材料となるため、貧血の予防にはタンパク質をしっかり摂ることも大切です。特に、赤身の肉や魚からはタンパク質と鉄分が同時に摂れ、かつ肉類に含まれる動物性タンパク質は非ヘム鉄の吸収も高めてくれます。赤い色は鉄分の色なので、赤身の食材は積極的に食べるようにしましょう。

【タンパク質を多く含む食品】
・肉、魚、卵などの動物性食品
・大豆、豆腐、納豆などの大豆製品
・ヨーグルトなどの乳製品

ビタミンC

体内で鉄分の吸収力を高めるために絶大な力を発揮するのは、ビタミンCです。特に非ヘム鉄の吸収力をアップさせるのに効果的とされています。肉や魚の付け合わせとしてビタミンCを含む野菜を取り入れるといいでしょう。

【ビタミンCを多く含む食品】
・果物類…レモン、オレンジ、柿、キウイ、イチゴ、グレープフルーツ
・野菜類…ブロッコリー、パプリカ(黄色)、かぼちゃ、ピーマン、小松菜

ビタミンB₆

ビタミンB₆は、タンパク質の合成を助けるのに欠かせない栄養素です。また、ヘモグロビンの生成にも必要となります。鉄とタンパク質、ビタミンB₆のどれかが欠けてもヘモグロビンは生成されなくなってしまうので、貧血予防に欠かせない栄養素の1つです。

【ビタミンB₆を多く含む食品】
・魚介類(マグロ、イワシ、さけ、はまぐりなど)
・肉類
・野菜類(アスパラ、いんげん、カリフラワー、キャベツなど)
・豆類(大豆、ひよこ豆など)
・鶏肉、乳製品

葉酸

葉酸が不足しても貧血になります。これは、葉酸が足りないと赤血球が正常に作られなくなるためです。一般的にはまれな貧血のひとつですが、妊娠中は葉酸が不足しやすくなるため、通常より起こりやすくなります。日本人の食事摂取基準によると、18歳以上の女性の葉酸の推定平均必要量は200(推奨量240)μg/日、妊婦の場合はこれに+200(推奨量240)μg/日を付加的に摂取するよう推奨されています。[*3]

【葉酸が多く含まれる食品】
・野菜類…ほうれん草、ブロッコリー、アスパラ、かぼちゃなどの緑黄色野菜
・果物類…イチゴ、オレンジ、マンゴー
・その他…納豆など

ビタミンB12

ビタミンB12も赤血球を作るのに欠かせない栄養素です。そのため、これが不足しても、葉酸欠乏によるものと同じ貧血が引き起こされます。

【ビタミンB12が多く含まれる食品】
・さんま、イワシなどの魚介類
・牡蠣、あさりなどの貝類
・鶏卵、チーズ

いろいろ試したけど改善されないときは……

貧血の改善が必要な場合は、主治医から鉄剤(葉酸欠乏性の場合は葉酸)が処方されます。貧血の予防に効果的な食事と薬の内服を組み合わせ、出産に備えましょう。薬は処方された分をしっかり飲み切り、その後も医師の指示に従いましょう。

まとめ

妊娠中は血液の液体成分が増え、かつ鉄分などの栄養素は優先的に赤ちゃんに運ばれるため、ママは貧血ぎみになります。貧血にならない、あるいは重症化させないためには、鉄分や葉酸、タンパク質など、ご紹介した主な栄養素を意識的に摂らなければなりません。妊婦の食事摂取基準を参考に、一日の献立を考えましょう。

食事は貧血予防のためだけではなく、妊娠中の健康管理においてもとても重要となります。妊娠中は身体が重くなり、さまざまなマイナートラブルにも悩まされます。食生活に気を使うのが大変なときも多いと思いますが、取り入れられることから少しずつ実践し、元気な赤ちゃんに出会える日を待ちましょう。

参考文献
[*1]『鉄の食事摂取基準』厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4aq.pdf
[*2]『1)分娩時出血例の管理』日本産科婦人科学会 日産婦誌59巻9号
http://www.jsog.or.jp/PDF/59/5909-389.pdf
[*3]『日本人の食事摂取基準(2015 年版)』厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf

※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビウーマン子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.08.27)

※記事の修正を行いました(2019.06.12)

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

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