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「ゆっくり休んでください」とは? ビジネスで使える例文や言い換え表現を解説

松岡友子(コミュニケーションマナーアドバイザー)

「ゆっくり休んでください」は、さまざまな場面で使えるねぎらいの言葉です。今回は、このフレーズを使用する時の注意点や言い換え表現について、コミュニケーションマナーアドバイザーの松岡友子さんに教えてもらいました。

ビジネスシーンでは、有給休暇を取る人や体調を崩して休む人に対して「ゆっくり休んでください」と伝える機会がありますよね。

相手への思いやりの気持ちを表現する言葉でもありますが、目上の人に使っても良いのか悩む人もいるかもしれません。

そこで今回は、「ゆっくり休んでください」というフレーズについて解説していきます。

「ゆっくり休んでください」とは?

まずは「ゆっくり休んでください」の意味を見ていきましょう。

「ゆっくり」について改めて辞書を引いてみると、次のような記載があります。

ゆっくり【緩】
時間・空間・気持などに余裕があるさま。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

『大辞林 第四版』(三省堂)には、「ゆとりがあって気持ちのよいさま」とありますので、「ゆっくり」という表現には、余裕やゆとりに加え、気持ちの良さも大切な条件であることが分かりますね。

また、「休む」には以下のような意味があります。

やすむ【休む】
(1)仕事や動作を中止して、体や心を楽にする。休憩する。休息する。
(2)本来行くべき学校や勤めに行かない。
(3)継続的・定期的に行なってきたことを一時とりやめる
(4)眠るために床につく。
(5)病勢が衰える。なおる。
(『大辞林 第四版』三省堂)

これらのことから、「ゆっくり休んでください」とは、「働き動かしてきた体を休め、気持ち良くゆとりのある時間を過ごしてほしい」という思いから掛ける言葉であるといえるでしょう。

「ゆっくり休んでください」は目上の人に使って大丈夫? ビジネスで使う時の注意点

基本的に「ゆっくり休んでください」は相手を気遣う声掛けですので、ビジネスシーンで使用しても問題はありません

もし注意する点があるとすれば、「ゆっくり休んでください」はあいさつ言葉ではないということです。あいさつは儀礼的で、言葉そのものにはあまり深い意味はないといえます。

相手を気遣う気持ちから「ゆっくり休んでください」と言うものの、あまり相手の状況は深く考えずに、つい慣用句的に何気なく掛けている人も多いのではないでしょうか

例えば、長期病欠から仕事復帰した同僚に、「無理せず早く帰ってゆっくり休んでね」と言うこともあるでしょう。でも、その同僚は、仕事の遅れを取り戻したいと頑張っているかもしれません。

似たようなことは、定年退職を迎えるけれどまだまだ働きたいと思っている方などにも当てはまる可能性も。

また、私自身もそうでしたが、介護や子育て中のビジネスパーソンは、休日の方が予定が詰まっていて、仕事をしている平日よりもかえって忙しいくらいの時期があります。

「ゆっくり休んで」と言われると、その思いはとてもありがたいものの、「こちらの事情も知らないくせに……」と、自分にゆとりがないことも相まって、素直になれず悲しくなることもあるかもしれません。

つまり、活動したい、もしくは活動しなければならないと思っている相手に対しては、「ゆっくり休んでください」という言葉がネガティブに作用してしまうこともあるのです。

ですので、このフレーズはあいさつのような軽い気持ちで述べるのではなく、相手の状況を見ながらプラスで言葉を補足できると、より良いコミュニケーションの一助になるでしょう。

「ゆっくり休んでください」を使った例文

では、「ゆっくり休んでください」はどのように使うと、相手にきちんと思いが伝わるのでしょうか。いくつか具体的な場面を想像しながら例文を紹介します。

例文1

「今週は出張お疲れさまでした。週末はどうぞごゆっくりお休みください」

目上の方であれば、「ごゆっくりお休みください」と少し丁寧に伝えても良いでしょう。これに「どうぞ」と促す言葉を付け加えることも多いです。

また、「出張お疲れさまでした」など具体的な話をプラスすると、相手の状況が分かっていることが伝わるでしょう。

「お休みになってください」もよく使われますが、「お休みになられてください」は二重敬語ですので注意が必要です。

例文2

「まずはゆっくり休んで疲れを取ってくださいね。落ち着いたら旅行の話を聞かせてください」

相手が少し長めの休みを取ることが分かっているなら、「まずは」という言葉を付けると良いでしょう。

また、旅行など相手にリフレッシュする予定があるなら「話を聞かせてください」と述べることで、休み明けに楽しく会話をするきっかけにもつながるかもしれません。

「ゆっくり休んでください」の言い換え表現

「ゆっくり休んでください」はいろいろな場面で使えるフレーズですので、場面や状況ごとに言い換えることが可能です。

(1)ゆっくり体を休めてください

辞書で「休む」を調べると「休める」という言葉が併記されています。これを使って「ゆっくり体を休めてください」と言い換えることができます。

(2)どうぞご自愛ください

体調に気を付けてほしいという表現にしたい時は、「どうぞご自愛ください」もよく使うフレーズです。

この場合、「ご自愛」は「自分の体を大切にする」という意味で、「お体ご自愛ください」と述べるのは重複表現となるので注意が必要です。

(3)ごゆっくりお過ごしください

体を休めるというより、リラックスしてほしいという場合には、「ごゆっくりお過ごしください」や「どうぞごゆっくりおくつろぎください」と言い換えるのもおすすめ。単に「ゆっくりなさってください」だけでも良いですね。

これはホテルや飛行機など非日常空間であっても、自宅にいるようにくつろいでほしい場合に使われることが多い表現です。

「ゆっくり休んでください」はさまざまな場面で使えるねぎらいの言葉

「ゆっくり休んでください」は、さまざまな場面で使えるねぎらいの言葉です。

皆さんも普段何気なく言ったり言われたりしているのではないでしょうか。これからは、少しだけ踏み込んで考えてみたり、相手の状況をよく観察してみたりすると、より良い声掛けができるかもしれません。

相手への思いやりが表れるすてきな言葉だからこそ、「ゆっくり休んでください」だけで満足するのではなく、ねぎらいや気遣いの気持ちが伝わるよう、相手のことをしっかりとおもんぱかることが大切ですね。

(松岡友子)

※画像はイメージです

※この記事は2023年10月13日に公開されたものです

松岡友子(コミュニケーションマナーアドバイザー)

マニエール・トモ代表。コミュニケーションマナーアドバイザー®。
駒沢女子大学・戸板女子短期大学 非常勤講師。
早稲田大学卒業後、ANA国際線客室乗務員およびチーフパーサーとして乗務。
退職後、エアラインスクール講師などを経て2007年より研修講師として活躍する。
日本語教師、NLPプラクティショナーやTAカウンセラー、ハラスメント防止コンサルタントなどの資格を活かし、ビジネスマナーからセルフマネジメントまで幅広く研修、講演を行う。
現在、横浜市立大学大学院にて女性学を研究中。

著書『誰とでも仲良くなれる敬語の使い方』(明日香出版社)

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