好きなことを仕事にした人が苦しむ理由と、ストレスのない適職の見つけ方
仕事で大成功を成し遂げたいとか、そんな大それた野望はないけど、なんとなくうまくやりたい。いつもの働き方を小さくアップデートする「お仕事ハック」を紹介します。
今回のお仕事ハックは「好きなことを仕事にしたつもりがつらくなってきた」とのお悩みについて、コラムニストのヨダエリさんがアドバイス。
好きなことを仕事にしたつもりがつらくなってきた
私はフリーランスでイラストレーターの仕事をしています。昔から絵を描くことが好きでこの職業になるのも夢だったので、なりたての頃は仕事の依頼が来るたびにうれしくて仕方なかったのを覚えています。でも最近は将来の結婚も視野に入れて、もっと収入を得なければという責任感から気の乗らない仕事を受けることも増えてきました。そうしているうちに絵を描くことがつらくなってきてしまったのです。
好きだったことを仕事にしたつもりが、そのせいで自分のアイデンティティでもあったイラストから離れたくなってしまったことにモヤモヤする日々です。今後私はどうしていけばいいのでしょうか。何かアドバイスをください……!(20代/イラストレーター)
分かる……! と頷いている人、山ほどいると思います。
ずっと続けている好きなことがある人は、それを仕事にしたくなりがち。そして実現させがち。ものすごく好きであるがゆえの情熱と継続力があり、それが第三者にも伝わるからです。
ただ、実際にその仕事を始めた後は、悩みがち。
なぜそうなってしまうかというと、ものすごく好きであるがゆえに、こだわりがあるから。
世の中には好きなことを仕事にするのに向いている人と向いていない人がいて、向いている人は「仕事として割り切れる人」である……という考え方があるようですが、これについて私は少し異論があります。
というのも、人はものすごく好きなことに対しては割り切れないものだから。
「嫌わない者は愛さない」。ドイツの文豪ゲーテの言葉です。何かを強く嫌わない者は何かを強く愛することもない、と。
これは逆に言うと、何かを強く愛する人は何かを強く嫌う、ということでもあります。「愛する」は「大切にする」に、「嫌い」は「受け入れられない」「選ばない」などに置き換えてもいいでしょう。
絵を描くことが昔から好きで、それを仕事にすることができたあなたなら、この言葉、腑に落ちませんか?
作品作りとは、瞬間瞬間で何かを選び、何かをはじく作業の積み重ねとも言えます。イラストのように「美」の定義が人によって全く異なる場合、何を愛し、何を嫌うかがなおのこと重要です。
とはいえ、仕事では自分の好き嫌いやこだわりではなく、「売れるから」「クライアントの希望だから」など、優先させないといけないものがあります。仕事だからです。
もちろん、自分の「好き」に共鳴してくれる仕事相手を少しずつ増やす、という方法もあります。ただ、ある程度の時間は必要かもしれません。
「そんな悠長なこと言ってられない。もっと稼ぎたい。でも気の乗らない仕事が増えるのはつらい……」ということであれば。
イラストレーターの延長線上にあるデザインの仕事など、「共通点のある異なる分野」に仕事を広げてみてはどうでしょう?
えっ、今から……と思うかもしれませんが、ビジュアル関連の仕事なら、あなたのセンスを活かせるはず。そして、イラストを描く時ほどは、クライアントの意見や要求に合わせることが苦にならないのでは。
新たなスキルを学ぶ必要はありますが、それも楽しさや充実感につながり新鮮な気持ちで仕事ができるかもしれません。
あるいは、今よりも稼げる全く別の仕事に転職し、イラストは個人的な活動としてやっていくという手もあります。私の友人は、そのスタイルで個展を開いたりネットで作品を発表したりしていくうちに仕事の依頼も来るようになりました。それで食べていけるわけではなくても、自由に創作している時の彼は幸せそうでした。
「好きなことを仕事にしてたくさん稼ぐ」がベストとは限らない。「好き」で苦しむのではなく、「好き」と共に健やかに生きられるスタイルを探してみてください!
Point.
・人はすごく好きなことに対しては割り切れないので、それを仕事にすると悩みがち
・割り切れる程度に好きな「共通点のある異分野」に仕事を広げれば、ストレスが減り収入も上がりやすい
・自由に好きなことをやりたい場合、個人的な活動として続けるのも一案
・「好き」で苦しむのではなく、「好き」と共に健やかに生きられるスタイルを探そう
(文:ヨダエリ、イラスト:黒猫まな子)
※この記事は2023年11月07日に公開されたものです