【File39】変わらない魅力を愛し続けたいジュエリーブランド販促・PR担当の場合
いつも輝くあの人は、仕事でどんなバッグを使っているんだろう? バッグとその中身は、仕事への姿勢や価値観を映す鏡。企業で働くマイナビウーマン世代の女性をインタビューし、彼女たちの仕事バッグをのぞく連載です。
取材・文:ミクニシオリ
撮影:三浦晃一
編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部
指先にキラリと輝くのは、自分の努力で購入したストーリーを持つジュエリーたち。
カラーストーンを使ったジュエリーブランド『BIZOUX』で販促、PRを担当する山田智子さん。革に魅せられて土屋鞄に入社し、革の魅力に没頭し続けてきた彼女だけど、2022年にグループ会社が展開する『BIZOUX』の事業推進部長に就任。
「革が大好きで入った会社で、まさか自分がジュエリーにハマってしまうなんて、思ってもみませんでした」
誰よりも、自社ブランドを愛している山田さん。カラーストーンの魅力はまさに沼だ。山田さんのしごとバックを覗いていくうちに、革小物とカラーストーンに共通する「年月のロマン」が見えてきた。
山田 智子さん
総合広告代理店を経て、2012年に皮革製品を製造販売する老舗(株)土屋鞄製造所に転職。ランドセルや大人向け皮革製品ブランドの販促、広報、商品企画を担当し、2021年に販促企画部部長(販促部門のトップ)に。
2022年4月に、土屋鞄と同じグループ会社(ハリズリー)で、宝飾品を扱う(株)ドリームフィールズ入社。国内最多級のカラーストーンを扱うジュエリーブランド「BIZOUX(ビズー)」と、エシカルなアイテムを揃える姉妹ブランド「ジェムエデン」の、販促、EC、店舗運営、カスタマーサポートなどを統括する責任者(ジュエリー事業本部 事業推進部長)に就任。
広告代理店のプランナーとして、キャリアをスタートした山田さん。土屋鞄へ転職するきっかけは2011年、東日本大震災で、自身を取り巻く環境が大きく変わったことが理由。転職活動を決意した時に、目に止まったのが土屋鞄だったのだそう。
面接の際に訪れた、東京足立区にあるランドセル工房で見たオフィスの雰囲気と、職人の手仕事に一目惚れし、土屋鞄に入社。それからは、革の底無しな魅力にどっぷり浸かる毎日だった。
「土屋鞄のバックは10個以上持っていて、これは『BIZOUX』に移ることが決まった時に買い替えたものです。定番ラインの一つで、まさに土屋鞄のアイコンとも言える存在。土屋鞄はロゴを表に出さないのですが、印象的なステッチ刺繍をアイデンティティとしています。ブランドを離れても長く使えるもので、ステッチが魅力的に見えるものにしたいと、黒を選びました」
革のバックは重さがあるのが難点ではあるけれど、持てば持つほど革が手に馴染んでいき、自分に合うバックを育てていく楽しさがある。まだ買い替えて数年の山田さんのバックは、これでもまだ成長途中。これからもっと、革の質感が馴染んでくるのだとか。
●バッグの中身
1 土屋鞄のパスケース
2 土屋鞄のポーチ
3 ノート、ペン
4 土屋鞄の財布
5 土屋鞄の名刺入れ
6 リングゲージ、BIZOUXのジュエリーポーチ
7 MacBook Pro
8 Air Pods
バックの中にも、山田さんが土屋鞄で過ごした10年間の思い出が詰まっている。アラサーから40歳までを土屋鞄で過ごした山田さんだけど、革の魅力は普遍的で、年齢を選ばない。だからこそ、自分の魅力が変化していっても、長く愛し続けることができるのだ。
「もともと書いて覚えたいタイプなので、ノートや手帳は仕事時の必需品なんです。せっかく使うならかっこいいカバーをつけたくて、クリスマスの限定品だった土屋鞄の手帳カバーをつけています。
PCケースも、土屋鞄のものを使っています。革小物はカジュアルさとスマートさを兼ね備えていて、商談の場でも出しやすいのに、プライベートでもそのまま使いたくなる魅力があります」
もちろん、お財布だって土屋鞄。山田さんのバッグの中身は革製品がほとんどで、山田さんが革をどれだけ愛しているかが伝わってくる。
「革小物って長持ちしてしまうので、一度買うと買い替えなくて済んでしまうんですよね(笑)。トレンドにも左右されないので、年齢を重ねるたびに、革にしておいて良かったと感じることが増えました。
お財布は、私が商品企画から関わったものでもあるので、今も大切に手入れをして使っています。この革はもともと、染色やコーティングのされていないいわば“すっぴん状態”なんです。この状態の革は傷つきやすくて繊細なので、本来ならこのまま売り物にすることはないんですよね。
でも、国内に工場があって、革の扱いに慣れている一流の職人たちの手でモノづくりを行っている土屋鞄だからこそ、革本来の魅力を伝えていけるはずなのではないか。そんな想いを込めて、商品が出来上がるまでのすべてに関わりました」
革はどんどん持ち主の手に馴染み、色合いが変わっていく。すっぴんから育てられた革は、山田さんが使ったからこその雰囲気が出ていて、世界で唯一無二のお財布になった。
こんなふうに何年も連れ添ってくれるのが、革の大きな醍醐味。だけど、今はBIZOUXで活躍する山田さんのバッグには、こんなものも紛れ込んでいた。
「手を洗う時や汗をかいた時など、外したジュエリーを収納するためにジュエリーポーチも持ち歩いています。あとは、指輪のサイズを測るリングゲージですね。
BIZOUXで仕事を始めてからはジュエリー課金が止まらなくて、常にファッションに取り入れているので、友人に会った時に『私も買いたい!』と相談されることが増えたんです。そういう時にすぐサイズを測っておすすめを伝えられるよう、いつも持ち歩いています。意外と軽いので、特に邪魔にもなりません」
BIZOUXにやってきた頃は「本当にジュエリーを愛せるのか」という気持ちもあったという山田さん。不安はすぐに杞憂になり、自身もこの一年でかなりの額のジュエリー課金をしてしまったのだそう。
「私にとって革の魅力は何年も連れ添ってくれることだったのですが、ジュエリーに関わりはじめてからすぐに、ジュエリーは革よりもさらに長い時間、持ち主のそばにいてくれることに気づきました。
ジュエリーは、一生涯自分と一緒にいてくれるものなんです。失くしたり、深く傷つけたりしなければ、100年以上美しいままでい続けてくれます」
BIZOUXのジュエリーは、海外で買い付けられてきた天然のカラーストーンたちで彩られている。山田さん自身も、石の買付けに出張することもある。
「買い付けられてきた天然石は、もともと地層に埋まっていたものです。地球が生み出した奇跡の石なので、色も輝き方も、一つひとつ違います。革にもジュエリーにも“唯一無二”が持つロマンがあって、すぐにその魅力の虜になりました。
最初は、大好きだった土屋鞄を離れることに不安を感じていました。土屋鞄では、自身のキャリアを着実に積み重ねて育ててもらいました。けれどBIZOUXは、同じグループ会社で展開するブランドではあるものの、商材も組織も違う。ブランド規模も関わる立場も違うので、裁量権を持って意思決定していく中で『本当にこれでいいの?』という悩みも尽きません。
だけど、私の場合はジュエリーという商材を心の底から愛してしまったので、もうやるしかない! と腹をくくりました」
BIZOUXのジュエリーは、5万円以下で買えるものから、一点数十万円のものまで、価格帯が幅広い。だけど、お客さまは意外にも、私たちと同じ30代~40代の女性が多いという。
「カラーストーンって、自分の中にストーリーを持ちやすいんです。月ごとに誕生石があるし、石ごとに花言葉のような意味もあるんですよ。自分の中で、テーマカラーを持っている人って意外と多いし、節目の年齢の時に自分らしい色のジュエリーを、と一人で店舗に来てくれる女性が意外にも多いですね。
カラーが入っていると、目立つジュエリーでもファッションに取り入れやすいので、自身で買う初めての宝石に選んで頂けることも多いんです」
たしかに、山田さんの手元を見ていると、カラーストーンに憧れてしまう気持ちも分かる。ハイブランドのジュエリーもアイコニックでいいけれど、華やかな色合いのカラージュエリーには、なんだか元気をもらえる気がする。
「天然石は有限の資源なので、私自身はジュエリーを身につけること、仕事として関わることの責任も感じています。
例えば、このピアスについている石の片方は今まで、いわゆるジュエリーショップには並ぶことは少ないものなんです。透明度が低く形も不ぞろい、宝石としての質は低いとされていました。でも、それって人間が決めた価値観なんですよね。こうして並んでみると、どっちの石もすてきじゃないですか?
宝石にも、人間と同じように個性があって、同じものを二つ作ることはできないんです。だからこそ、どっちにも魅力がある。だからBIZOUXでは、これまでジュエリーとして扱われることが少なかった宝石も、お客さまに選んでいただく選択肢として用意しています」
価格帯も宝石の種類も豊富だからこそ、選び方も多様なカラーストーンの世界。最近では、推しカラーに合わせたジュエリーを求める女性も増えているそう。
「私もBIZOUXに来るまで、ジュエリーを持とうと思ったことが無かったんです。だけど、革と同じくジュエリーにも、ファッションやトレンドにとらわれない、独自の魅力があると思っています。
いくつになっても持ち続けられるからこそ、最後は子どもや孫に譲る時が来るかもしれません。そうやって、時代も世代も渡っていけるのが、ジュエリーの一番の魅力です。土屋鞄とBIZOUXに関わって、トレンドの変化でモノを捨てることが無くなりました。周りや年齢に合わせてファッションを変えていた頃より、自分らしさに自信が持てるようになったんです」
目まぐるしく変化していく、女性のファッション。だけど、そこにいつまで、どのくらいのお金をかけられるだろう……というそこはかとない不安が、たしかにあった。
変わらない魅力を愛し続けることは、自己肯定にも地球環境の改善にも繋がる。山田さんの輝く笑顔と手元の輝きには、そんなメッセージが隠されていたのだった。
※この記事は2023年08月28日に公開されたものです