「お力添えできず申し訳ございません」は正しい言葉? 適切な言い換え表現を解説
「お力添えできず申し訳ございません」という言葉を使ったことはありますか? このフレーズは正しい表現なのでしょうか? 今回は、他者からの要望を断る際の適切な言葉について、コミュニケーションマナーアドバイザーの松岡友子さんに解説してもらいます。
近年の社会では、「周囲を巻き込む力」が重要になっていますよね。ご縁を大切にして助け合うことで、ビジネスは大きく展開していくもの。
しかし、他者から「お力添えいただきたい」と頼まれたものの、どうしてもそれが難しくて断らざるを得ない場合、あなたなら何と言いますか?
今回は、相手の依頼を断る場合に使われることのある「お力添えできず申し訳ございません」という言葉について、解説していきます。
「お力添えできず申し訳ございません」の意味
ここで使われている「力添え」とは、『広辞苑 第七版』(岩波書店)によると「力を添えて助けること。援助」という意味です。
他者から「お力添えいただきたい」と頼まれたにもかかわらず、それができずに断る時に「お力添えできず申し訳ございません」と伝えることで、謝罪の気持ちを表現しているといえます。
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「お力添えできず申し訳ございません」は正しい表現? 適切な使い方とは
そもそも「お力添えできず申し訳ございません」というフレーズは正しい表現なのでしょうか? まずは、「お力添え」という言葉について少し考えてみたいと思います。
相手の援助や協力をこちらからお願いする場合は、その依頼内容の大小にかかわらず「お力添え」という表現を使うことができます。
相手の負担を考え、あくまで「添える程度」で結構ですというようなへりくだったお願いの仕方ですが、実際は相手の存在や協力なしでは、この案件は実現不可能であるというような場合であっても使用可能な言葉です。
しかし、協力依頼に対して断らなくてはならない場合は、一般的に「お力添えできず申し訳ございません」ではなく、「お力になれず申し訳ございません」と伝えることの方が多いように私は思います。
これは、「お力添えできず」と言ってしまうと、相手の望む最小限の「添える程度」の協力すらできない、というように聞こえる場合があるからかもしれません。
そのため、こちらからお願いする場合や他者からの依頼に応じることができる時は、へりくだった表現である「お力添え」が使用可能ですが、断る場合に用いるのは控えた方がベターでしょう。
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「お力添えできず申し訳ございません」の言い換え表現【例文付き】
「お力添えできず申し訳ありません」は、場合によっては違和感を持たれてしまう可能性があるので、使用する際には注意が必要です。
そこで、ここからは言い換え表現を紹介します。
(1)お力になれず申し訳ございません
「お力になれず申し訳ございません」は、相手の要望に応えることができない場合の謝罪としてよく使われるフレーズです。
取引先の相手やお客さまにも使用可能なので、適切な表現に悩んだ時はこの言葉を用いると良いでしょう。
例文
「お示しいただいた日程には既に先約が入っております。お力になれず申し訳ございません」
(2)お役に立てず申し訳ございません
「お役に立つ」という言葉はへりくだった印象を与えることができますので、いろいろな場面での使用が可能です。
例文
「ご相談いただいた件ですが、あいにくこちらにはそのような設備がございません。お役に立てず申し訳ございません」
(3)ご期待に添えずお詫び申し上げます
相手があなたの協力を期待していたのであれば、「期待に添えない」という表現に言い換えることもできるでしょう。
例文
「せっかくご依頼いただきましたのに、このたびはご期待に添えず、心からお詫び申し上げます」
(4)お手伝いできず残念です
依頼された内容があまり重いものでないのであれば、「お手伝い」という軽い表現でも良いかもしれません。状況に応じて、上手に使い分けましょう。
例文
「ぜひ受付係を担当したかったのですが、お手伝いできず本当に残念です」
(5)ご協力できず心苦しいです
「申し訳ございません」にもいろいろな表現があります。また、「できない」ということを「難しい」「厳しい」と言い換えることも可能です。
例文
「本件は法律上の制約があり、ご協力できず心苦しく存じます」
「人手が足りず、お手伝いするのが難しい状況です」
「残りの時間を考えますと、私どもでお役に立てるかどうかかなり厳しいと考えております」
依頼を断る場合に「お力添えできず申し訳ございません」と述べるのは避けるのがベター
たとえ相手からの要望に応えられない場合であっても、自分を頼って相談してくれた相手への感謝の気持ちは決して忘れずに、そしてきちんと言葉にして伝えましょう。
対面であれメールであれ、
・協力できるよう調整を尽くしたこと
・協力できないことは大変残念であること
・協力は難しいが、案件の成功を祈っていること
・次回はぜひ協力したいと思っていること
をお伝えすることが、次のビジネスへとつながっていく鍵になるはずです。
次はこちらが協力依頼する番かもしれません。「持ちつ持たれつ」で気持ちよく、ビジネスも人間関係も広げていきましょう。
(松岡友子)
※画像はイメージです
※この記事は2024年01月26日に公開されたものです