【第5話】本マグロ大活躍! やっと成就した未来の見えない悲しい恋
恋愛・婚活コラムニストのやまとなでし子さんが、月9ドラマ『君が心をくれたから』(フジテレビ系)を毎週考察&展開予想するコラムです。主人公・逢原雨が、愛する男性のために自分の“心”を差し出す宿命を背負うことから始まる、“過酷な奇跡”が引き起こすファンタジーラブストーリー。“奇跡”と引き替えに雨が奪われる“心”とは……? 2人の未来は果たして……?
※このコラムは『君が心をくれたから』5話までのネタバレを含んでいます。
家族の悲しみまで身代わりとして引き受けた雨
全ての五感をもうすぐ失う雨(永野芽郁)は、唯一の支えである祖母(余貴美子)がガンで余命わずかであることを知ります。そして隠し事を祖母に見透かされた雨は、一人で抱え続けてきた五感を失う事実をとうとう告白しました。
自分の命はあとわずかで、無理なことだと知りながら、「ずっと雨のそばにいる!」と雨を抱きしめる祖母の言葉に、見ているこちらも胸が締めつけられます。
太陽は、雨の起こした奇跡のおかげで、何も知らず生き延び、その家族も太陽の死を目の当たりにする事なく笑顔で生活できています。その代わりに、雨や祖母がこれだけの苦しみを抱え、涙を流しているのだと思うと、ただ五感を失っただけではありません。
雨はあの日、太陽に起こるはずだった死と、それに伴う周囲の人間の悲しみまで自分が背負い、身代わりとして人生を捧げたようなものです。
雨と太陽で、ただ違うのは五感と共に心を失い、感情が死んだまま生きるか。はたまた肉体までも失い、完全に死んでしまうのか、という点。果たして、雨はここまで想定して受け入れていたのでしょうか。
ゲームチェンジャー・本マグロ司
唯一、全てを知っていた司(白洲迅)は祖母に「自分にできることはないか」と尋ねます。雨を思う司の気持ちを知る祖母は、「あの子の願いをかなえてやりたい。でもそれはあなたにとってとても残酷なこと。それでもいいの?」と司にあるものを託します。
それは雨が高校時代に太陽(山田裕貴)に書いた手紙。卒業の時に渡すはずだったけれど、ちょっとしたボタンのかけ違いから、それは渡すことなくゴミ箱に捨てられ、祖母が大切に取っていたのです。
太陽に手紙を渡し、真実を全て伝える司。雨が五感を失うこと。太陽から身を引くためにわざとうそをついていたこと。そして、手紙の中につづられた太陽への気持ちは、観覧車で雨から伝えられた、司を好きな理由と全く同じもの。
あれは全て自分に向けられていた感情なのだと知り、太陽は衝撃を受けます。全てのかけ違いを元に戻したゲームチェンジャー司がグッジョブすぎて。
どうにか雨の本当の気持ちを太陽に伝えたい、とヤキモキしていた視聴者にとって、待ちに待っていた瞬間です。
さすが本マグロな男。顔イケメン、公務員、性格がいい。そんな男性が、彼女なしフリーなことが一つの奇跡なんじゃないか? ってくらい、最高の男です。どうか幸せになって!
登場人物の名前にこめられた意味
このドラマの登場人物の名前は天気にまつわるのですが、司は違うんですよね。
「望田司」まさに雨たちや視聴者の望みを動かし、司る存在のキャラクターです。しかも司という漢字は役所という意味もあるのです。さすが公務員。いろんな意味で名は体を表す配役。
ちなみに案内人・千秋(松本若菜)も名前に天気がないんですよね。過去が明かされた時、その理由が分かるのでしょうか。
案内人の秘密
当初「雨に深く干渉するべきではない」と言っていた案内人・日下(斎藤工)。まるで感情などないかのように落ち着き払っている彼ですが、少しずつ様子が変わってきました。
全ての真実を知った太陽は雨に会いに行きます。しかし雨は「状況を知ったのならますます会いにこないで! もっと苦しくなる!」と、太陽を拒絶してバスに乗り込みます。そのバスを転びながらもひたすらに走って追いかける太陽。バスの中には雨と共に、案内人二人の姿も。
そこで日下は雨に、まるで自分の過去の後悔と苦しみを繰り返させないかのように雨に告げるのです。
雨の祖母がよく唱えていた、心を開く魔法の呪文と共に「太陽の元に行く、行かない、どちらも後悔する。なら全てを魔法のせいにして幸せな後悔をするべきだ。」と。その言葉に心を動かされ、雨はバスを降り、太陽の元へ走り出します。
日下から垣間見えた暖かい感情と優しさ。そして少しだけフラッシュバックした過去。どうやら彼も奇跡を起こし、誰かのために犠牲になるという選択をした元人間であるようです。
彼も過去は普通の人間で、奇跡という名のたくさんの苦しみを見守り続け、感情を失ったのでしょうか。千秋も奇跡経験者のようでしたし、彼らが案内人となった経緯もこれから明かされていくのでしょうか。
指輪をつける位置から見える雨の気持ち
雨の卒業の時、太陽が雨に贈ろうとしていたしずくの指輪。妹・春陽(出口夏希)とその思い出を話しながら、雨への気持ちに蹴りをつけるために指輪を投げ捨てます。
投げ捨てられた先は立入禁止区域で、結構な崖っぽい場所にも関わらず、それを何事もなかったかのように無傷で平然と回収し、後日雨の元に届ける野生児・春陽。とんでもないスキルです。
「アラビアンナイトの指輪の精のように、何かあったら雨を元気づけたい」という太陽の気持ちを、春陽は指輪と共に伝えます。
静かに受け取った雨は、その後指輪をうれしそうにつけるのです。その指は「左手の薬指」。しかし途中で慌てたように外します。
太陽への気持ちが残ってしまうのが怖かったのか、それとも左手の薬指なんて、かなわぬ未来を願っては自分がさらに苦しくなる……と思ったのか。
その後、雨は全てを知った太陽を拒絶するのですが、日下の後押しから考えを変え、逃げるように乗ったバスから降りて太陽に気持ちを伝えます。
「五感を失っても私のこと好きでいて。お願い」と。その指輪をつけた指は「人差し指」。太陽を想い、「この恋は一時的なもの。未来はない」と、どこかで考えているからこそ、ここでは指輪をあえて最初につけようとした薬指ではなく、人差し指につけたのでしょうか。
そんな雨を「どんな君になっても、ずっとずっと大好きだからね」と太陽は全て受け止め、10年のすれ違いに終止符が打たれました。
司、春陽、日下、祖母、あらゆる人のアシストで、掛け違えたボタンを元に戻し、やっと両思いになれた二人。雨の触覚があるうちに、太陽を抱きしめることができてよかった……!
五感の一部と心が残る短い間、どうか少しでも多く幸せな時間を過ごして欲しいですね。
次回はやっと幸せな二人の姿が見れるのでしょうか。楽しみでなりません!
(やまとなでし子)
※この記事は2024年02月12日に公開されたものです