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【File66】気づいたら彼女から無料弁当屋に降格してた話

#イタい恋ログ

いずみ

今振り返れば「イタいな、自分!」と思うけれど、あの時は全力だった恋愛。そんな“イタい恋の思い出”は誰にでもあるものですよね。今では恋の達人である恋愛コラムニストに過去のイタい恋を振り返ってもらい、そこから得た教訓を紹介してもらう連載です。今回はいずみさんのイタい恋。

こんにちは、いずみです!

いろいろな失敗経験を通して、やっと自分らしく振る舞いながら人と良い関係を築けるようになってきた私ですが、10年前はというと、とにかく自分に自信が無く、無駄にいい子ちゃんを演じてしまうところがありました。

そんな私が今回ご紹介するのは、役に立ちたい気持ちのあまり、いつの間にか「彼女から無料弁当屋に降格した」話です。彼氏になんでもやってあげたくなってしまう長女タイプの女性は、特に共感できる内容かもしれません。

時はさかのぼること、10年前……。

当時の私は大学生で、同じ大学内にM君という彼氏がいました。元々は彼からの告白で始まったお付き合いですが、あの頃の私は「こんな私を好きになってくれるなんてありがたい」と考えていました。

私は年に何度も告白されるようなタイプではなく、誰かに好きになってもらえること自体が珍しかったこともあり「せっかく私を選んでくれたのだから、私と付き合って良かったと思わせたい!!」という一人よがりな気持ちが、勝手に膨れ上がったことを覚えています。

無料でお弁当を作る日々がスタート

愛されたことが嬉しくて、もっと彼に愛されるにはどうすればいいんだろうと考え続けました。そして私が辿り着いたのが「喜ぶことをして役に立てば、愛されるはずだ!」という考えでした。

「役に立てば愛される」と勝手に確信した私は、できることをなんでもやってみようと思い、まず彼にお弁当を作ることを申し出ました。

当時、大学生で、毎日学食でお昼ご飯を食べていた彼にとって、お昼代が浮くことはメリットのはず。そしてきっとお弁当を作れば「こんなにいい彼女はいない」と思ってくれるに違いない!! さらにあわよくば、浮いたお金で一緒にデートに行けるかも! などと私は考えていました。

ちなみに、私の通っていた大学の学食は一番安くても一食300円ほど。学校に来る日がだいたい一カ月に20日。その分のお弁当代が浮けば、単純計算で最低でも6,000円くらいが浮くはずです。

「6,000円浮けば一回くらい彼とどこかのレストランでご飯が食べれるかも……」などと妄想しつつ、せっせとお弁当を作っていました。

そんなわけで週に5日ほど、特に彼からお金をもらったりもせず、お弁当をひたすら渡す日々が始まりました。

もちろん、彼は喜んでくれました。「ブロッコリーのおかず、すごくおいしかったよ」といって容器を返してくれたりしました。毎日ひたすらお弁当を作っていったので、かなりの弁当スキルがついたと思います。

浮いたお金で他の女と遊びに行っている事実発覚

しかし、あるとき事件が起きます。

学校で一緒にお弁当を食べながら「今週の土曜日、ここ一緒に行きたいな~!」とデート先におしゃれなカフェを提案した私。

すると彼が「あ~……今、金ないから無理だわ~~」と言いました。

元々、彼はお金の管理が苦手なタイプ。計画性が無く、お財布にあるお金がいつの間にか消えている、通帳の残高は1,000円以下がスタンダード……という感じの人でした。手元にあるお金はパーッと使ってしまうので、給料日前の一週間は死ぬほど金欠というのを年12回繰り返している典型的な浪費型人間でした。

そのときは、お金が無いなら仕方ないかと諦めて「そっか。じゃあ、カフェデートはまた今度だね!」とそのままその話は終わりました。

そして、その4日後くらいに、学校で顔を合わせたときのことです。

「そういえば昨日のバイト中、急に決まったんだけど、バイト先の後輩(女の子)と焼肉行くことになったよ~」と彼が報告してきました。

「へえ! どこの焼肉? いついくの~?」と聞くと……

「今週の日曜だよ!! 場所はここ!!」と元気良く教えてくれました。

「へえ~……え、よ、良さそうな焼肉だね~……」と完全に作り笑顔で答えつつ、内心は「は!? 4日前に今週末、私とのカフェデートは金ないって断っておきながら、バイト先の女の子と焼肉だと?!?! しかも牛角より高そう!!」とかなりモヤモヤしいていました。

彼女である私との週末のカフェデートは「金が無い」という理由で断っておきながら、バイト先の女と週末に焼肉デートを約束してきたあげく、それを隠しもせず堂々と言ってしまう彼。

あまりに無神経すぎて、もはやどこから怒っていいのかもわかりませんでした。思ったことをすぐに言えなかった私は「待って、私がおかしいのかな……これくらい許すべきなのかな」などとしばらく一人で悶々と考えていました。

お弁当作って一緒に節約して、それで私とデートに行って思い出作れたらいいなと思っていたけど、結局ふたを開けてみたら、その私の弁当提供で浮いたお金でデートに行くのは私ではなく他の女

そんな事実を知ってしまうと「だったら私が弁当作る意味って何? っていうか私って彼女なんだよね? もはや、今や女友達の方が待遇良くない? あれ、私ってもしかして無料弁当屋……?」と、ついに自分の現在の状況に気づいてしまうのでした。

当時は潔く認められませんでしたが、私が下手に出すぎたせいで、完全になめられている付き合いになってしまったと思います。

そんな風に自ら、頼まれてないことに世話を焼き、対等な関係を崩した結果、「あいつは弁当をくれるし、別れるにはもったいないし、とりあえず付き合っておくか」程度の便利な存在になってしまったのでした。

イタい恋から得た教訓「便利だから、愛されるわけではない」

そんないつの間にか無料弁当屋になってしまう経験を通して、自分が愛される方法として、便利屋になるのは間違いだと学びました。

たしかになんでもやってくれたら便利ですし、ありがたいかもしれませんが、「便利だから付き合う」「便利だから愛する」わけではないですよね。そんなことをすっかり忘れて、能力やスキルを見せつけて自分が愛されようとしたのは、本当に愚かなことだったと反省しました。

私自身、弁当作りは良かれと思ってやったことですが、頼まれてもないのにあれこれやってもいい結果にならないと感じた出来事の一つです。

ただ、お弁当作りの腕は多少なりとも上がったと思うので、あの時の彼には感謝しています。

(文・いずみ、イラスト・菜々子)

※この記事は2022年12月11日に公開されたものです

いずみ (Webライター)

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