お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

2022年の観光トレンドは? ウィズコロナ時代の旅の楽しみ方

伊藤綾

全国旅行支援をはじめとする需要喚起策もあって復調の兆しを見せる観光業界。本格的なウィズコロナに突入し、年末年始や来年に向けて旅行の計画を立てている人も多いのではないだろうか。

今回は魅力ある観光地づくりやその魅力の発信など、観光の振興・発展に貢献した個人や団体に贈られる「観光庁長官表彰」受賞者の取り組みを紹介。昨今の観光トレンドなどを踏まえつつ、ウィズコロナ時代の新しい旅行の楽しみ方を観光庁の辻原みなみさんに聞いた。

観光庁の辻原みなみさん

観光SDGs意識の高まりが顕著に

2008年10月1日に設立した観光庁が毎年実施している「観光庁長官表彰」。地方運輸局や観光関連団体から推薦され、有識者からなる審査委員会の審査によって表彰者が決定する。

2009年から始まった「観光庁長官表彰」だが、14回目を迎えた今年は、観光SDGsや観光DXに取り組む自治体や団体・企業などが多く受賞した。受賞者は以下の通り(順不同)。

北海道ニセコ町
裏磐梯観光活性化協議会
一般社団法人 下呂温泉観光協会
一般社団法人 キタ・マネジメント
特定非営利活動法人 美しい村・鶴居村観光協会
積水ハウス株式会社、マリオット・インターナショナル

国内で観光SDGsに先進的に取り組む自治体として今回選出されたのは、インバウンド客が多く訪れるスノーリゾートである「北海道ニセコ町」だ。同町は持続可能な観光地づくりを目指し、ニセコ町観光振興ビジョンを策定。地域の観光事業者へのSDGsに関するアンケート調査やSDGs研修・シンポジウムなどを実施する。

サステナビリティ・コーディネーターを採用し、国際基準のアセスメント作成と改善の提案、情報発信にも力を入れ、その取り組みは国際的にも高く評価されている。

福島県内のホテル事業者などで構成される「裏磐梯観光活性化協議会」は、コロナ禍で“SDGs教育旅行”に注目。磐梯山など自然豊かな同地の周辺施設が連携し、食育・環境・文化・水教育といったテーマごとにプログラムを提供する教育旅行の受注を拡大させた。教育旅行利用者数が2年で約5倍となった宿泊施設もあり、ワーケーション推進の取り組みなどでリピーターも増加したという。

「観光事業者の方々に伺っても、サステナブルな取り組みに賛同される旅行者や地域の方々は多いそうです。『SDGsのために旅行する』というよりは、自分が旅を楽しむことで地域経済や自然などの環境に良い効果が生まれ、結果的に何度も行きたくなるし、その地域をずっと好きでい続けられる。それが観光SDGsの本質なのかなと思います」(辻原氏、以下同)

コロナ禍で生まれた新たな観光スポットも

「一般社団法人 キタ・マネジメント」は、一泊110万円で愛媛県大洲市の大洲城天守閣に泊まれる城泊「大洲城キャッスルステイ」など、民間企業などを巻き込んだ高付加価値な宿泊コンテンツを提供。その収益によって地域への再投資・新事業を創出し、継続的に自立・自走できる地域づくりを実現できる仕組みを構築したことが評価された。

また、「下呂温泉観光協会」は「下呂温泉郷公式アプリ」などで消費行動やエリア内の全宿泊施設の宿泊客データの収集・分析でニーズや傾向をキャッチ。積極的にデジタル技術を活用し、利用客の利便性向上と観光情報のプッシュ型発信といったマーケティング・プロモーションの実施、旅行商品の造成に取り組む。

「地域の自然環境や観光資源の保全につながる取り組みをイメージされがちな観光SDGsですが、高付加価値なコンテンツづくりなどによる収益化という経済的な持続可能性も大切な要素。観光業界はデジタル活用が遅れているとも言われるなか、下呂温泉は2022年6月に2019年6月の水準まで宿泊者数を回復させた実績もあり、観光DXの模範的事例として今回の表彰に至りました」

コロナ禍が続く中で注目を集めるようになったウィズコロナ時代の新たな観光スポットやエリアもある。

積水ハウスとマリオット・インターナショナルは共同で「Trip Base 道の駅プロジェクト」を2020年10月に開始し、道の駅を拠点とする宿泊特化型の施設「フェアフィールド・バイ・マリオット」を展開。休憩・通過点だった道の駅で、地元企業と連携して宿泊客へ地元観光コンテンツを提供する。同施設は地域の雇用の受け皿にもなっており、現在7道府県18ヶ所を開業。2025年までに26道府県、約3000室規模へ拡大する計画だという。

釧路湿原に囲まれた北海道・鶴居村の「特定非営利活動法人 美しい村・鶴居村観光協会」は、滞在コンテンツ「農泊」を造成。住民が観光の観点で地元の資源や魅力を捉え直し、観光コンテンツとして新たに磨き上げて誘客につなげている。地産地消は観光SDGsの代表的な施策だが、同村ではエゾシカなどのジビエが楽しめるガストロノミーツーリズムが好評だという。

働く女性におすすめのウェルネスツーリズム

近年は世界的に健康志向とサステナブルな取り組みへの意識が高まり、観光では豊かな自然ならではのアクティビティの需要が増加傾向に。

国内でもサウナ、ヨガ、ピラティスなど癒し要素の強いオプションを提供する宿泊施設は多く、日常から離れて旅先でリラックス・リフレッシュする「ウェルネスツーリズム」が働く女性からも注目されているようだ。

加えて、コロナ禍でこれまで以上にグランピングやキャンプといったアウトドアレジャーが浸透。盛り上がりを見せているアドベンチャーツーリズムは、女性にもおすすめだという。

「例えばE-bikeで女性でも簡単に本格的なサイクリングを楽しめたり、キャンプ場のテントサウナでととのい体験ができたり。コロナ禍を経て観光のニーズが変わったのは間違いないようで、いわゆる有名観光地ではなくても自然を生かしたアクティビティやコンテンツなどに力を入れ、人気を集める地域もあります。
今回の観光庁長官表彰で受賞した自然豊かな鶴居村や裏磐梯、美肌の湯で有名な下呂温泉などもウェルネスツーリズムに通じる要素があると思います。それぞれの旅先や行きたい場所でウェルネスの視点を持って計画などしていただくと、実は全国にいろいろな魅力があるし、楽しみ方の幅も広がるのではないかなと思います」

当然ながら観光庁には旅行好きの職員が多く、庁内では公私で訪れた地域の観光スポット・体験コンテンツ・お土産などの情報交換が盛んに行われているようだが、「プライベートの一人旅もガンガン行く」という辻原さんの推しエリアは?

「5〜6年ほど前、修学旅行ぶりに奈良へ行ったんですが、いろいろ新たな発見があり、それ以来ハマっています。かき氷の聖地になっていて、グルメも充実しているし、古墳がすぐ身近にある街っておもしろいなとか。この夏はニセコ町にも行きました。スノーリゾートとはまた違った自然の魅力を感じて、非常にリフレッシュできました」

観光業界や地域活性化の分野で活躍している女性は非常に多いそうなので、そうした存在から旅先で思わぬ刺激を受けるようなこともあるのかもしれない。

「観光庁は地域の住民の方々にも喜ばれる観光の取り組みを大切にしていて、地域の方々が地元の魅力に気づき、観光を通じてその地域の魅力が高まるような観光を推進しています。今回ご紹介した受賞者はじめ、そうした取り組みを頑張っている人たちがいま全国にいるので、ぜひ自分の推しエリアを見つけに出かけてもらえたらと思います」

※この記事は2022年12月23日に公開されたものです

伊藤綾

この著者の記事一覧 

SHARE